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第9話 決着

前日にお願いいたしましたアンケートの結果ドエロに2票入りましたので、フェムちゃんのご褒美イベントはドエロに決定いたしました。

予告どおり、ノクタにて投稿させていただきます。

リクエストを下さった、PP様、一心様ありがとうございました。


 まったく驚嘆に値するやつだ。

 まだ少年とも言える年齢でここまでの符魔術を使いこなす腕と魔力。

 それを支える体術と棒術。

 生半可な相手では全てが必殺と言えるほどの威力だ。

 一級品と言っていいだろう。

 何よりも素晴らしいのは、その精神力だ。

 おそらくこれだけの攻撃力を誇るのだから、それらに対しての自信や誇りは並大抵のものではないだろう。

 あの年齢でこの流れるような攻防ができるようになるには凄まじいまでの修練のが必要であろう。

 しかし、そのどれもが俺の防御の前に崩れ去っても、やつの心は折れていない。

 それどころか、いくら子供達に心配をかけないためとは言え、必殺技の宣言までするか? 

 そんな事をして、俺に通用するとでも? 

 それとも、これから繰り出す必殺技にそこまで信頼を置いているのか? 

 その必殺技とやらが通じなかった時こそ、お前の心が折れるときなのか? 

 ならば……へし折らせてもらおう、それでこの胸クソの悪い勝負に決着をつけよう。

 こい、トリオ! 

 おいおい、その構えは何だよ? 

 しかも、技の名前が刺突棍しとつこんって、どう考えても突き技だよな? 

 それ以外だったらむしろ詐欺だろ? 

 速度と威力を重視した突進系の突き技? 

 いや、でも……ここまであからさまな事するか? 

 何かの罠か? 

 これが百戦錬磨の武人や武術家なら間違いなく罠だと思うが、案外こいつ脳筋だし……よし決めた! こいつの技は突き技だ! 

 念のため、牽制けんせいように、やつからの貰った、プレゼントこおりのつぶてでもばら撒いておこう。

 ……来る……

 それ! コイツをどうかわす? 

 何! ? そのまま突っ込むだと? 

 まずい! 片手では受け止めらそうに無い、両手で全力だ! 

 『ガスゥッ! 』

 ふぅ、なんとか受け止められたが、手がしびれたな。

 それにしても、さすがに真正面から撃ってくるだけのことはある、素晴らしい一撃だった、しかし……ちょっと挑発しておくか。

 思ったとおりだ、余程自信のある一撃だったのか、安い挑発に簡単に乗ってくれる。

 ふむ、手のしびれも、大分収まってきたな、ならばこうだ! 

 そう言って、やつの不意を突き、棒を投げつける。

 さぁ動け、どっちに避けても俺の次の一撃がお前を捕らえる! 

 やるな! あの体勢からギリギリを見切り、軌道を逸らすとは。

 そう思った時に、目の前で小さな爆発が起こる、目くらましか? 

 何をしてくる? さっきの刺突棍しとつこんか? 

 そう思い、身構えたところに飛んできたのは、例の変わったナイフ? 

 なんだ、こんなもんか? 

 いや、違う! 何だこの魔力は、しかもほぼ全方向だと? ! まずい! 

「くっそっ! 仕方が無い、ウラァァァァァ!」

 俺は体内で循環している内気を圧縮し一瞬で爆発させ、外へと放射する。

 凄まじい気の圧縮と、爆発は距離こそ1メートルほどだが俺の全周囲360°全ての攻撃・防御を無効化し破壊する絶対防御となり、やつの放った光の一撃を全て相殺する事に成功した。

 今のは、本当に危なかった……この絶対防御が無かったら、間違いなく負けていた。

 この俺に冷や汗をかかせるとは、本当にたいしたやつだよトリオ。

 しかし、これで、さすがのお前も手が尽きただろう、終わりにさせてもらおう! 

 そう思い俺は爆煙を振り払うように前に進む。

 

 

 

 勝利を確信し、子供達を安心させるために、ピースサインをしながら

「どうだ、みんな! 凄いだろ? 俺の必殺技は!」

「え~、さっきは突き技が必殺技って言ったじゃん!」

「詐欺ね」

「詐欺だわ!」

「あたしたちを騙したのね!」

「お腹の子はあなたの子よ! それなのに!」

 いやちょっと待て、おまえら! なんで詐欺呼ばわりなの? 俺なんか悪い事したの? 

