第十四話
「もっと静かにしないと気付かれるだろ」
「あのですね、力づくで破壊しろと仰ったのはエルネ様ですよ?」
「仕方ないだろ。ソードは破壊特化の武器じゃないんだから」
「俺の槍だってそうです……」
「ともかく二手に分かれて、そうさ……」
そこで言葉が途切れた。
自分達では静かにしているつもりなのだろうが、その会話は確実に屋敷にいた者の全員に届いた。
フレードリクとエルネが合流したのは、ちょうど、フレードリクがこの屋敷まで男達のあとをつけて、様子を見ていたときだった。
人買いであれば、間違いなく組織ぐるみなので自分ひとりの手には余るが、せめて証拠なりなんなりを見つけなければならないと、屋敷を見張っていたのだが、その後にすぐエルネがやってきて、事情を聞き舌打ちをもらしたのだ。
あの時無理やりにでも荷物の中身を見るべきだったと……
そうして、どこか裏口から進入し、二手に分かれて屋敷内を捜索しようと思ったが、入り口は一つしか見当たらず、仕方なしに家の一部を破壊することにした。
フレードリクは土の精霊の力を借りて、その力を自らの槍に纏わせ、破壊特化の武器として思い切り叩きつけたのだ。
正面から「あなたたちは王女殿下と大公女殿下をさらいましたか?」なんて聞いても無駄に決まっている。
ゆえに強行突破を図ったのだ。間違いなら、すいません後ほど弁償します。という気持ちも、かなりあった事を明記しておく。その辺は貴族のお坊ちゃんと言うところか。
そして二人の少年の視界に飛び込んだのは、だだっ広い広間と、二人に少年に対して、大きなベットの側面が見え、その上の手前側には綺麗な金髪をした白い肌の少女と、少し見えづらいが、奥には小麦色の肌が見え顔はここからでは確認できないが、おそらく見慣れた少女だろうと一瞬で把握した。
その少女達の上に群がる男達が何をしているのかもだ。
「フレードリク! 援護を!」
「了解!」
距離は20メートルほどか、かなり離れている。
状況を瞬時に把握した黒髪の少年は走り出し、金髪の少年はやや遅れ気味に走り出すも、精霊の力を借りるため集中し、そこから土のつぶてを凄まじい勢いで繰り出した。
その土のつぶては、先を走っていたエルネを追い越し、ベットの上にいた男達に襲い掛かり、ベットからはじき出した。
そしてエルネは、大きく跳躍して、ベットを、彼女達の上を飛び越え、着地と同時に抜刀して、相手の剣を受け止めた。
二人の少年が一瞬で状況を把握したように、ベルガー伯爵もまた一瞬で状況を把握したのだ。
ベルガー伯爵にとって、シーヴを殺せればそれでいいのであって、彼女を汚すのはいわばついでだ。
ゆえに、余計な邪魔が入ったと理解しシーヴを殺そうと瞬時に判断したが、その凶刃はシーヴに届かなかった。
そして間近でその少年の顔を確認した。
魔霊を使って大公女を襲ったのにそれを邪魔した少年。
3公爵の乱のとき、王家の側についた一族。
自分にとってとても許せる相手ではない。
ゆえに鍔迫り合いをしながら憎憎しげに睨み、少年に言葉を向けた。
「ヴィクセル……また貴様か! いつもいつも! 3公爵の乱の時も! 大公女を襲ったときも! そして今この場でも! 貴様は! 何故、貴様ら一族はいつも我らの前に立ちはだかるのだ!」
「あんたが何のことを言っているかわからないし、どこの誰かも分からないけど、これ完全に犯罪だよ。 もう諦めたら?」
「黙れ! 貴様ごとき小僧が! 私の何がわかる!」
「あのねえ、今来たばっかりの僕にそんなこと言われても分かるわけないじゃん。バカなの?」
