表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/23

バトル決着、そして

「エリカ、そっち行ったよ!」

「分かってるって!」

「こっちはまかせろ!」


 リンネ・エリカ・アイのコンビネーションが、上手く機能し。

『ぐわっ!』と、敵兵が次々とられて行く。


「我等は、無益な戦いを好まん!戦意無き者はじっとしてろ!」

「そうそう!邪魔なのよ!」


 そんな少女達の呼び掛けに、応じる者が増えて来た。

 あっさりと倒される兵を見て、戦意を喪失したのだろう。

 広い部屋へと出る頃には、刃向う兵はもう居なくなっていた。

 しかし、3人の目の前には。


「ここまで辿り着くとは。」

「一応は褒めてやる。」

「だが、ここが!貴様等の墓場だ!」


 幹部3人が、今や遅しと待ち構えていた。

 アイが戦意を鼓舞する。


「ここからが本番よ!」


「分かっている!」「オーケー!」


 2人が応える。

『ビット展開!』と、アイは。

 5つの小さな球体を放り上げた。

 そして2人は、アイから預かった装備を。

 それぞれ装着して、能力強化。

 リンネは鎧、エリカはリング。

 イオは、アーシェを守って一歩下がる。

 しばしの間、にらみ合った後。

 行くぞっ!

 双方の掛け声と共に、バトルがスタートした。




 アイは状況分析しながら、2人に敵の動きを伝える。

 エリカはリングで超能力を補強、多重瞬間移動で全方向から念動力で攻撃。

 リンネは、魔法の重ね掛けを開始。

 《金+火+水=水蒸気爆発!》

 これは、アイが提案した攻撃。

 魔法と科学の融合である。


「何の!」


 リンネの魔法をバリアーで防ぐ、超能力者のトエル。

 その横から、エリカがアタック。


「行っけーーーー!」


「甘い!」


 科学者のホマルダが、超合金の盾を出現させる。

 《金+木+火=マグマ!》

 リンネが盾に、ドロドロになった金属をぶっ掛ける。


「なにくそ!」


 魔法使いのメリルが咄嗟とっさに、大量の水を掛けて応戦。

 熱と水のぶつかり合いで、辺りは霧に包まれた。

 《火+水+金+木=竜巻!》

 リンネが霧を吹き飛ばした後。


「トライフォース!」


 アイが、そう叫ぶと。

 正四面体に配置されたビットから、もう1つのビット目掛けて。

 高出力レーザーを照射。


「ぐっ!」


 その間に挟まれていた、トエルの左手が遣られた。


「これはどうだ!」


 ホマルダが、広範囲に超音波攻撃。

 しかしこれは、イオが打ち消した。


「もっと、正々堂々勝負しろよ。」


 イオはこの戦いに対して、余り介入する気は無い様だ。

 それが幹部にはしゃくさわったらしく、攻撃が雑になって来た。

 それをアイが、見逃す筈は無かった。

『今だよ!』と、アイが叫んだ。


「良し!」「これだ!」


 残り2人が前後に並ぶ。

 渾身の力を込めてリンネが放った、多数の雷火球を。

 後ろに控えしエリカが瞬間移動させ、幹部の背中に命中させた。

 もんどり打って崩れ落ちる、幹部達。


「まだだ!」

「我々の攻撃はこれからだ!」


 強がってはいるが、少女達に押されているのは事実。

 その時。




『撃てーーーーっ!』




 地上で声がしたかと思うと。

 《ジャスティ》のメンバーが、花火らしき物を打ち上げた。

 空中でバンッと破裂した後。

 細かい粒子が、辺り一帯に降り注ぐ。


『起動!』


 その声に。

 本部内に残っていた僅かな敵兵が、スイッチを押した。

 すると、敵味方の区別無く。

 地上の人々の動きが止まった。


「エルベルめ。こそこそ動いていると思ったが、こう言う事か。」


 ホマルダが呟く。

 何?何が起きてるの?