「うぉぉぉい! ちょっと待て~い! 詐欺呼ばわりは酷いだろ! それにお腹の子ってなんだ!」

「やぁ~い、トリオお兄ちゃんが焦っている」

「「「焦っている~」」」

「俺たちに心配かけたバツだよ! あんまり俺たちに心配かけるなよ!」

「ああ……そいつは悪かったな。でも俺が負けるわけ『そいつはどうかな』」

「勝ちを確信するにはまだちょっと早いんじゃないかな?」

 と言いながら、レイエールが爆煙の中から悠々と出てくる。

「おいおい、今ので無傷なのかよ! あの攻撃はドラゴンの防御だってぶち抜くんだぞ! あんた本当に人間かよ?」

 その叫びに呼応するように、クソクズ野郎が大声で笑い出す。

「あっはっはっは! 何が必殺技だ、そんなものはレイエールの絶対防御の前にはゴミのようなもんなんだよ!」

「絶対防御だと?」

「ああ、レイエールはな、その無尽蔵とも言える気を体内で圧縮し爆発させて外へと放射できるんだ。その前には魔法だろうが、ドラゴンのブレスだろうが全部相殺して消滅させることができるんだよ! 正に無敵! お前みたいなガキの技でどうこうできる存在じゃないんだよ! 身の程を知れ!」

「ほぉ~、解説ありがとうよ、クソクズ野郎!」

「なるほど、絶対防御ね、便利なもの持っているじゃねえか」

「分かったか? お前の攻撃は俺には効きはせん、そろそろ大人しく降参してくれ」

「はんっ! 確かにルクスプロクラーティオすら、防ぐその絶対防御とやらは凄いな、しかし! それで俺の負けが決まったとは言い切れないんじゃないか?」

 そう言いながら俺は棒を手に突進する。

 中段突き、逆突き、下段払い、中段逆払いをフェイントに飛び膝蹴り、かわした所を上段振り下ろし! 

 流れるような攻撃を繰り出すが、どれもハルバートで受けられるか、かわされる。

 着地と同時に符を取り出し、やつの足元に貼ろうとした瞬間、俺の勘が最大限の警鐘をならす。

 俺は咄嗟に自分の目の前に符を掲げ

 『プチプロージョン』

 を唱え、爆発で自分自身を後方へと吹き飛ばすと、俺が居た辺りに、レイエールを中心にクレータが出来ていた。

「良くかわしたな、素晴らしい勘と判断力だ」

「い、今何をした?」

「うん? 絶対防御はな、防御だけでなく、俺に接近戦を挑んでくる馬鹿をカウンターで吹き飛ばす事もできるんだよ。名前こそ絶対防御だが、攻撃に使ってはいけないって事もないだろ?」

「いいぞ、レイエール! そこの身の程知らずのガキに礼儀って物を叩き込んでやれ!」

「「「トリオお兄ちゃん負けないで!」」」

 双方に応援が飛ぶが、その内容はあまりも対称的過ぎた。

 くっそ! まだだ、まだ俺は負けていない。

「さて、そろそろ俺からも攻撃させてもらおうか」

 そう言いながらレイエールがハルバートを構えて、初めて前に出てきた。

 今まではその神速とも言える得物を振るうスピードを防御に使っていたが、今度はその速さを攻撃に生かしてきた。

 あらゆる角度から襲い掛かるハルバートを防ぎ、いなしながら、ジリジリと後退を余儀なくされる。

 上手くいなせたときに、符を取り出し、魔法を発動させるが、レイエールは相変わらず防御する必要もなく、こちらに攻撃を加えてくる。

 このままじゃあと焦りが生まれた瞬間、またもや俺の勘が警鐘を告げる。

 右? 違う左だ! そう思い、左側に棒を思い切り叩きつける。

 『ガギィィィン! 』

 鋭い音を立てて、棒とハルバートが打ち合わされる。

「凄いな、俺の幻影攻撃をここまで受ける事の出来るやつは始めてだぞ……やはり最初に試した時に受けたのも、まぐれではないわけだ」

「……」

「どうした? もう返事をする余裕もないのか? だったら降参しろ!」

 そう言いながら、またもや袈裟切りに見せかけた逆袈裟切りを放ってくる。

 俺はかろうじてその攻撃を受け止めたが、足に力が入りきらず、思わず膝をついてしまう。

「どうだ? 本当にもう降参してくれないか? 俺はお前を殺したくないし、ここまで俺と戦うことの出来る、お前を心の底から部下として欲しいと思っている」

「う、うるせぇ!」

 そう言いながら、棒を横になぎ払うと、レイエールは大きくバックステップで避ける。

 確かにレイエールは強い。

 父さんや、母さん、両師匠と同じレベルに居るかもしれない。

 だけどな……俺はその人たちを超えなければいけないんだ、ここで負けるわけにはいかないだろ。

 俺の心は決して折れない! 

 例えこの身が、打ち負かされ敗北したとしても……心だけは折れちゃダメなんだ! 

 考えろ! 俺にはまだ手はあるはずだ。

 そう思いながら棒を杖代わりに立ち上がろうとする。

 レイエールはあきれたように、首を左右に軽く振ると、前に出ようとしてその動きを止める。

 俺の前には小さな人影がたくさん立っている。

「これ以上トリオお兄ちゃんを苛めるな! 俺たちが相手だ!」

 1人の男の子がそう言って、何かをレイエールに投げつける。

「「「レインお兄さんなんて大っ嫌い!」」」

「「「あっちいけよ!」」」

 子供達が口々にレイエールを罵りながら、何かを投げつける。

 その何かがレイエールに当たり地面に転がる。

 レイエールが子供達に彫ってあげた木彫りの人形だ。

 レイエールはそれを見て辛そうな顔をし、前に出ようとしていた足が止め

「悪いがそこをどいてくれないか君達、俺はトリオと戦っているんだ。邪魔をしないでくれ」

 そう言いながら、ハルバートの切っ先を子供達に向ける。

 特に殺気を向けているわけではないが子供達の足が恐怖ですくむ。

 ははは、俺は一体何をやっているんだ。

 この子達にこんな恐怖を味合わせるなんて、お兄ちゃん失格だな。

 ましてや、この程度で商人メルカトラーを目指すなんてお笑いだ。

 そう思ったら、自然と笑いがこみ上げてくる。

 俺の目指す場所はもっと高みのはず。

 確かにレイエールは強いが、こんな手加減された状態で勝てないでどうする! 