凄まじい挑発だ。その挑発で激高したベルガー伯爵は、鍔迫り合いをしていた剣を上段に振り上げ、叩きつけようとしたが、その動きを察知したエルネは、その一瞬の予備動作の隙に思い切り相手の腹に蹴りを繰り出した。
その蹴りを受けたベルガー伯爵は大きく後ろに吹き飛ばされ、背中から床に叩きつけられた。
そしてエルネは後ろを振り返らず、自分の従者に向って言葉を放つ。
「フレードリク! 王女殿下と大公女殿下を命に代えても守れよ」
いつの間にかベットのそばに来て、王女とシーヴの拘束していた縄を外したフレードリクは了解の意を示した。
これは何だ? どうして? 私は……
男達が群がり状況が分からぬまま脳裏に浮かんだ少年の名をつぶやいた。
轟音が起きた瞬間、自分の体にのしかかっていた男達が視界から消えた。
そして一条の影がベットをまたぐように、自分の上を飛び越えた。
視界に入ったのは見慣れた少年の黒い髪と後姿。
顔は確認できないが、その少年はあの時と同じように、あの時と同じ言葉を言った。
状況は全く一緒だ。魔霊に襲われそうになった瞬間、飛び込んできた影は、後姿しか見せずそのまま魔霊に向っていったのだ。
だが今なら分かる。彼が誰なのかを。自分がどうなったのかを。
だから……
「エ……エルネ-ーー!!」
思い切りその名を叫んだ。
後ろで少女が自分の名を叫んでいるのには気付いたが、かまっている暇はない。
ゆえにあえて無視する。
少女達に群がっていた男達は、何人かは気絶しているものもいるが、意識が残っているものもいる。
これはフレードリクに任せておけばいいだろう。
そう思い、エルネの蹴りで吹き飛んだ相手を見据えた。
そして男は不気味な笑い声を上げながら、立ち上がる。
「ふふふふ、はははは、ここまで来て……ここまで来て! また私の邪魔をするのか! ヴィクセル! ああいいだろう。精霊の一族よ。ははは、ならば私の手に入れた力を見せてやろう。私の精霊をな!」
その言葉にエルネはピクリと反応する。
なぜならベルガー伯爵からは精霊の力は感じ取れないからだ。術師ですらない。
「ふーん……なんか面白い事言ってるけどさ、あなた精霊騎士じゃないでしょ? そんな力感じ取れないしさ。術師ですらないよね? 無駄なはったりは、やめたら?」
「ククク、さしもの精霊の一族でも知らぬことはあるのだな……出て来い、そして我に力を貸せ」
瞬間、ベルガー伯爵から精霊の気配が漏れ出した。いや、正確には精霊の気配に似た何かだ。エルネの知らない気配。
「なんだよこれ……さすがに知らないぞ……」
『エルネ思い出したよ! 水晶宮で感じたのと一緒の気配だ』
「なんだやっぱり知り合いなのか?」
『あんなやつらと知り合いなもんか! あいつら邪霊だよ!』
邪霊それは文字通り、邪な精霊。魔霊とは似て非なるもの。それがベルガー伯爵に憑いている正体だ。
彼らは人間のように狡猾で、人間のように臆病で、人間のように慎重で、人間のように欲深な存在だ。
そして彼らが憑く人間はベルガー伯爵のような狂気にとらわれた人間に憑き力を貸す。
魔霊が本能で人を襲う存在なら、魔霊と同じ性質を持ちながら、理性を持って人に憑く精霊。
そして、似ているからこそ、魔霊とわずかではあるが多少の意思の疎通が可能なのだ。
そして本来子供のときにしか精霊とパートナーになれないはずなのにも関わらず彼らは、自分と似た性質の人間を見つければ、そして、その人間に素質があれば、いくつだろうとおかまいなしに彼らは力を貸す。
邪霊は魔霊とは違うので、その姿を顕現させて人を襲うわけではないので、危険とは言いがたい。
むしろ、邪霊が力を貸す人間のほうが危険なのだ。
