海の太陽
一朗太達は敵の包囲を何とか掻い潜り大阪にたどり着いた。
もともと100艘あった船は、激戦のなか削られ12艘になっていた。
『こっちだーっ!』
急の寄港に大阪にある海羅鬼の港は慌ただしく動いていた。
一朗太の乗る関船も港に繋ぎ留められた。
だが一朗太はボーッと空を見上げている。
そんな様子を見兼ねて次郎太が、
「しっかりしてくれ!兄上、あれは戦だっ!人は死ぬっ、それにあれだけの激戦だ!全滅しなかっただけでも幸いだ!」
と怒鳴った。
それでもまだ一朗太の視線は空から動かない。
「はぁっ…!」
次郎太は飽きれ気味の溜め息をはいた。
「あれが初陣か…」
ふいに一朗太が消え入りそうな声で呟いた。
「え…?」
次郎太は一朗太を見直した。
一朗太は、
「辛すぎる…。重すぎる…!これからあれを何回体験するんだ?あとどれくらいの命を背負うんだ!?」
「兄上…」
「これじゃ、死んだ方が楽じゃねぇかぁ!」
一朗太は床を叩いた。
次郎太はそんな一朗太の肩に手をおき、
「兄上だけじゃない…」
「何がだ…?」
「背負うべき人間、共に泣くべき人間」
「…」
「何の為に俺達弟妹がいる?何のために兄上の側にいる?それは兄上の重荷一緒に持つためだろう?頼れよ、重かったら持ってくれって言ってくれよ!」
「でもお前一人には重すぎるだろ!」
一朗太は声を荒げた。
「その為に5人いるんだろう?」
後ろから声が響いた。
一朗太と次郎太は声の方をみた。
そこには三朗太達弟達と那古そして波が立っていた。
「お前ら…!?」
驚く一朗太に三朗太が、
「二人じゃ重くても五人いれば軽くなる。だから心配しないで兄上!」
と言った。
そこに波が、
「ちょっと六人でしょ?私を忘れないでよ!」
と割ってはいる。
ドッと皆が笑いだした。
辺りの空気が軽くなるのを感じた。
それと同時に一朗太の背負った命の重荷も幾分か、いや大分軽くなった気がした。
一朗太は決心を固めた。
「俺、もう一人で背負わねぇー!辛くなったら、重たくなったらさっさとお前らに放り投げてやるっ!だから覚悟しとけよ?俺の側にいるのは結構つれぇーぜ!?」
そう言って豪快に笑った。
だがその笑いには先程書き消した『ありがとう』の一言が隠されていた。
「一朗太様ぁっ!!」
その時年老いた声が響いた。
「船里水也殿!」
波が声をあげた。
一朗太達の前にはいつの間にか老人が立っていた。
「だ、誰だよ?母上」
一朗太はそれが誰だか分からずに戸惑った。
そんな一朗太に波が、
「海羅鬼の分家である船里家の現当主水也殿よ」
と教えてくれた。
だがそう言われても一朗太にはピンと来なかった。
そこに水也が、
「無理もありません。某は一朗太様には幼少の時に一度しか会っておりませぬし、今の船里はすっかり衰えてしまいましたから」
と言った。
そこでようやく一朗太は思い出した。
確かに一朗太は一度水也とあっていた。
一朗太が水秀にだだをこねて大阪に連れてきて貰ったのだ。
その時に水也とは合っている。
船里家は濁流の弟の家系で大阪にある海羅鬼館の守備と事務を任されいる。
水也は、
「お疲れでしょう。ささっ、こちらへ、部屋を用意してあります」
と言って一朗太達を館に案内した。
一朗太達は館に入ると休むこと無く広間に入った。
「早速、父上を救う策を考える!」
一朗太は集まった家臣達に言った。
「やはり正攻法は無理ですな…」
と苦々しく言ったのは船尾。
現在、水吉は大阪にある将軍家の館に囚われていた。
確かに当初のやり方では、兵を使って館に押し入り水吉を奪還する予定だったが包囲を越える段階で予想以上に戦力を削られてしまったので不可能となってしまった。
「ここは忍び入るしかないな…」
次郎太が言った。
「忍び入るって言ってもあの館相当堅固何だろ?」
一朗太は口を尖らせた。
だが確かに将軍家館の守備は堅くそれこそ小さな城の様なものだった。
そこに忍び入るのはとても困難だった。
「どっかに秘密の道でもあればなぁ…」
一朗太は呟いた。
その時、
「道ならあります!」
広間に声が響いた。
皆は声の方向を見た。
そこには、一朗太と同じくらいの歳の少女が立っていた。
「さ、桜!何をしているんだ!じっとしていろと言っただろう!」
水也が声をあげその桜と呼ばれた少女を追い出そうとした。
だが一朗太はその桜の言葉が嘘の様には聞こえなかったので、
