第7話 無敵の武人
さて、ようやくバトルですが、上手く書けているでしょうか?
正直なところ作者はあまりバトルシーンが得意ではありませんが、頑張って書いてみました。
しばらくバトルが続きますが、この章の山場として我慢してお付き合い下さい。
「ご主人様、レイン殿、いえレイエール殿とはどのように戦われるおつもりですか?」
「そうだな、まともな攻撃はほぼ弾かれると思っていいだろうな。だから……初手から全力でいく」
「そうですね、姫様と同じだけの気の量をお持ちで、それを内気に使われたとあっては、普通の攻撃はほぼ通じないのではないですか?」
「ああ、だから……秘密兵器を使う。フェムお前の持っている分もよこせ」
「え? あれですか?」
「そうだ、何本ある?」
「1セットの8本です」
「そうか、俺も1セット8本だから全部で2セット16本だな」
「しかし、いくらこの子たちでも、彼には最後の起動が通じないのではないですか?」
「ああ、そこは工夫する」
「確かにこの子達ならば、どんな防御でも貫けると思います。しかしご主人様この子達14本全部同時に投げるのは無理ではありませんか?」
「そこは何とかするさ」
「そうですか、それにしても今回、全て使うのはさすがにもったいなく無いですか? これ1本作るのに、ご主人様だって2週間はかかるって言っていたじゃないですか?」
「こんな時には、ケチケチせずに派手に行ったほうがいいんだ。ケチったあげく効きませんでしたとなったら目も当てられないだろ?」
「確かにそうですが……それとさすがにレイエール殿死んじゃうんじゃないですか?」
「う~ん……まぁ、大丈夫なんじゃないか? あいつなら死にはしないだろ。それにもし死んだとしても……」
「死んだとしても?」
「メイちゃんに手を出そうとする馬鹿が一匹この世からいなくなるだけで」
『ガリッ』
「うぎゃぁぁ!」
「マジメに答えてくださいね、ご主人様。さすがに今は冗談を言っている場ではないですよ」
(いや、半分以上本気だったんだが)
「分かったよ。でもな、たぶんレイエールは俺が殺す気でいってちょうど良いくらいだと思うけどな」
「分かりました、もうフェムは何も言いません。ご主人様のご武運をお祈りしています」
「ああ、ありがとう。それとフェムにもやって欲しいことがあるんだ。俺の読みが正しければ、すんなりと行くとは思えないからね」
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「分かりました。しかしこんな悪辣なこと良く思いつきますね。さすがはご主人様です!」
「悪辣とはひどいな。自衛的防衛本能と呼んでくれ」
「はいはい、本能本能。そんな本能があるなら、煩悩を開放してくださいニャ!」
「それはそれ、これはこれだ。頼むぞ、俺の勘は無駄に悪い方にいつもあたるんだ。これが無駄になるなら、それもよし。無駄にならないなら……」
「まぁ、無駄になって欲しいものです。今回ばかりはご主人様の勘が外れて欲しいものですが……」
「まぁ、クズってのは、どこまで行ってもクズってことだ。そんなクズと事を構えるときは、布石を打っておくのが当たり前だって、父さんや母さんなら言うさ。それで守りたいものを守れなかった時、後悔するのは自分だからな」
「ご主人様…………」
「大丈夫。俺はもう失敗しない。そのためにお前達がいるって事を、俺は1人じゃないって事をあの時に学んだからな。最大限に働いてもらうさ」
「ご主人様……働いたら、ご褒美ですニャ。分かっていますニャ?」
「分かっているって。大丈夫。フェムこっち向いて」