ただしその力を貸す人間は精霊騎士になれる人間よりも、相当少ない。そして素質よりも狂気を重視する。
元々ベルガー伯爵は精霊術師であり、多少精霊とは交信できていたが、その狂気を邪霊が見つけ、彼に元々力を貸していた精霊と入れ替わったのだ。
そして知った。邪霊は気配を隠すことが出来ると。人間のように慎重に隠れることが出来るのだ。
ゆえに、彼はその力を隠してきた。
回りの人間は、術師でなくなった彼を見て、ああ、精霊に見限られたかとしか思っていなかった。
そしてベルガー伯爵は邪霊と同調した。
ベルガー伯爵の目が赤くなり、両の口元からはわずかに牙のようなものが生えている。まるで御伽噺に出てくるモンスターの様でもあるが、体つきは大して変わっていない。
「ハハハハ! 久々だなこの力は……いや……人に振るうのは初めてだな。ありがたく思えヴィクセルの小僧! 本来は内戦が勃発したときのために隠していた力を貴様が初めて味わうのだ」
その様子を見てエルネはため息を吐く。
「あんまり味わいたくないなあ……ソードこっちも同調するよ」
『わかった』
「力を貸して」
『力を使いなよ』
そして、ベルガー伯爵が黒髪の少年に襲い掛かった。
その剣には炎がまとわり、豪炎を上げながら背の高さを利用し真上から思い切り叩きつけたが、エルネはソードを頭上に上げ、やや横斜めにして、鎬と言われる部分で受け止め、受け流す。
まともに食らえば……いやまともに食らわなくてもその熱量と勢いで、体のあちこちに火傷ができるような威力ではあったが、ソードと以前同調したときより深く同調しているエルネにとってはこの程度なら問題はない。
叩き付けた剣を見事に受け流されたベルガー伯爵の体は、そのまま流され大きく崩れた。
その隙を見逃すほどエルネは甘くはない。
わずかに体を捻り、頭上のソードを袈裟斬りの要領で相手の背中に切りつけようとしたが、自分の頭の上に火球が落ちてきた。
「んな!」
思わず叫び声を上げて、それをギリギリでかわし後方に飛ぶが、その間に体勢を立て直したベルガー伯爵の炎を纏った剣と火球が次々と襲い掛かって来る。
炎と相手の剣。さすがにエルネも全てかわせず、いくつかの被弾と、いくつかの切り傷を負う。
「がっ…痛……なんだよこれ……」
「ははは! どうした? 精霊の一族! その程度か!」
再び炎が襲ってくるが、火球ではなく、今度は放射状に襲ってきた。
「このっ……」
ギリギリで身を捻りかわすが間合いが遠くて中々圏内に届かない
そして今まで火球で着弾していた建物は多少の爆発程度で留まっていたが、この放射状の炎のせいで、建物に火がつき始めた。
「嘘でしょ……」
傷を負い、ゾーンを使いそれでもなんとか食い下がってはいたが、建物に火がつくとなるとまた別だ。
ここには王女殿下と大公女殿下がいるのだ。
そしてシーヴがどのような形であろうと死ねばベルガー伯爵の勝ちであり、エルネ達の負けなのだ。
「くはははは! 先ほどのセリフをそのまま返そう! もう諦めたらどうだ!?」
「冗談でしょ……まだまだ勝ち目はあるよ」
「強がりも、そこまでいくとはな。そのようなぼろぼろの姿でよく吼える。だが時間は無いぞ? 私は時間稼ぎしていればいいだけだからな」
もはや自分の妻のことすら頭にない。
さらに火球を繰り出し、それが次々とエルネに襲い掛かり、そのうちの二つをエルネはまともに食らう。
「がはっ……痛いなあ……おまけに熱いし……」
軽く吹き飛び、体勢は崩れたものの何とか踏みとどまるが、ダメージはかなり深刻だ。
(ソードもっと深く同調するよ)
『エルネ、危険だよ?』
(時間がない)