「おい!まてっ!ちょっと来い」
と呼び止めた。
桜は水也に微笑むとトコトコとこちらにやって来て座った。
一朗太は、
「お前桜って言うのか?」
と尋ねた。
桜は、
「はい!」
と大袈裟に頷いた。
一朗太は頷くと、
「道があるってのは本当なのか?」
と言って身を乗り出した。
「本当です!私はよくあの館に行くので分かるのです、私が使う道なら誰にも見つかる事無く侵入出来ます」
「よく行く?何であんな所によく行くんだ?」
「何でって…。だって将軍家の館ですよ!この日の本の大王の館、行かない方が損ですよ!」
桜はあからさまに興奮していた。
「お、おぅ…!おもしろい奴だな…」
一朗太は少し引いた。
その時次郎太が、
「なら、その道を使わない手はないな。案内頼めるか?」
と尋ねた。
桜は、
「もちろんです!」
と胸をパンっと叩いた。
「しゃあっ!これで館に侵入できる、父上まであと少しだ!」
一朗太は喜んだ。
『しゃあっ!』
『殿っ!』
家臣達も喜びを露にしていた。
海羅鬼達に希望がさした。
その希望を物に出来るかは今夜に掛かっている。
「ぜってぇー助け出してやるからな父上!」
海羅鬼の行く末を決める戦いが始まった。
軍議が終わり一朗太は中庭でボーッと空を眺めていた。
一朗太はしばしば空を眺める事があった。
冒険好きの一朗太にとって空は未知の世界で、夢が広がっていた。
それゆえにいつしか空は一朗太にとって拠り所となったのである。
「一朗太様っ!」
突然、桜に声を掛けられた。
「な、何だよ…!驚かすな!」
一朗太は驚いてよろめいた。
「ふふっ。申し訳ありません、ちょっとなにやってるのかなって」
桜は愉快そうだ。
一朗太は、
「そ、そんな事か。特に何でも無い、何でも無さすぎて暇してた所だ」
「そうなんですか。じゃあ私が話し相手になりますよ!」
桜はヒョコヒョコとやって来て、一朗太の隣に座った。
近くで見ると桜はやはり女子だった。
丸みをおびた体躯、やや幼い顔立ち、それは悔しいが一朗太の心を微かになびかせといた。
一朗太はそれを認めたくないが故に桜から目をそらした。
「お父上様の事心配ですか?」
桜は突然言った。
「当たり前だ、父上はいつ殺られてもおかしくない。早く助け出さないと…」
「水吉様は父思いの息子を持たれて幸せですね」
「そうか?そうだったらいいな。お前の父はどうなんだ?」
桜は突然表情を落とした。
「私には父はいません。幼い頃に亡くしそれ以来祖父である水也に育てられました…」
「そうだったのか…。わりぃ、辛いこと聞いたな」
「いいえ、良いんです。それより一朗太様、貴方の事を聞かせて下さい」
「お、俺の事?そんな事聞いて何をするんだ?」
「私は偉大な人間が好きなんです、それも偉大かつ変人なら尚更に!一朗太様は、相当なうつけと聞きますそれにかの水吉様の嫡男様なら偉大になることも間違いなし!それゆえに私の興味を掻き立てるのです!」
桜は興奮で足をバタつかせている。
「お前、褒められてんのか、バカにされてんのかわかんねーな…」
「え、あっ!も、申し訳ありません!」
桜はハッとしたように頭をさげた。
一朗太は、
「ふっ、別にいいけどよ。そんなに知りたきゃ自分でついてこい人に聞いた話じゃ脚色されてるかも知れねーだろ?」
微笑みながら言った。
「た、確かにそうですね…」
「それに、俺はお前の言う通り間違いなく偉大になる!そんな俺の背中を自分の足で追えるなんてこんな夢のあることは無いだろ?」
一朗太は立ち上がった。
桜は一朗太を見上げた。
見上げた一朗太は天にも手が届きそうだった。
今の一朗太の姿はまさしく『偉大』その物、桜が今まで聞いてきた偉人伝の何よりも神々しく、桜が憧れたどの強者よりも興味を掻き立てられた。
その姿が桜には眩しすぎて桜は急いで立ち上がった。
だがそれでも収まらない。
もっと近づきたい、もっと知りたい、この人の力になりたい。
そんな気持ちが桜の中を駆け巡った。
「追いかけてやりますよ!貴方の背中をずっと、少しもズレずに!鬱陶しくなったって知りませんからね!」
「やれるもんならやってみろ!俺の背中はとても平和じゃねぇからな、流れ弾当たったって知らねーぞ!」
一朗太は右手の握り拳をさしだした。
桜は、
「望む所です!」
そう言って一朗太の拳にコツンっと自分の拳をぶつけた。
彼女が船里家の当主になり一朗太を支える事になるのはまだ先の話だ。
