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第6話 追憶

 馬鹿、いやクソクズ野郎共が引き上げた後、なるべく連中との距離を取るため、1時間程ずらして、森の小道を出る事にした。

 思ったとおり、連中は既におらず、フレイルの街までは誰にも会わずに行けそうだった。

「ご主人様、本当に彼らに言ったとおりに帝国軍の足止めをするのですか?」

「ああ、足止めはするよ。ただしあんな面倒なことしないよ。だいたい爆符ばくふによる足止めは簡単に破る事ができるんだ」

「そうなんですか?」

「ああ、相手に探知系の魔法使いが居れば、簡単に爆符ばくふは見つかってしまうからね。この場合最悪なのはその爆符ばくふが敵方の手に渡り、再利用されることなんだ」

「そうですか……では、どのように足止めをされるのですか?」

「え? 簡単だろ? 力ずくだよ?」

「ご主人様……真面目に答えていただきたいのですが?」

「いや、結構いけると思うんだけど?」

「何を考えているんですか! 相手は帝国軍4000ですよ!」

「いや、別に準備さえ万端なら難しくないだろ? 何も棒や素手でなぎ倒すわけじゃないし」

「じゃあ、魔法を?」

「ああ、符を大量に使うつもりだから、作るのを手伝ってくれよ」

「大量ってどのくらいですか?」

「う~ん……少なくとも1000枚くらいだな。あ、そうそう、材料調達よろしくね」

「1000枚分ですか、どれだけ散財するつもりですか!」

「うん? あの街には1000人以上の住民が居るんだぞ? 多少の散財くらい多めに見ろ」

「あ、あの……」

「心配するな、怒ってはいないよ。フェムは俺の心配をしてくれたんだ。でもな、この状況……似てないか? 1年前と」

「……撤退戦と言う意味では似ていますが……あの時よりは条件的にマシかと思います」

「だろ? 俺はこの1年で結構強くなったつもりだよ。苦手な魔術も……それなりに克服した。だから今回失敗しない」

「『それなり』ですか? 全くご主人様は贅沢です。あんな魔法使えるのはご主人様だけですよ、それを『それなり』呼ばわりとは」

「まだだ、まだ父さんと母さんには、遥かに及ばない。俺の目標が商人メルカトラーである以上、父さんと母さんを超える必要があるんだ。だからまだ……『それなり』なのさ」

「分かりました。でも……」

「分かっている。無茶はしない。それと、子供たちを無事に送り届ける事が出来たら、フェムにご褒美だろ?」

「はいですニャ! ご褒美期待していますニャ!」

「はは、相変わらず可愛いやつだな。それよりも、むしろ心配なのは俺よりもフェムの方だな」

「どういうことです?」

「場合によっては帝国軍のついでに、あのクソクズ野郎共と一戦交える可能性もある」

「え? 何故ですか! 彼らは味方ではないんですか?」

「まぁ、クズってのは、どいつもこいつも考える事はみんな同じなんだよ、悲しい事にね。それよりもだ……」

「はい?」

「レイン、いやレイエールと言った方が正解か、あいつとは絶対に戦うな! いいな! どんなことが合っても逃げろ……いいな、これは命令だ!」

「フェムでは勝てませんか……」

「はっきり言って無理だ。あいつとお前では相性が悪すぎる。可哀想だがお前の攻撃じゃあほとんどダメージが見込めない」

「はい……ナイフを弾かれたのを見ました」

「ああ、おそらく内気ないきによる防御だろう。あれは……」

「ご主人様の刺突棍しとつこんならどうですか?」

「正直分からん。正確なところは分からんが、あの気の潜在量はカーナリアと同レベルだと思う」

「姫様と同レベルですか……人間ですか?」

「おいおい、そのいい方だと遠まわしにカーナリアが人間じゃないみたいに聞こえるぞ。次に会った時言いつけるぞ」

「そ、それだけは勘弁してくださいですニャァ~、ご主人様!」

「ふふ、ウソだよ。そんなこと言ったら、フェムも危ないけど、俺も危ないから言えるわけ無いだろ」

「冗談でも止めて欲しいですニャ!」

「逢いたいな……」

「はいです」

「アメリアもカーナリアも元気かな?」

「あのお2人が元気じゃないところは想像できませんニャ」

「そうだな。今回の騒動が終わったら、王都に戻って入学準備だ……」

「なぁ?」

「はい」

「俺はあいつらに真正面から顔を合わすことができるかな?」

「無理でしょうね」

「随分冷たいな」

「仕方ないです。ご主人様の自業自得です。ハンマーの2~3発、掌底か蹴りか……まぁその辺は覚悟された方が良いかと思いますよ」

「そうだな、その位は覚悟しておくよ。でもまぁまずはここを上手く乗り切らないとな」

「はいです!」

 そう元気よくフェムが返事したとき、ちょうどフレイルの街の門をくぐった。

 