『わかった……いいかい意思を強く持って。絶対に飲まれないでよ』
(何とかやってみる)
覚悟を決め、意識をさらに集中していく、わずかに体が軽くなる。痛みはあるが我慢できないほどじゃない。
エルネはその力で一気に駆け出した。
「バカめ! 正面から特攻とはな! 死ね」
距離が8メートルほど離れており、一瞬で5メートルの距離をつめたものの、そこからベルガー伯爵の繰り出した今までにないほどの熱量を持った火球が出現し、エルネを襲った。
「あああああああ!!」
エルネの口から咆哮が漏れ出し、それと同時にエルネは床を踏み割らんばかりに、思い切り踏み込み、脇構えの形からその火球を思い切り、切り上げた。
炎は気体や液体とは違いプラズマと呼ばれる一種の現象だが、普通は剣では切れない存在の物質だ。
しかし、ソードはカタナの精霊、斬ると言う事にかけて特化した武器の精霊だ。
ゆえに、エルネとソードはそれを切り裂いた。
そしてその軌跡は間合いに入っていないはずの、ベルガー伯爵の体をも一気に切り裂いた。
「がっ……な……」
自分の体に熱いものがほど走り、そして痛みとなってベルガー伯爵の体を襲う。
何が起きたか分からないと言う顔だ。
そして、エルネはその瞬間に、さらに間合いをつめ、袈裟懸けに二の太刀で止めを刺した。
「これで…終わりだああああああ!」
「ああああああ……ヴィクセルゥゥゥゥ……」
そして彼に憑いていた邪霊は虚空へと消えて行き、ベルガー伯爵自身は体を地に投げ出して息を引き取った。
同調をすばやく解くエルネだが、体に一気に負担が襲い掛かってきて片膝をつく。
前回と違い、一回しか同調していないのでさすがに倒れるほどではないが、やはり体にはかなりの負担がかかっており、さらに前回よりかなり深く同調したため意識がかなり朦朧としている。
『エルネ! 倒れている暇なんてないよ! 早く脱出しなきゃ!』
(あ……なんだろう……)
『エルネ! 意識をしっかりもって! 今は意識を失ったら駄目だ! 食われちゃうよ!』
(……はは……なんか聞こえてくるな……)
そんなエルネに少女が駆け寄る。
「エルネ! エルネェ! しっかりしろ!」
アイスブルーの瞳から流れる涙はうれし涙なのか、不安から来る涙なのか、誰にも分からない。
(あれ……この声……聞き覚えが……誰だっけ……)
その声は、意識を失いかけたエルネの自我を何とか繋ぎとめ、ギリギリのところで救い上げた。
「あ……シーヴ様……はは、そんな格好じゃ風邪引きますよ……今、上着を……あ、ボロボロだ……」
そういってシャツの上に着込んでいる上着を渡そうとしたが、うまく意識をはっきりとさせることが出来ず、力が入らない。
「バカ! たわけたことを抜かしてる場合か! 歩けるのか? よし私が肩を貸そう」
「さすがに貴方一人では無理ですよシーヴ。私も手伝います」
いつの間にか王女であるシェシュテインが近くに寄ってきて、フレードリクから受け取った上着をシーヴに羽織る。
「あ……お、王女殿下におか……れまし……」
「バカか? お前は? そのような事を言ってる場合ではないだろ! 急ぐぞ!」
そうして王女と大公女に肩を貸してもらえると言う、後からエルネの胃がとても痛くなるような栄誉を受けながら、彼らは燃える屋敷を出た。
「おお、王女殿下! 大公女殿下! ご無事で何よりでございます!」
外に出た彼らを迎えたのは、エルネの兄である、ベルトルドだった。
ベルトルドも捜索に加わっていたが、途中でソードと同調したエルネの気配を掴み取りここまで来たのだ。
「あら、ベルトルド様。良く来てくださいました。あの何か着るものをくれると、とてもありがたいのですが?」