日はすっかり落ちた。
暗闇の中を人影が駆ける。
それは一朗太や波等の一門衆と砲船、船尾そして桜だった。
波達に関しては一朗太と次郎太で必死に止めたのたが行くと言って聞かなかったのだ。
「お前らヤバくなったらさっさと逃げろよ!」
一朗太は言った。
それに波が、
「あんたも私達の事なんか気にせずに先に進むのよ!」
「できっかよ!そんな事っ!」
「あと少しです!」
桜が言った。
緊迫する一朗太達の心とは裏腹に辺りには穏やかな波の音が響く。
大阪の将軍家館は海に面している。
今回は海側の正門ではなくその側面の路地に入った所の壁から侵入する。
「あれです!」
桜が指をさした。
そこには館があった。
だがその館は館と呼ぶには余りにも堅牢すぎた。
堀こそ無いものの造り、規模はほとんど小さな城その物で物見櫓等防御設備もしっかりと整っていた。
「何で将軍家ごときの館があんなに豪華何だよ?」
一朗太が首を傾げた。
だがその疑問ももっともで、この頃の将軍家は既に形骸化しておりこれ程までの館を築けるはずが無かったのだ。
その疑問に答えたのは砲船だった。
「あれはまだ将軍家が権勢を奮っていた頃に建てられた物です。いくら将軍家とて既存の施設の改修位は出来るのであの様な形になったのでしょう」
その説明に一朗太は納得した。
「そろそろ路地入ります」
桜が声を潜めた。
一行は路地に入った。
ここに入ればもう館はすぐそばだ皆は気配をけす。
そんな皆の前に館の塀が姿を現した。
「高けぇな…」
それは人の身の丈を優にこえ人二人分位はあった。
「ご安心を…」
「我らにおまかせを…」
そう言って名乗り出たのは砲船と船尾だった。
「どうする気だ?」
二人は壁の前にたつと、勢い良く壁を蹴り高く舞った。
そのまま軽い身のこなしでさっさと館内に侵入してしまった。
「す、すげー…!」
皆はその活躍に圧巻した。
するとシュルシュルと綱が降りてきた。
これを伝ってこいという事らしい。
皆は綱を伝って館に侵入した。
何とか侵入に成功した。
ここから地下牢に向かい水吉を救い出す。
「行きましょう!」
桜が再び道案内を始めた。
一朗太達が館に侵入してしばらくたった。
既に建物内にまで侵入していて地下牢まではあと少しの所まで来ていた。
「ここを曲がって階段を降りたら地下牢です」
桜が説明する。
一行はその角を曲がろうとしたが一斉に足を止めて隠れた。
彼らの行く先にはそれを阻む様に衛兵三人が立っていたのだ。
「ど、どうするのよ…!」
波が言った。
「くっ、倒すしかありません…」
砲船が抜刀する。
だがその時一朗太が、
「次郎太、まだ力残ってるだろ?」
と尋ねながら抜刀した。
次郎太も、
「当たり前だ」
と言いながら刀を抜く。
「お、お二人とも…?」
皆が怪訝そうにしていると一朗太が、
「安心しろたかだか三人俺達の敵でもねぇー」
と言ってニッと微笑んだ。
「行くぞっ!」
その言葉と共に二人が勢い良く飛び出した。
『なにやつっ!?』
衛兵も抜刀しようとしたが二人はその隙を与えなかった。
衛兵二人を抜刀する前に素早く胴を斬った。
二人は成す術もなく崩れ落ちた。
『グハァッ!』
急所を斬ったこの衛兵の先はもう短い。
だが、
ガキッン!
残った1人の衛兵は抜刀に間に合い一朗太の刀を防いだ。
「てんめぇっ…!」
一朗太はそんな衛兵を睨み付ける。
『ひ、ひぃっ!』
衛兵は怯え刀にかける力が幾分か弱まった。
その時隙が出来た。
「俺を忘れるな…!」
一朗太の背後から姿を現したのは次郎太だった。
次郎太はそのまま無防備になった衛兵を斬り倒した。
『あ゛あぁーっ!』
悲痛な叫びが響いたがその衛兵も直ぐに息絶えた。
「ふぅ、殺ったな…」
一朗太が呟いた。
危機がさり隠れていたもの達も出てきた。
「お見事な手際でした」
砲船が感服したと言う感じに二人を称賛する。
「そ、それほどでもねぇよ!」
一朗太は満更でも無さそうだ。
だがその余韻を打ち消すように、
「早く行こう!父上まであと少しだ」
と次郎太が言った。
「わ、わかってる!」
一朗太は不満そうに返した。
一行は何とか階段を降りた。
階段は異様に長かった。
そんなに奥深くに父上は軟禁されているのだろうか?
土が剥き出しで寒くて暗くて寂しくて…。
そんな所に長時間閉じ込められたら人はどうなるんだろうか?
