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indexFの惨劇  作者: シケモク
1/10

あかちゃん

グチャ


「本当に悪い子」


グチャ


肉に突き立てる刃の音が、わずか6畳ばかりの部屋に響き渡る。


「…本当に悪い子ね」


長らくカーテンが閉め切ってあっただろうその部屋は、纏わりつくような湿気と、鼻を突くような酸えた匂いが充満している。


グチャ


「どうして、こんな子に育ってしまったのかしら」


グチャ


馬乗りになり、何度も刃を振り下ろす度に、跳ね上がるマットレスから埃が舞う。


「いけないのは、この耳かしら…」


…ミチ…ミチ…ミチ…


左耳の付け根に刃をあて、ゆっくりと削ぎ落としていく。手入れのされていない頭髪と、既に渇きはじめた鮮血が刃先に絡みつく。


ブチン


だらりと垂れ下がった耳を、耳たぶのあたりで力まかせに引きちぎる。


「どうして良い子にしていられないの」


原型を留めない、グチャグチャになった耳を無造作に床へ投げ捨てる。さらに彼女はただの肉塊となった“それ”の右手を掴み、指にギリギリと刃をあてる。


「お母さんと約束したのに」


…ギリ…ギリ


あっさりと切り落とされた指を上着のポケットにしまい、彼女は穏やかな笑みを浮かべながら“それ”に言った。


「…さようなら、私のあかちゃん」





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