そう言ってフェムのあごに軽く手を添えて、唇を軽く舐めた後、浅いがしっかりと口付けをする。
「これは前払いな。今強くやっちゃうとお前役に立たなくなるから」
「これはこれで軽く酷いですニャ! 続きが気になって仕方ないですニャ!」
と文句を言ってくるフェムの唇に再度軽く触れ
「今はこれで我慢しろ、いいね」
そう言って、尻尾を軽く撫でながら耳元で囁くと
「後で、絶対約束は守ってもらいますニャ!」
と強く言い放ち、馬から飛び降りると、指定された場所を迂回するように走り去る。
「さてと、貴族様。お呼びにより参上いたしましたが、これはどう言う事でしょうか?」
「な~に、先に言ったとおり、お前を取り立ててやろうってことさ」
「そのお話はお伺いしていますが、取り立てるのに子供たちは関係ないんじゃないですか?」
「そうかな? 俺は関係あると思ったから、こうしているんだが? お前には分からないか?」
「分かりませんね、とりあえず子供たちを解放してもらえませんか? お話はそれから聞きたいのですが?」
「構わんよ、しかし開放する前にこちらの言うことを1つ聞いてもらいたい」
「なんでしょうか?」
「それはな『主! そこから先はどうか私に』」
「ふんっ! まぁいい。一応約束だからな……」
「ありがとうございます。トリオ殿、申し訳ありませんが、わが主の命によりそなたに一騎討ちを申し込む。私が勝ったら……」
「はぁ……どうせ俺に服従の契約でもしろって言うんだろ?」
「…………分かっていたのか?」
「当たり前だろ、もういいか。ここまでやってくるなら、もう遠慮も要らないだろう…………はっきり言ってやろう。お前らみたいなクズのやることはいつも同じだ。
弱い民から毟り取る事、
力の無い人間、いや獣人達にもだ! 何をしてもいいと思っている事。
特権階級を振りかざし、好き放題な事。
民の命なんて紙屑よりも価値がないと思っている事。
いいか? 俺が特別にお前らの足りない頭でも分かるように教えてやる。本当に価値が無いのは貴様らのようなクズだ!
そんなクズにはな、亡き父、母、そしてわが師、わが友に誓って! 俺は絶対に負けないんだよ!」
「言うじゃないか。しかし、そんな気合だけでこのレイエールに勝てると思わないほうがいいぞ」
「はんっ! お前のようなクズの部下ってだけで、レイエールはその価値と強さを下げたんだ。そんなことも分からない主の下に居る事は同情に値するが、手加減する理由にはならないな。悪いが全力全開で行かせてもらう」
そう言いながら俺は、アポーツバックの空間に手を突っ込み、符を取り出して空中にばら撒く。
「いいぞ、そうでなくてはな、レイエール! お前も全力で行け! 殺しても構わん! これで死ぬようなら大した手駒にはならんからな」
「トリオ殿、あなたに思うところはありませんが、主の命により今もてる力で戦わせていただく。参る!」
「行くぜレイエール! 恨むなら理不尽な主を恨むんだな!」
『ファイアーアロー』
と魔力を込めて声を掛けると、先ほどばら撒いた一部が空中で火の矢と変わり、レイエールへと襲い掛かる。
それと同時に俺は馬で突っ込み、棒の三連撃の突きを放つ。
レイエールは咄嗟に馬を操り、火の矢の攻撃を一部を避け、一部をハルバートを振るって撃墜する。
そこを狙っての三連突きだったのだが、レイエールは武器をものすごい振りの速さで操りあっさりと防がれる。
普通の奴なら、これで簡単に終わると思ったが、やはりなと思いつつ、奴の横を馬ですり抜けつつ、4本の投擲ナイフを投げてけん制する。
レイエールはあっさりとナイフを打ち落とすのだが、それも思ったとおり!