きっとおかしくなるだろう。
なら早く助け出さねば、父上はおかしくするわけにはいかない。
一朗太の足は少しだけ早くなった。
額を冷たい汗が流れ落ちる。
食い縛った歯はカタカタと震え、それは一朗太が焦っているのを表していた。
少しでも早く、誰にも気づかれる事なく水吉を助け出さなければならない。
良く考えればそれは難しい事だここまでこれたのも奇跡的だ。
だがそれゆえに恐い物事は最後まで何が起こるかわからない、先が読めない。
だがここで負ければ全てが水の泡になる、そんな緊迫した状況が一朗太の心を急かした。
「あ、あと少し…」
階段は確実に減っていく。
水吉までの距離はちゃくちゃくと縮まる。
もう少し!
一朗太は自らを心の中で激励した。
その時、突然辺りが開けた。
えっ!!
一行は足を止めた。
そこは地下にポッかりと空いた空洞の様な所だった。
いたるところに鉄格子で間仕切られた部屋があった。
そう、そこはまさしく一朗太達が目指していた地下牢だった。
「ち、父上はどこだ!」
一朗太は地下牢を進んだ。
どの牢も空っぽで人の気配は感じられない。
一朗太は焦燥感にかられた。
父上!
どこだよ、返事してくれ!
まだ死んでないだろ!
「生きてんだろ、父上!」
「一朗太…!」
地下牢の奥から声が聞こえた。
一朗太はその声を聞き逃さなかった。
「父上…っ!」
一朗太は奥に向かって走り出した。
奥にある牢の一つに人影があった。
その影は妙に見覚えがあって、偉大で、一朗太は吸い込まれる様にその牢に近づいた。
「一朗太…なのか?」
その牢に繋がれていたのは間違いなく水吉だった。
「父上っ!!」
一朗太は鉄格子にしがみついた。
他の皆も嬉しそうに牢に駆け寄った。
「み、皆何しにきたんじゃ…」
水吉は状況が理解できず驚いている。
「助けにきたのよ!」
波がいった。
「助けに来たじゃと?何をバカな事を、早く去れ!」
「出来るわけねーだろ!父上助けるために沢山の犠牲を払ったんだ、もうただじゃ帰れない…!」
「一朗太…っ!」
水吉は何やら感慨に浸った。
その時、
「誰じゃっ!?」
後ろから声が聞こえた。
一朗太達は振り返る。
そこには将らしき男と衛兵らしき鎧を来た兵が立っていた。
兵は既に抜刀している。
「くそっ!」
「殺るしかない!」
「我らも加勢を!」
一朗太、次郎太、砲船、船尾は抜刀し敵に向けた。
「くっ、海羅鬼の手の者か!」
将らしき男も抜刀する。
辺りは一触即発。
直ぐ様斬り合いが始まってもおかしくない。
その時、
「待てっ!」
水吉の声が響いた。
「父上っ!!」
皆は驚き水吉を見る。
水吉は、
「お主、三好の家臣か?」
と将らしき男に聞いた。
男は、
「否、わしは将軍家の家臣じゃ」
と水吉の心中を探りながら答えた。
「ならば我がせがれ達には用は無かろう?わしは逃げん、見逃してくれぬか?」
「では何故その者達は来た?」
「ふっ、この者達の元服がまだなのでな。少し早いが元服名を授けようと思うとる」
水吉と将の会話が一朗太には理解できなかった。
「な、何言ってんだ!?こんなやつさっさと倒しちまえば良い!一緒に帰るんだろ!?」
「すまんが、それは出来ぬ」
「何でっ!?」
「わしが帰れば海羅鬼が終わる!」
「終わらせねーっ!」
「頼む…!一朗太、現実を見よ。この件の主導は三好などでは無い、今わしが逃げ洲本に帰れば日の本中の大名が敵に回る事になるのだ…」
「そんなの皆倒せば良い!父上が要ればやれる!」
「無理じゃ!海羅鬼は所詮瀬戸内海の半分しか有さない小大名に過ぎん、下を三好、上を毛利という大大名に囲まれておる。もしこの二つが同時に敵に回れば我らに勝ち目は無いのだ…」
水吉は項垂れた。
「じ、じゃあ父上が死ぬのを黙って見てろって事かよ!」
「これが乱世だ。それにわしは自らの手で海羅鬼を終わらせたくない…」
水吉の目からは大粒の涙が流れていた。
その時男が、
「敵ながらあっぱれだ。よかろう、わしも立ち会わせてもらおう」
と言った。