 少女達は嫌な予感がした。

 すると天井から、自慢気なエルベルの声が聞こえて来た。


『地上の者達は、我々の支配下に置いた!今散布したナノマシンが脳に到達し、私の指示しか受け付けなくなったのだ!』


 背筋がゾッとする様な、エルベルの言葉。

 勝ち誇る様に、エルベルが続ける。


『救世主側の者共よ!降伏せよ!でなければ……!』


 地上でエルベルが、さっと手を挙げた。

 すると、地上の人達は。

 武器を振りかざして、同士討ちを始めようとする。


『どうした!早く降伏しないか!』


 エルベルの声が、段々凶悪染みてきた。

 地上からは、スピーカーを通して。


『嫌だ!』『戦いたく無い!』『助けて!』


 人々の悲痛な叫びが、地下へ多数伝えられる。

 くそっ!ここまで追い詰めたのに……!

 エルベルの言葉に、少女達は諦めかけていた。

 少女達に一瞬、心の隙が生まれる。

 そこを幹部達は見逃さなかった。


「くたばれーーーーー!」


『危ない!』と3人が思った、その時。




 《皆さん、これが『操られる』と言う事です。良く覚えておいて下さい。》




 イオが全世界に、テレパシーで呼び掛けたかと思うと。

 イオの姿が光り輝く球体になり、全世界を包んだ。

 そして、お互いに攻撃をしようとしていた人達は。

 ナノマシンの指令から解放された。

 改めてイオは、全世界へ言葉を発する。


 《ナノマシンを消去しました。これで分かったでしょう?誰が敵で、誰が味方か。》


 敵味方の区別無く攻撃しようとした、エルベルの本性が。

 完全にあらわとなった。

 流石にこれには、《ジャスティ》のメンバーもうんざりした。

 エルベルをののしる声が、方々から上がる


「我等は、仲間では無かったのですか!」

「同胞の命を、使い捨てにするとは!」

「あなたにはもう従わない!救世主の側に付く!」


 こうしてジャスティは、呆気あっけ無く瓦解した。




 イオの呼び掛けと同時に。

 少女達を襲った幹部達の攻撃は、難無くかわされていた。

 と言うよりも、《何らかの力でベクトルを曲げられた》の方が近かった。


「なっ!」


 驚いて、慌てて下がる幹部達。

 エルベルの脅しで、少女達は一瞬硬直したが。

 イオの力によって、何とか復帰した。

 人間の姿に戻ったイオへ、アーシェが。


「これが、幹部達の言っていた〔あれ〕ですね?」


 高揚した顔で、そう尋ねる。

『これで終わりだ』とホッとしたのだろう。

 でも違った、イオは否定する。


「これじゃ無いよ。」


 いまだにイオは、冷静だった。

 少女達へ向け、彼は叫ぶ。


「みんな集まれ!次の《形態》が来るぞ!」


 少女達は慌てて、イオの下へ集合し。

 幹部達を迎え撃つ為の陣形を敷いた。

 前からリンネ、エリカ。

 続いて、ピットでリンネの前にシールドを張るアイ。

 そして、イオとアーシェ。

 幹部達は、思い通りにならない事を歯がゆく感じながら。

 ぶつくさ呟き始める。


「これを使う羽目になろうとは……。」

「屈辱よのう……。」

「しかし、これで終わりだ!」


 そう叫びながら、ホマルダが懐から取り出した球体。

 それに、メリルとトエルが力を込める。

 辺りが一瞬、まばゆく光ったかと思うと。

 光は球体に吸い込まれて行った。

 そして、光が消え去った後から。

 見た事も無い青年が現れた。


「出たな、【キメラ】め。」


 イオは青年を、そう表現した。


「我は、全能の者なり。その場にひれ伏せ。」


 そう言って、青年は。

 掲げた右手を、縦に振り下ろした。

 すると周りの設備が、重力でグシャッと潰れた。


『何をなさる!これでは、我々の組織が消滅してしまいますぞ!』


 エルベルは。