『クレールバレット』
と叫ぶと、打ち落とされたナイフが地面に付いた瞬間、無数の土の礫が至近距離でレイエールに襲い掛かる。
先ほどけん制に投げたナイフには符が巻かれており、ナイフ自体は囮で本命は、巻かれた符にあった。
さすがにこれを避けることは難しかったらしく、馬をやられてレイエールは地面に転がり落ちる。
さらに追撃するべく、
『エネルギーボルテック』
と叫び、最初にばら撒いた符全部から無属性の矢が、放たれる。
全力だからな……死ぬなよ。と思いつつ俺は馬上から飛び上がり奴の居るべきあろう地点に、気を込め全体重を乗せた、全力の棒による打ち下ろしを叩き込む。
『ガキッィィィィィン! 』
と激しい音ともに、手が痺れるほどの手応えが伝わった後、受け止め弾き返され、空中へと飛ばされる。
やはりダメかと思いつつ、切り札のナイフを2本投擲するが、奴は避けようとも、受けようともせずにその身をさらす。
当然ナイフは狙ったとおり奴の額に当たるのだが、『キィン』と軽い音を立てて弾かれ、地面に突き刺さる。
「あんた、化け物か? それとも人間辞めたのか?」
着地を決めた後、問いかけると、レイエールは少し悲しそうな顔をしながら
「今ので全力の攻撃か? 俺がガードしなければならなかったのは、棒の打ち下ろしだけだったぞ」
「いや、普通の人間なら、どれも一撃で死ねると思うんだけど?」
「俺が普通ではないのは分かっているんだろ? だったらもう少し本気で来るんだな!」
と言って、ハルバートを大きく振りかぶり、ただ単純に袈裟懸けに振り下ろす。
俺の勘があれは、まずい! 避けろと全力で警鐘を鳴らす。
そう思い、腕から読んだ軌道から身をかわすと、その地点を何かが通り過ぎ、『バスゥッ! 』と言う音と共に地面に鋭い亀裂を生み出す。
「良く避けたな。腕の一本でも貰おうかと思って振ったんだがな」
そう言って、再度やつはハルバートを上段に構える。
今何をした? 奴との距離はおよそ10メートル。
気の斬撃? それなら何らかの形を取って見えるはず。
しかし、今は何も見えなかった、何故だ?
そう思ったのが顔に出たのであろう、それを見たレイエールは少し悲しそうな顔をして
「そうか、お前には今のが見えなかったのか? ならばあまりもたないかもしれんな」
「何だ、今のは?」
「別に俺とお前は師弟関係でもあるまい、解説するほどお人好しじゃないんでな」
そう言いながら、レイエールは話すために一旦降ろしていたハルバートを再度大きく振りかぶる。
「ハァハァッ」
「どうした、もう息が上がったのか?」
「うるせぇな、このロリコン野郎!」
「それにしても、俺の腕の軌道とわずかな視線かな? それだけでかわし続けるとはさすがに良い勘をしている。だがな『エクスプロージョン』」
レイエールの至近距離で複数の符が大爆発を起こす。
「おいおい、人が話をしている時は黙って聞くもんだと教わらなかったのか?」
そんな大爆発の中を悠然と歩き、余裕な台詞を吐かれる。
くそっ! やはりダメか……教わる? そうだ、父さんならこんな時どうするか?
『馬っ鹿だなぁ、そんなもん当たらなければどうということはない! 』
ダメだ、あの人は脳筋すぎる! 母さんなら……
「あのね、トリオ。そういう時は相手が攻撃する前に、殺っちゃえばいいのよ」
ダメだ! 母さんも脳筋だった、参考にならん! そうだ! 師匠なら……
「相手の防御が固い? 相手の防御力以上の攻撃をすりゃ良いじゃん、アホなのお前?」
ダメだ! 俺の周りには天才で頭が悪いのしかいない!
「おいおい、俺を前に考え事か、余裕だなっと!」
「グアッ!」
ちょっと考え事をしたせいで一瞬反応が遅れ、レイエールの見えない攻撃が肩をかすめ、左肩を削られ血が吹き出る。
すぐさま、アポーツバックからヒールポーションを取り出し、肩に叩きつけるようにぶつけ、中身をぶちまける。
「へぇ、中々良さげなポーションじゃないか、それなら腕の1本位ぶった切っても大丈夫そうだな、頼むから死なないでくれよ」
そう言いながら再度ハルバートを振りかぶろうとしたその時
「トリオお兄ちゃんをいじめるな!」
「何やってんだ馬鹿レイン、やめろよ!」
「レインお兄さんやめて!」
と声が上がる。
あまり自信がない部分なので、感想やアドバイスがいただけると、ありがたいです。