それに付き添いの衛兵が、
「よろしいので!?」
と驚きの声をあげた。
男は、
「良い、我らの目的は海羅鬼水吉のみ。奴が逃げぬと言うのならば奴の子息を捕らえる意味は無い」
と淡々と告げた。
衛兵は納得した様子は無かったが渋々引き下がった。
水吉は、
「かたじけない…」
と頭を下げた。
一朗太は目を潤ませたまま口を紡いでいる。
水吉は懐から紙を取り出すと語り始めた。
「ならば始めよう…。我が子達よ元服名を授ける前にこれだけ伝えておきたい。わしはここで死ぬ、皆と会うのもこれが最後じゃ…。
だからこれだけは言いたい、海羅鬼を託すわしの見れなかった、見せられなかった景色をお主らは見てきてくれ…!」
水吉はそこで言葉を止めると皆を見回した。
皆は一様に目に涙を浮かべ肩を上下させていた。
だが一朗太だけは鉄格子にしがみつきながら黙って俯いていた。
水吉は微笑むと再び語り始めた。
「それでは、始める。『次郎太』!お主に授ける名は、海羅鬼『水羽』!お主は文武両道、武術を除けばその才は一朗太をも凌駕する。それはまさしく家臣の才!そのたぐい稀なる才を存分にいかし一朗太を支えよ!」
水吉は水羽を見た。
水羽は涙を拭い、
「おうせのままに…!」
と力強く頷いて見せた。
再び水吉は視線を紙に戻すと語りを続けた。
「次、『三朗太』!お主の名は、海羅鬼『武水』!お主はその年にして既に武術の才を覗かせておる。それは将軍の才!いずれは海羅鬼の刀となることだろう!その武辺を活かし一朗太を支えよ!」
水吉は武水を見た。
武水は涙をグッと堪えると、
「任せてください…!」
と放った。
水吉は安心したように視線を戻す。
語りは続く、
「『四朗太』!お主はこれより海羅鬼『水秀』と名乗れ!お主は武術は不得手だが頭がキレる。それはまさしく軍師の才!その頭脳を活かし一朗太を支えよ!」
水吉はここで言葉を切った。
水秀は、
「はっ…!!」
と一言しか返さなかったがその一言に込められた思いは未知数だった。
だがその思いは水吉にはしっかりと届いていた。
水吉は紙に視線を落とすと、
「次に『五郎太』!お主に与える名は海羅鬼『水尾』!お主はまだ幼く文武どちらも目立つ才は持たぬ、だが誰よりも人を思いやる心を持っておる!それはまさしく宰相の才!その義の心をもって一朗太を支えよ!」
水吉は水尾にやさしい視線を送った。
水尾はその視線を受けると涙が止まらなくなってしまった。
だが嗚咽まじりの声で、
「父上…!」
と言うだけで水吉を引き留めようとはしなかった。
水吉は愛情を持ちつつも非常に水尾から視線を逸らすと語りを続けた。
「『那古』!お主には女子でありながら将として名を授けることまずは許してほしい。じゃがお主は一門の誰よりも気高く活発じゃ。お主の才はそれ故に男児の才!ゆえにお主が名乗る名は海羅鬼『水那』!その才一朗太の為に存分に奮え!」
水吉は水那を見た。
水那は、
「うんっ、うんっ…!」
とひたすらに頷いているがその目からは涙が止めどなく流れていた。
水吉は水那に微笑みかけると紙に目を戻した。
「そして最後、『一朗太』…!」
一朗太はようやく涙で濡れた顔をあげた。
水吉はその顔をしっかりと見据えると再び口を開いた。
「一朗太、お主には今まで海羅鬼に無かった特別な名をやる。その意味しかと受け止めよ!一朗太、お主の名は海羅鬼『炎尾』」
「炎尾…!」
「そうだ。名に水の字が必ず入る海羅鬼一族じゃがお主にはあえてその逆である『炎』の字を授ける。炎は時に水をも凌ぐ、お主のその燃え盛る業火で海を、いや日の本を制するのだ!」
その言葉を聞いた時一朗太の心に火が灯った。
海しか見据えていなかった一朗太が今その眼差しを陸に向けた。
瀬戸内だけじゃなく日の本も?
それは父上にも出来なかった事だぜ?
俺に出来るか?
でも、
「燃えるじゃねーか…!」
「ふっ、お主ならばそう言うだろうな。陸に揚がれ山を登れ、登り詰めよそしてわしの見れなかった頂の景色をお主は見るのだ!
