異世界男女戯れ合い録 ②メイドさんは虫嫌い
短編小説の『性的興奮』の方もよろしくお願いします。
僕は部屋のドアを音を立てないようにゆっくりと開けて、廊下に人がいないことを確認した。
……よし! いける!
僕は部屋を飛び出し長い廊下を走った。
「ご主人様?」
「っ! ……や、やあ! カトレア」
廊下を曲がってもう少しで玄関という所で見つかってしまった、それも一番見つかりたくない白黒のエプロンドレスを着た女性に。
彼女、カトレアはこの屋敷のメイドである。
容姿端麗だし、家事や仕事は完璧にこなすし、余った食材で賄いを作るなど料理も得意……まさに理想のメイドだろう。
しかし。
「ご主人様? 勉強は終わったのですか? 」
睨みつけるような眼と疑い満点の声のトーン。そのメイドとは思えない厳しい態度に僕は物怖じする。
……このメイドかなり怖い。
歳だって16歳の僕とそう変わらないはずなのに。
「も、もちろん。終わった! じゃそうゆうことで」
僕はカトレアから逃げるように玄関に向かうが、それは叶わなかった。
「ご主人様の残念な頭ではあの量が終わるわけないじゃないですか。部屋に戻りますよ」
ため息まじりに腕を引っ張られていく。それも物凄い力である。
「僕もうあの部屋嫌なんだよ! 雨漏りばっかりで!」
「過去のご主人様がかっこつけて屋根裏部屋を自室に選択なされたんでしょう」
確かに思春期だった僕は親や使用人たちから1人になりたくて部屋を変えてくれと要求したような気がする。
「一時的でもいいから他の部屋とか……?」
「申し訳ありません。他の部屋はただいま大掃除中のため立ち入り禁止です」
「いやでも、部屋なんてたくさんあるんだし一つくらい……」
「だめです」
「集中力が……」
「しつこい」
淡々と無慈悲に屋根裏部屋の扉が閉められた。
その夜。抜け出そうとした罰としてさらに大量の課題がカトレアによって渡されたため、僕はずっとペンを走らせていた。
……というか、彼女は掃除の邪魔をさせたくなくて、この部屋に閉じ込めておきたいだけの気がする。
「はあ……こんな量終わるわけないし、もう夜の11時だし寝ようかな」
バタン!!!
物凄い勢いで自室のドアが開け放たれ、無表情のカトレアが部屋にズンズンと乗り込んできた。
「ご、ごめん! 今のはひと休みしたら、また勉強しようって意味でっ!」
最近のメイド様は超能力でも使えるのだろうか。
僕は必死に言い訳を作った。
「…………」
しかし彼女は僕の横を通り過ぎて、無言のまま僕のベッドに横たわってしまった。
「…………」
状況がまったく飲み込めないぞ。
「えーとどうしたの? カトレア?」
掛け布団の上に横になってそっぽを向いてしまっている彼女に僕は話しかけた。
「……なんでもごさいません」
いやいや! そんなわけないだろ!
僕は激しくツッコミたい欲求を心に止めた。
「とりあえず、そこ僕のベッドなんだけど……」
「…………」
彼女に退く気はないようである。表情もわからず、無言のままであるが、その彼女を包む雰囲気が物語っていた。
なにが強気な彼女をこんなにさせたのだろう。原因は?
僕は眠くなった頭を再回転させて考えた。
そういえば、昔もこんなことがあったような
……。
まだ2人とも幼かったころ、今と変わらずカトレアは厳しい性格だったけど、彼女に何かに怯えるようにして、たびたび僕に抱きついてきたことがあった。
「…………もしかして、虫嫌い治ってない?」
「ひっ!!」
『虫』という言葉を聞いた途端ピクンと分厚いメイド服の上からでも彼女の体が強張ったのがわかった。
思えば彼女がメイドとして本格的に働くことになってから屋敷で虫を目撃することはなくなった。彼女の努力の賜物だろう。
おそらく今回の大掃除の時にたまたま遭遇してしまったのだろうか?
兎に角、彼女が極限状態であることは間違いなさそうである。
ぴちゃん。
「ひゃああ!!」
ベッドの真上の天井から水滴が彼女の胸元に落ちてきた。
「ごっごしゅじんさま! とって! とってください! 」
「はは。取るもなにも水……」
珍しく取り乱した彼女を微笑ましく思いつつ、現状を伝えようとする僕だったが。
「お願いっ! とってえええ!! 」
「ちょ!? まって!? 」
なんと彼女は僕の眼の前で、その豊満な胸をさらけ出すかのようにメイド服の胸元を勢いよく開いたのだった。
「いやだから……」
「はやくっ!!」
「はい……」
混乱している人に合わせるべきだと、本にも書いてあった気がする。
彼女が落ち着いたところで適当に真実を話そう。
「じゃあいくよ」
「んっ……」
涙目の彼女の胸に後ろから手を差し込んだ。
一応探すふりをしなければいけないため、胸の周辺をなるべく当たらないように弄った。
「っ! 見つかりました……?」
見つかるわけねーだろが。
僕は胸に本音をしまいつつ、否定の意味で無言で彼女に返した。
「じゃあもっと探してくださいっ! 下の方とかも! 」
「しっ下?!」
彼女は目線でスカートの方へ訴えかける。ミニだから突っ込みやすそうだ____って、いやいやいや、そうじゃなくて。
「わかった。じゃあ入れるよ」
僕は彼女の要求通りに胸を探っていた手を一つスカートの中に手を入れた。
「んっ! んんっ! あ、いやっ……!」
側から見れば、涙目のメイドが上下同時に弄られて喘ぎ声を上げて体をピクつかせているようにしか思えない。
「ごっごしゅじんさまあ……んっ! 」
……僕だって極力当たらないようにしたいのだけれど、予想外の大きさの起伏や、暗闇の中で手を動かすわけだから、微かに柔らかい胸やさらりとした太ももに触れてしまうのだ。
「あっんんっ! はやくっ……! 」
そしてそのたびに彼女は虫に触られたと勘違いして悲鳴と体が拒否反応を起こしているだけなのだ。決して気持ちよくなってるというわけでは____
「と、言うわけなんだけど、信じてくれる?」
「誰がそんな話信じられますか!!! この変態!!!」
翌朝僕はカトレアに事情を説明しなければならなかった。
というのも昨日いつの間にか寝てしまった彼女は虫を見つけてからの記憶がないらしい。そして朝起きたら乱れまくったメイド服と隣で寝ていた僕を見て『強姦魔』とでも思ったのだろう。
「しっかりとした記憶にはないけど、夢をみたような感覚は残ってるんですからね! 」
「本当にごめん……」
「......だから今度はちゃんと忘れられないようにように触ってください」
「へっ?」
他の短編小説もよろしくお願いします。