表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おばちゃまの勝手に相談室。 〜悩む先生〜

作者: 七草せり

おばちゃま先生は悩んでいた。



「ねーえ、 なずなさん……。 最近私の所に

いらっしゃる方達、 年齢層が若い方ばかりよね……。 何て言うのかしら? はっきり言っていいアドバイスが見つからないの」



自宅部屋のソファに座り、紅茶を一口飲み、

ため息をついた。



「急にどうしたんですか……? 皆さん先生のアドバイスで、 救われていると……」



何と無く適当に言ってみた。



実際、皆さんどう思っているかなど、知る訳ない。


しかし、まあまあ相談する人は来るので、

悪い評判はないとも思う。



余りにも適当なカウンセリング。

独断と偏見。



しかし、大抵の人は納得して先生の話を

受け入れる。




「そうならいいけど。 でも違ったら……。

救いになっていなかったら。

そんな風に考えてしまうのよ」



先生らしからぬ言葉。


一体どうしたのだろう……。




虚ろげに書斎へ行ってしまった。



まあ、今日の予約は幸い? にも入っていない。


先生も色々あるのだろう。




私は仕事をする部屋で、予約確認などの

雑務をした。



「先生に悩まれたら、カウンセリングにならないじゃない。 いくら適当とは言え、仕事してもらわないと……」



ブツブツ言ってしまう。



暫くして、私は先生の書斎へ向かった。


まあ、様子見を兼ねて明日の予定伝えようと

した。



「先生? いらっしゃいますか?」


ドアをノックして、声をかけた。



「何かご用かしら……?」



中から先生の声がした。

一先ずは安心?



「明日の予定を……」


「明日? 何かあったかしら……?」



え?


いや……。明日カウンセリングがある事は

知っているはず……。



「先生! あの、入りますよ!」



ガチャっと書斎のドアを開け、中に入った。



……。


初めて入る先生の書斎。


中は広く、壁一面くくりつけの本棚になって

おり、ギッシリと本が並べてある。



中央には、これまた高そうなアンティーク

テーブルがあり、ふわふわソファも置かれ

ている。


充分昼寝ができそうだ。



窓際にはズッシリとした感じの木製つくえと

社長椅子?


棚には色々な雑貨、置物がきちんと並んでいる。



「はあ……」



ため息が出てしまう程の異世界な書斎で

ある。




先生は気怠そうにソファに横たわっていた。



「なずなさん……。 どうなさったの?」


虚ろな目で私を見た。



「あ、 えーと。 先生、 お身体の調子は?

何かご様子が……」



先生を目の前にし、少しおぼつかない言葉遣いになってしまった。



色んな意味で圧倒される。




「あら。 わたくしを気遣って下さったの?

嬉しいわ。

わたくしは大丈夫よ? 」


「あ、はい。 それなら……。 いや、でも

先程予定のお話をした時……」


「あら。ごめんなさい。 少し考えごとしていて……」



不意に下を向いた。



やはりいつもと違う……。



「体調、 よろしくない様であれば、 明日は

キャンセルして……」



そう言った私の言葉を遮った。


「なずなさん、何があってもねお仕事はお休みしてはいけないの。

……色んな方とお会いして、

正直自信を失くしたりする。 わたくしの

言葉や思いは、きちんと相手に伝わったのか。 これで良かったのか……。 いつも手探り……。 でも、お仕事はお休みしてはいけないの」



身体を起こし、ソファに座りタバコに火をつけた。



「貴女の心配をよそに弱気になってしまって、ごめんなさい……。

最近若い方ばかりで、わたくしの考えは

古いのかしら。 何て考えてしまったり。

ダメねぇ。 カウンセラーが……」



フーッと煙をはいた。


先生が小さく見える。



いつも強気な発言と行動。


人をばさっと切り捨てる先生……。



先生も人間なんだ。




改めてそう思った。



「先生は、 先生のままでいいと思います。

上手く言えませんが、 悩みの相談に年齢は

関係ないし、 アドバイスにだって年齢は関係ないと思います。 皆さん本当に先生のカウンセリングで救われてます!」



私は何故か先生の気弱な姿を見たくなかった。



いつも堂々としていて欲しい。



適当なアドバイスでも。




「ありがとう……。 何か、 悩んたりして

わたくしらしく無いわよね。 良かったわ。

なずなさんがいてくれて」



先生は優しく微笑んだ。




先生も人間。

悩むのは当たり前。



けれど、そこからどう立ち直るか。



先生は色々考え、立ち直る。



カウンセリングを受ける人も、色々考えて

立ち直る……。



人間なんだもの。悩んで考えて、また歩き

出す。



おばちゃま先生は、そんな人の背中をそっと

押す……。



助手の私は、時々先生の気弱さを断ち切る。



何と無く、先生と私の関係ができてきた様な……。


そんな気がしたある日出来事。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