頂の景色はさぞや美しかろうな…」
水吉は夢見ていたのだ、誰にも気づかれないように日の本の頂を、その夢は今一朗太にいや海羅鬼第5代目頭目『海羅鬼炎尾』に託された。
「あとからやっぱり見たかったとか言い出しても知らねーからな!」
「ふっ、言わぬわ」
二人の口調は笑っていたが目から涙が溢れていた。
逝く者、見送る者。
これが乱世なのだと炎尾は痛感していた。
その時、
「敵ながらあっぱれだ…」
男が唐突に放った。
水吉は男に、
「名を聞かせては貰えぬか?」
と尋ねた。
男は少し迷ったが口を開いた。
「わしの名は『明智光秀』。そなたがこの世を去る事本当に心苦しく思う、乱世には求夢者が必要じゃ…」
「求夢者かそれならばまだおるだろう…。乱世はいつか終わるさ」
「ふっ、ならば待とう。お主のせがれはわしが責任を持って送ろう」
「かたじけない」
水吉は頭を下げた。
男は初めてふっ、と少し微笑んだ。
水吉は再び皆に向くと、
「皆、お別れじゃ…」
と言った。
だが水吉の様子はどこか清々しく、この世に未練は無いように思えた。
「俺の勇姿空で見てろ…!」
一朗太は言った。
何か言わないと涙が止まらなくなりそうだったからだ。
皆も各々涙を必死に堪えていた。
そこに男が、
「急げ、そなたらは生きるのだろう?ならば時間が無い」
と急かしてきた。
水吉は微笑み炎尾を見た。
炎尾は頷くと、
「行くぞ…」
と言って鉄格子から離れ歩みだした。
それはあまりにも素っ気なく皆は驚いていた。
だが炎尾はどんどん水吉から遠ざかる。
その時だった。
「一朗太ぁっ!!」
水吉の声が飛んだ。
炎尾は驚き足を止めた。
だが振り返ることはしない。
水吉はそんな事気にせず静かに、
「気張れよ…」
と一言いった。
炎尾はそれでたがが外れ涙がどっと溢れてきた。
炎尾はそれを隠すため背を向けたまま、
「炎尾だ…っ、バカヤロー…っ!!」
と言って再び歩き出した。
水吉はいつの間にか大きくなった炎尾の背中をずっと見送っていた。
「光秀、何をしておった?」
光秀は炎尾を送り届けた後主君であり将軍の足利義英に呼び出された。
「眠れぬ故、少し散歩を」
光秀は言った。
義英は、
「ふっ、そうか」
と納得しない様子で言った。
光秀はそんな義英を差し置き、
「何のご用でしょうか?」
と尋ねた。
義英は突然悪い笑いを浮かべた。
「海羅鬼のせがれが来ているそうだな?」
「そのようで」
「ならば明日の処刑にその嫡男を連れてこい」
光秀はその言葉に怒りにも似た驚きを覚えた。
「それは剰りに酷でございます。わしにはその様な残酷な真似は…」
バチンッ!
突如光秀の頬に平手が飛んだ。
「やれと申しておる」
見ると義英が光秀を睨み付けていた。
光秀にはまだ逆らえる様な力は無い、
「かしこまりました…」
光秀は渋々承諾した。
その後光秀により炎尾を捕らえる為の兵が動いた。
夜が明けた。
炎尾達は洲本の防御を固めるため大急ぎで帰る仕度をしていた。
「急げ!三好は瀬戸内を狙ってる、俺の不在に漬け込んで攻め入ってくるかもしれない!」
炎尾は港で働く兵達に次々と指示を出していた。
その時、
「誰だ、貴様らっ!止まれっ!」
館から怒号と共に三十人程の武装した兵が現れた。
兵は綺麗に統制された動きで整列するとこちらに槍を向けてきた。
「誰だ?テメーら…!」
その切っ先は皆一様に炎尾に向いていた。
その時、
「捕らえよっ!」
いきなり兵がガバッと二つに割れそこから将らしき男が出てきた。
それと同時に兵達が炎尾に襲いかかった。
あまりに突然の出来事に炎尾は抜刀することすら出来ずに縄を打たれた。
「行くぞっ!」
将が命ずる。
兵達は炎尾を羽交い締めにしたまま歩き出した。
「兄上っ!!」
異変に気がついた水羽が抜刀した状態でやって来た。
水羽は戦う気だ。
炎尾は、
「館の防御を固めろ!俺は大丈夫だ、必ず帰る!」
と叫んだ。
水羽は一瞬躊躇ったが炎尾のまっすぐな瞳を信用して刀を収めた。
炎尾を連れた一行は殺生をすること無く館を後にした。
水吉の処刑は大阪で一番人通りの多い大通りで行われる。
水吉は既にそこに造られた処刑台に座らされ鎖で繋がれていた。
「今はどんな気分だ?」
義英は暇潰しに聞いてみた。
水吉は案外しっかりした眼差しで義英を見据え静かに、
「よい気分だ…」
と言った。
「これから死ぬのにか?おかしな奴じゃ」
義英はそんな水吉を嘲笑した。
だが水吉はそんな事など気にせず、
「死のうが死まいが関係ない。息子があそこまで立派に育ったのだもう未練など無い、それに見てみよ良き天気だぁ」
と言って空を仰いだ。
「ふっ、つまらんの」
義英は不服そうに去っていった。
処刑台の周りには続々と野次馬が集まってくる。
まさかこのような形でこの世を去るとはな…。
思えば充実した人生じゃった。
健やかに育ち、功を立て、妻をめとり、子を持ち…。
人が幸せと呼ぶ事は一通り達成した、継ぐ者も出来た向こうではゆっくりできるだろうかの?