 こんな所で膝を付いている場合じゃないだろ! 

 俺はまだやれる! まだ勝てる! いや、勝つんだ! 

 その思いで一気に立ち上がると、子供達を後ろから抱きしめ

「俺は大丈夫だ、みんなありがとうな。心配するな、俺は負けないって言ったろ」

「「「でも……」」」

「大丈夫だ、俺は勝つ!」

「「「本当?」」」

 心配そうにしている子供達の頭を1人1人撫で、馬車のところに戻るように押し出す。

「悪いな、待たせたようだ」

「いや……俺にも立ち直る時間が欲しかったから、お互い様だ」

「難儀なやつだな、同情するよ」

「同情するなら、このまま降参してくれ。お前も、子供達も悪いようにはしない」

「い・や・だ・ね! だって、お前に勝つ方法をたった今思いついたしな」

「凄いなここに来て、はったりが言えるのか?」

「はったりかどうか、試してみると良い」

 そう言いながら再度レイエールと向かい合う。

 やつの絶対防御の突破口は思いついた、あとはどうやってそれを実行するかだが……

 本当はタイミングを試したいところだが……ダメだな、レイエールなら試した瞬間に俺の狙いを読まれるかもしれん。

 仕方が無い、俺の好みじゃないがぶっつけ本番だ! 

 

 

「こいつで終わりだ! 『ルクスプロクラーティオ』」

「はぁっ! こんなもんは効かん!」

 レイエールの絶対防御が発動する…………が

「ガスッゥゥ!」

 と言う音と共にレイエールが岩壁に叩きつけられ、岩を軽く凹ませながら倒れこむ。

「へっへへ、俺の勝ちだな! レイエール残念だったな」

 そう言って俺は勝ち名乗りを上げた。

「やった~!」

「トリオお兄ちゃんが勝った~!」

「今度こそ本当に勝ちだよね!」

「さすがはトリオお兄ちゃん! 強い強い!」

 そういって子供達が俺に抱きついてくる。

 俺はそんな子供達に囲まれながら、ゆっくりと尻餅をつき、安堵する。

 

 

 

「ふ、ふざけるな! レイエールが負けるわけ無いだろ! 立て! 立って戦え、レイエール!」

 クソクズ野郎が面白いくらい動揺し、激昂している。

「何言っているんだ? レイエールはしばらく動けねぇよ」

「貴様こそ何を言っている! レイエールが、俺のレイエールが負けるわけ無いだろ!」

 なるほど、少なくとも強さにおいて、レイエールはあのクソクズ野郎から絶大な信頼があったんだな。

 確かにあの強さは反則級だったからな……

「馬っ鹿じゃないの~、トリオお兄ちゃんが負けるわけ無いだろ~」

「そうだよ~トリオお兄ちゃんは最強なんだから!」

「黙れ、クソガキ共が! ワイズイル!」

「はっ!」

 そう言うと、ワイズイルと呼ばれた男が、馬車の近くに居た子供を捕まえ、剣を首に当てる。

 やっぱりそうくるかよ……

「どうだ! これで逆転だろう! それよりも貴様、レイエールに何をした! どうやってレイエールの絶対防御を破った! 今すぐ教えろ!」

「はぁ、何処までも我侭なクソクズ野郎だ」

「で、できれば俺にも教えて欲しいもんだ」

「お、気が付いたか?」

「ああ、あの光の攻撃を絶対防御で防いだのは分かっているんだが、その後、いきなり後ろから吹き飛ばされ岩に叩きつけられた……それ以外分からん」

 


はい!ポカーンな展開ですいません!


次話にてきちんと解説をさせていただきます。

と言うのも、トリオ君視点からの今までの描写では読者の方にどうやって絶対防御を破ったのかを分かりやすく伝えることが作者の力量からでは不可能だったのです。

どうやって破ったのか?何故その選択をしたのか?どうやってその考えにいたったのか?それらを解説するには、1人称で書くのはダラダラとしてしまい、非常に読みにくかったのです。

作者の力量不足でまことに申し訳ありません。


そこで、最初は解説と言う形で、レイエールとお坊ちゃま君に説明しようと思ったのですが、友人から、敵に手の内を晒す馬鹿はいないだろ!と指摘を受け、別の形で解説を入れさせていただきますので、それまでお待ち下さい。

それと、レイエールの防御の名前が安易なのは、この世界では分かりやすいのが全てだからと思ったからですが……やっぱ変えたい。


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