反世界勢力、結集
3つの国の大臣が、全員消えた。
そんなショッキングなニュースが世界を駆け巡って、早2か月。
国の民は王の決断を支持し、教会もそれをサポートした。
結果、どの国も。
王と同等に、イオを慕う様になった。
一方、教団を追われた強硬派は。
じっと耐えていた。
自らを《革命者》と名乗った、エルベル大司祭は。
地下組織【ジャスティ】のリーダーとして、各地の不満分子を取り込もうと躍起だった。
そして。
出会ってはならない3人が、そこに集まった。
「先の大戦以来だな。」
メリル卿は呟く。
ジャスティも、教会を隠れ蓑にして。
全世界に展開していた。
かつて程の人数は居なくても、テロ集団として活動するには十分だ。
その伝で。
ついこの間まで国の大臣だった3人が、一堂に会する事となった。
「こんな形で再会しようとはな。」
「本当に、因果なものだな。」
トエル卿も、ホマルダ卿も。
自分を追放した国を、民を。
逆恨みしていた。
自分のせいだとは考えない、それは自身の敗北を表す。
そんな事だけは認めたく無い、正にプライドの塊だった。
「エルベル、そなたは。我等に手を取り合えと?」
トエル卿が、元大司祭となったエルベルに尋ねる。
「はい。難しいのは分かりますが、それよりも。邪魔者を排除する事が先決でしょう?」
エルベルは冷静だった。
個々の力は強大、それでもイオには勝てない。
なら、3つの力を結集するしか無い。
そうして、新たな極になれば良い。
力を示せば、民もこちらに従わざるを得まい。
当然の分析だった。
「我等は今や、目的が同じ。それも道理だろう。」
「今更、技術提供に躊躇は無い。」
トエル卿・ホマルダ卿共に、異論は無い。
4人の利害が一致した。
忌々しい救世主を倒し、この世界を頂く。
その事に、何の躊躇いも無かった。
こうして、ジャスティの新体制が整った。
リーダーのエルベル、サブリーダーのメリル・トエル・ホマルダ。
その下の〔研究チーム〕〔情報収集チーム〕〔実働部隊〕。
侮れない集団が、ここに誕生した。
無論、各国の王は。
それも織り込み済みだった。
不穏な動きは、前々から察知していた。
それを黙認したのは。
この世界の《膿み》を、纏めて消し去る好機だからだ。
王とて、戦は望んではいない。
3人の王は、常々考えていた。
手を取り合って協力する時代が、そろそろ来ても良い頃だ。
救世主がこの世界へ降臨したのが、何よりの証。
神がそれを望んでおられる、それに従うまで。
長かった、本当に長かった。
漸く、肩の荷が下りる。
その前に、もう一仕事せねば。
そう思っていた。
「どうやら、逃げ出した大臣達は。元強硬派の集団に匿われているみたいです。」
アーシェが、教団からの調査報告をイオに伝えていた。
「予定通りだな。」
そう呟くイオの目は、鋭かった。
リンネがイオに問い掛ける。
「潰しに行かないのか?」
「まだだ。今は、こちらから仕掛ける時じゃ無い。」
「どうして放っておくの?」
イオの態度に、不思議がるエリカ。
普通なら、被害が出る前に叩き潰す。
そこで。
まるでイオの代弁者の様に、アイが言う。
「分かって無いなあ。『効果的な機会が必ず来る』、お兄ちゃんはそう言ってるんだよ。」
「そう。今の人達の考え方を変えるには、《タイミング》が必要なのさ。」
イオが付け加える。
『何で?』と、エリカはやっぱり分からない風。
禅問答の様に、イオがエリカに聞く。
「毒は、何で危ないと思う?」
「そりゃ、体がおかしくなっちゃうからでしょ。」
「何で、〔毒が体をおかしくする〕って分かるんだ?」
「それは、そう言う経験が有るから……あっ!」
やっと、エリカも。
イオの言いたい事に気付いた様だ。
「そう。結局人間は、《一度痛い目を見ないと分からない》んだ。悲しい事にね。」
そう告げるイオの目は、寂しそうだった。
イオの気持ちを察しながら、リンネは彼に尋ねる。
「本意では無い……んだな?」
「大勢の人が傷付くのを、この目で見て来たからな。そう言った事態は、なるべく避けたかったんだが。」
イオは優しい、それは皆が知っていた。
だからこそ、苦しいんだろう。
なら、私達が支えないと。
イオが救ってくれた様うに。
苦しむ時も悲しむ時も、喜ぶ時も笑う時も。
願わくば、ずっと。
ずっと……。