「処刑を始めるっ!!」
辺りに義英の声が響いた。
『うぉーっ!!』
辺りが歓喜の叫びで木霊した。
義英は続ける、
「この者、海羅鬼水吉は幕府の意向に叛いた、これは幕府への謀反!それはまさしく帝への謀反!よって我らはこの者を帝に変わり成敗する!」
『殺せぇっ!!』
『打ち首だぁっ!!』
野次馬は口々に叫ぶ。
民にとってまだ幕府は絶対。
将軍が罪人と言えば例え冤罪だろうと咎人となるのだ。
だが今の水吉にはそんな殺伐とした状況も風流に感じることが出来た。
死を悟れば何もかもが美しくなると水吉は痛感した。
「止めろっ!離せっ!」
炎尾は兵士に羽交い締めにされたまま処刑場に連れて来られた。
「父上…っ!」
炎尾の視線の先には水吉がいた。
だが水吉には炎尾は野次馬と同化してしまっていてわからない。
なんで…っ?
「何か最後に言いたいことはあるか?辞世の句は無いのか?」
義英は愉快そうに聞いた。
「生憎、俳句は好まぬ故…」
水吉は辺りを見回した。
その瞳に一際熱い視線を自分に送る少年が写った。
炎尾っ!!
水吉は出かかった言葉を引っ込めた。
なぜおる?
隣に兵が二人、ふっ、義英はどうやら相当ひねくれているらしい。
じゃが、ならばお主のくれた機会使わせて貰おう。
「一つだけ、一族に」
「ほう、一族に申してみよ」
義英は頷いた。
水吉は恐縮するとまっすぐ前を見つめた。
「父上?」
「海羅鬼よ!我が死は前進、我が屍は道!我を踏み越え前に進め、振り返ることは許さん!海羅鬼は我が故郷であり愛した家族であった。礼を言う!」
水吉は頭を床に擦り付けた。
それは涙を隠している様にも見えた。
「父上…。礼何て言うなよ…」
炎尾の目頭も熱くなった。
パチパチパチっ
「立派な演説じゃ!これで未練も無かろう、刀を取れ!」
義英は拍手をしながら言った。
義英の元に刀が運ばれて来た。
「これで終わりだ…!」
義英はその刀を構えて水吉の後ろに立った。
水吉も身を起こす。
その顔に涙は無く清々しい顔になっていた。
父上っ!
もう逝くのか?
死をじまうのか?
教わりたい事があった、話たいことがあった、まだ一緒に居たかった!
炎尾っ!
もう逝くぞ!
辛い思いをさせる事許せ!
体験させたい事があった、共に刀を交えたかった、まだ一緒に居たかった!
「死ねぇーっ!」
刀の切っ先が勢い良く落ちた。
それは水吉の首に飛んでいく。
じゃがな例え死のうと!
「わしらは一緒じゃぁっ!!」
バスっ!
辺りに沈黙が走った。
飛び散った鮮血、そして水吉の首が転がった。
『うぉーっ!!』
野次馬が再び歓喜に叫んだ。
うるせぇよ…。
「ハハハハハっ!死におった、義賊が死んだぁっ!」
うるせぇよ…!
父上は死ぬ必要何て無かった。
まだ、生きていて良かった。
でも死んだ…。
殺したのは…あいつだ!
「うあぁぁっ!!」
父上を殺した奴は許さない!
炎尾は兵を振りほどくと義英向かって突進した。
「許さねぇぇっ!」
炎尾は高くとび抜刀したその刀は義英に向けられた。
殺す。
義英まであと少し。
その時、
ガキンッ!