 自分が掛けていた《保険》をあっさり破られ、焦っていた。

 周りには、敵しか居なかったのだ。

 エルベルに対し青年が、冷たく言い放つ。


「お前の役目は終わった。消えるがよい。」


 青年は掌にプラズマ球を生み出し、地上のエルベルへ向け投げ付ける。


『そ、そんな……!』


 そんな言葉を残し、エルベルは消滅した。

 ……かと思われたが。

 寸での所でプラズマ球はれて、空の彼方へ飛んで行った。

 青年は、それを遣って退けたであろうイオを。

 ギロッと睨み付ける。


「何故、助けた?」


「あいつを裁くのはお前じゃ無い。この世界の民だ。」


「では、我でも構わぬのだろう?」


「お前は人間である事を捨てた。もう、その資格は無い。」


「戯言を。」




 ……!

 少女達は、イオと青年のやり取りを。

 黙って傍観しているしか無かった。

 何が何だか、初めは分からなかったが。

 ようやく気付いた。

 幹部達は【融合した】のだ。

 魔法・超能力・科学の力を1個体へと集約し、イオに近い存在となったのだ。

 少女達は皆、恐怖した。

 最早、私達の出る幕では無い。

 イオに賭けるだけ、祈る様にそう思っていた。




 その時。

 超能力の王Eを介して、各国の王が全世界へ通達した。


 《全員、安全な場所へ避難せよ!》

 《民は我々が守る!》

 《イオ殿!後は頼みましたぞ!》


 それを聞いた途端、蜘蛛の子を散らす様に。

 人々は慌てて、物陰へと隠れるのだった。




「この様になっても、まだ我に刃向うのか?」


 青年が問うも。

 イオはの返答は、あっさりしたものだった。


「それが役目なんでね。」


「我に勝てるとでも?」


「そうじゃ無い。《話にならない》んだ。お前は、今振るっているその力の〔原理〕を忘れたのか?」


「何を言い出し……ぐ、ぐわあああぁぁぁぁぁっ!」


 急に青年が、その場にうずくまって。

 頭を抱えながらもだえ出した。

 それを見て、アイが叫んだ。


「そうか!強大な力を、強引に手に入れたから……!」


「そう、脳に負荷が掛かり過ぎたんだ。急激にね。」


 イオは淡々とした口調で、そう言った。

 融合したとは言え、身体の仕組みは人間のままだった。

 それがあだとなったのだ。

 青年は苦しみながら、悔しさで心が押し潰されそうになる。

 くそう!

 理性が、理性が無くなって行く……!

 このままでは……仕方が無い!

 その後、青年は……。




「今度こそ、〔あれ〕を使ったんですよね?それで自滅したんですよね?」


 アーシェがイオへ、すがる様に言う。

 しかしイオは、冷たかった。


「もうせ。お前 《だけ》は、分かっている筈だろう?」


 お前 《だけ》?

 まただ。

 またアーシェが、特別扱い。

 今から何か、とんでもない事が起こるのだろうか?

 リンネ・エリカ・アイは不安だった。

 とても、とても。

 そしてそれは、悲しくも的中してしまった。




『《あれ》よ!来い!』


 そう言って青年が、両手を天に掲げると。

 青年の目の前に、半径1m程の〔鏡の様な物〕が現れた。


「先程の……ナノマシンで……動力源は……確保……した……!」


 何?何の事?

 不思議がる少女達。

 言葉が途切れ途切れに成りがならも、青年は叫ぶ。


『発……動!』


 鏡が鈍く光ると、その奥がトンネルの様に変わった。

 何処までも続く暗闇、そんな風に思えた。

 この光景に、イオがボソッと。


「とうとう来たか、《この時》が。」


 そして、リンネ・エリカ・アイへ向かって。

 一言、イオは告げた。




「さよならだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