「は? え? あ! こ、これは失礼を!」
なぜエルネはこの二人に抱えてもらっているのか? なぜ王女と大公女が半裸に近い形なのか? 取り合えず無視しようと決め、そういって自らの上着を取り王女にかける。
「おい? エルネ、フレードリクはどこだ?」
「フレードリク様には私の頼んだ用事をしてもらっています」
シェシュテインが彼について説明した。
そこへちょうどフレードリクが肩に人を担いで現れた。
「ベルガー伯爵夫人?」
ベルトルドの見知った顔でもある。
「ええ、今回の事件の首謀者の一人でありますからね。公の場で陛下に裁いてもらいます。ご苦労様です」
「いえ、臣として当然のことです」
そういってフレードリクは答える。
「王女殿下、大公女殿下、我が弟に力を貸していただき、臣として身に余る光栄です。この上はこれ以上、ご負担をお掛けする訳にはいきませぬゆえ、我が弟の身柄は臣でお預かりしたくお願い申し上げ」
「この者は私が運ぶ!」
「え?」
言葉をさえぎられ思わず間抜けな声を発するベルトルド。
そんなベルトルドをクスクス笑いながら、シェシュテインは彼に言葉をかけた。
「良いのですよベルトルド様、迎えのもの達が来るまでシーヴの好きにさせてあげて下さい」
「え? あ! は! 了解しました」
混乱しながらも何とか答えるベルトルドだが、そのままフレードリクに指示を出した。
「フレードリク、ここに大公女殿下と王女殿下がいることを伝え、迎えをよこすように言ってきてくれ」
「わかりました」
そういって、気絶しているベルガー伯爵夫人を地面に寝かせ、すでに日が沈んでいる景色の中へと消えていった。
フレードリクがいなくなりわずかな時がたったころ、ベルトルドは不意に何かの気配に気付いた。
「何者だ? 迎えのものか?」
ゆらりとその気配が闇の中から浮き上がる。
「おいおい……なーんで精霊騎士様がここにいるんだよ?」
「質問に答えろ。迎えのものか?」
「はぁ? 迎え? 何言ってんだあんた? 俺はこの先の家に用事が……ちょ! 何で燃えてんだよ!」
少し先に屋敷が、未だ燃えてるのを遠目に確認した、金髪と茶色の髪をもった男、レンナルトは慌てて言葉を発する。
そしてシーヴとシェシュテインからある程度の事情を聞いていたベルトルドは一瞬で槍を構えた。
「なるほどな、反乱者の一味というわけか。大人しくすれば、この場では命までは取らない」
ベルトルドの言葉の意味を理解し、さらにはその傍に王女と大公女の姿を確認したレンナルトはすぐに状況を把握した。
「マジかよ! まだ後金もらっちゃいねえんだぜ? 勘弁してくれよ!」
「……雇われ者か……」
「タダ働きも同然じゃねえか……前金なんて花街で女抱いたらなくなっちまったしよ……」
会話がかみ合っていないが、お互いの状況とセリフでお互いが把握する。
「あーついてねーや、やめだやめだ。だいたいタダでヴィクセル家嫡男と、まともになんてやってられっかよ」
ピクリとベルトルドが反応した。何故自分のことを知っていると。お互い今日が初対面のはずなのに。
「んじゃまあ、俺は消えるわ。そいじゃねー」
軽く言葉を放ちレンナルトはベルトルドに背を向けたが、その背にベルトルドは、槍を相手の肩に、生け捕りにするため叩き付けた。
「逃がすか!」
が、それは見事に空を切り、気がついたら男は消えていた。
「ベルトルド様……今の男、私達をさらった男です……」
シェシュテインの声は聞こえていたが、ベルトルドは虚空を睨みつけ呟いた。
「邪霊憑きか……」
そして、すぐあとに、フレードリクが迎えのものと共に現れた。