義英の目の前で刀をとめられた。
「てめぇっ!」
炎尾の刃を止めたのは光秀だった。
光秀は義英と炎尾の間に入り刀でしっかりと炎尾の刀を受け止めていた。
「去れっ…!」
光秀は小声でいった。
「てめぇがどけっ!」
炎尾は威嚇とともに力を強める。
光秀はそれを必死に受け止めながら、
「バカを言うな。父の言葉を忘れたか…!お主は生きなければならぬ、生きて海羅鬼を繋がねばならぬ…!」
と炎尾をさとす。
炎尾の刀から少し力が抜けた。
「水吉殿の首は持っていって良い。首を持ち直ぐ様去れ…!」
光秀は炎尾の目を見た。
炎尾はコクりと頷いた。
「光秀何をしている!?そんなガキさっさと斬ってしまえ!」
義英が喚く。
うるさい主君だ。
『やぁっ!』
光秀はわざと声をあげながら押す力を強めた。
だがそれは逆に隙となる、炎尾はそれに乗じて光秀を蹴り飛ばした。
光秀は義英を巻き込んで大きく尻餅をついた。
「み、光秀!何をしておる!?」
光秀は急いで体勢を整えようとした。
だが時は既に遅い。
炎尾は二人の傍らをバッと駆け抜けると、既に袋に詰められた水吉の首を持ち去っていった。
『逃げたぞ!』
『何て事だ!』
辺りは騒然となった。
義英も、
「なんっと!追えっ奴を捕らえよ!」
とお慌てである。
ふっ、上手くいったか…。
そんな人々を尻目に光秀は内心ホッとしていた。
彼らには辛い事をしてしまった。
だが、悲劇はまだ続くだろう。
それ故に今宵は泣け、明日よりまた貴様らは戦乱の渦に巻き込まれるのだから。
光秀は祈った。
海羅鬼の明日を…。
「くっ!殿はまだか?」
海羅鬼館では炎尾の不在により不安が募っていた。
「やっぱり、助けに行きましょうよ!」
波が言った。
それに砲船も、
「そうです!殿が死んでは一大事にこざいます!」
と言った。
だが現在の最高機関である水羽は口をハノ字に紡いだまま開かない。
「水羽様ぁ…」
砲船は諦めにも似た溜め息を吐いた。
その時、
「俺なら…いるぞ」
皆が振り向いた。
「あ、兄上っ!」
そうそれは炎尾であった。
だが炎尾の顔は蒼白でまるで生気が感じられなかった。
「どうしたんだ?」
水羽が怪訝そうに首を傾げた。
炎尾は視線を自分の右手に落とした。
そこには小汚ない袋が握られていた。
若干血が滲んで要るようにも見えた。
「な、何それ?」
波がおそるおそる言う。
炎尾は一度躊躇ったがふぅ、と溜め息を吐くと口を開いた。
「俺は…、救えなかった。目の前で見てた…」
「えっ?」
水羽は動揺する。
「目の前で父上が斬られたのに、何も出来ずに逃げてきた!」
炎尾はバッと袋を差し出した。
「まさかこれって?」
皆は目の前に置かれたそれを半信半疑で睨んでいた。
その時、
「すまなかったっ!!」
炎尾が床に額を擦り付けて大声で吐き捨てた。
肩は嗚咽で時折上下していた。
「お、おい。頭あげろ!」
水羽がそう促しても炎尾はかおを上げない。
「すまない!こんな危険な事させて!辛い思い沢山させて!父上、助けられなくてっ!」
それは炎尾の心からの気持ちだった。
それに皆は唖然となった。
だが水羽は違った。
「顔をあげろ。お前が謝る必要はないだろ」
炎尾はゆっくり顔をあげる。
水羽はそんな炎尾に歩みよった。
「お前の意思じゃない。全部皆の意思だ!一人一人違う意思を持ってここにいるだから悪いのは皆だ!兄上一人じゃない」
「でも、当主は俺だ!責任は全て俺が…!」
「人の命の責任何て取れないよ。人の命は人間が責任持てる程軽くない、だから皆自分の行動に責任を持つんだ。例え自分が死んでも他人にその責任がかからないように自分でちゃんと責任持てる様に…」
炎尾は水羽の言葉を黙って聞いていた。
水羽はさらに続ける。
「だから、責任は持たなくて良い、いや持っちゃだめだ!兄上が責任を感じたらその道を信じ死んでいった人々の信念を責任を否定する事になってしまうから!」
「じゃあ何もするなって事か…?」
「そうじゃない。一つだけある泣いてあげるんだ。人が死んだときその近しい人が涙を流せばその人の人生が証明される。その人がここで生き、人と交わり、死んだ。そんな人生がこの世に認められる。これだけは残された者の責任だ!だから泣こう今日はとことん泣こう…」
水羽は炎尾に手を差し出した。
炎尾はそれをゆっくりととると、
「あぁ、泣こう…。今日は泣いて良い日だ」
と言った。
水羽は満足そうに微笑むと炎尾を引っ張った。
炎尾も立ち上がる。
既に炎尾は泣いていた。
それを見た皆も泣いた。
それを聞いた屋敷の者も泣いた。
その日、館は悲しさと決意に満ちた涙で溢れていた。
「海羅鬼は任せたぞ?」
義英は夜に密かにある3人の人物を招いた。
「承知致しました将軍様」
「けっ、殺しちって良いんだよな?」
「戦か?血がたぎる」
その三人から放たれる殺気は凄まじく三人がいるだけで部屋がいっきに重たくなった。
義英は静かに言った。
「左様。海羅鬼など滅ぼしてしまえ!三好三人衆」
続く…。
海羅鬼族 名前 読み方。
長男
海羅鬼 炎尾 (かいらぎ えんび)
次男
海羅鬼 水羽 (かいらぎ すいば)
三男
海羅鬼 武水 (かいらぎ たけみず)
四男
海羅鬼 水秀 (かいらぎ みずひで)
五男
海羅鬼 水尾 (かいらぎすいび)
長女
海羅鬼 水那 (かいらぎ みずな)