 

 

 - トリオとその一行がフレイルの街に到着したころ -

 

「殿下! いかに殿下のご命令とは言え、さすがに承服できかねます!」

「何故だ?」

「何故等というレベルの話ではありません! 逆に私がお伺いしたい! 何故避難してくる民を討たねばならないのですか!」

「当然だろ? お前はやはり馬鹿なんだな」

「し、しかし殿下、私もレイエール殿の言葉は最もだと私も思います。何故避難民を討たねばならぬのでしょうか?」

「なんだ、ワイズイル、お前も馬鹿の仲間入りか? 仕方のないやつらだ。あんなトリオとか言うやつの口上と委任状ごときで民が納得すると思うのか? 馬鹿者共が!」

「「え?」」

「どう取り繕った所で、街の民は俺たちが見捨てたことを感ずくさ。そんな不名誉な事を見過ごせるわけあるまい」

「ならば、何故トリオ殿を行かせたのですか?」

「レイエール!」

「はっ!」

「あいつ、かなり強いだろ? お前あいつに完勝できるか?」

「いえ……条件次第では……負けないまでも勝てないかもしれません」

「やはりな。お前はまだ・・知名度こそ低いが、俺はお前こそがムジカルの中で最強だと思っている」

「勿体無いお言葉です」

「そのあいつが、その腕と知恵を使うのだ。ひょっとしたら本当に足止めできるかもしれないし、下手したら帝国兵4000を撤退に追い込むかもしれんぞ」

「そ、そんな馬鹿な!」

「いえ、可能かも知れません」

「何だと、レイエール殿どういうことだ?」

「最初にトリオ殿と接敵した時に、彼から膨大な魔力を感じました」

「ほう、続けてくれ」

「はっ! 私は気と武器を中心に戦うため、多数の敵を相手取るには時間が掛かりますし、限界がありますが、魔法は違います」

「まぁ、確かにそうだが」

「私は魔法を行使する事は得意ではありませんが、魔法使いを相手に戦うことは得意です。それは魔力を感じる能力が高いからです。大概の魔法使いが魔力を込めると、何をしようとするのかある程度は分かるつもりですが、彼の場合込めようとした魔力量が桁違いだったため、私にも予想ができませんでした」

「ほう、レイエールでも測れなかったか?」

「はい、私と最初に対峙した際、一触即発状態になった時に込められた魔力は普通の宮廷魔術師が使う魔力の5倍以上と見ました。その状態で一体どんな魔術を使うつもりだったのかは判断できませんし、あれが上限とも思いません」

「なるほど、そこまでの者か……ならば、やはり我が手に欲しいな」

「それは、理解しましたが、何故民を討たねばならないのでしょうか?」

「いいか? あいつは今、戦災孤児などという馬鹿みたいな荷物を背負っている。その孤児たちを人質に服従の契約をさせれば無事に絶対服従の手駒が手に入るのだぞ」

「しかし!」

「その為にも、こちらが本気だと言う事を理解させるために、民達を見せしめにするのさ。他にも俺たちのしたことに対する口封じと言う目的もあり、正に一石二鳥と言うわけだ」

「殿下!」

「何だ貴様、俺に逆らうのか? うん? 何だそれは」

 殿下と呼ばれた少年はそう言いながら、レイエールの首掛かる花飾りに目をやる。

「ふんっ! 帰りが遅かったのはこのせいか? 孤児などに情でも移ったか、この腑抜けめ!」

 そう言いながら、殿下と呼ばれる少年はレイエールの首元に手を伸ばし、あっさりと花飾りを引きちぎる。

「! ! ! !」

「なんだ? 何か文句でもあるのか? 貴様の家が、いや母親が無事に生きていられるのは誰のおかげか分かっているんだよな?」

「…………」

「あの小僧を服従させるには契約と言う強力な鎖が必要なんだよ。分かるか?」

「殿下! あえて申し上げます! 殿下が真の国王たらんと思われるのならば、人を縛るのは鎖ではなく、徳や義、情で又は利でお惹きつけください。殿下にはそれが十分できるはずです」

「いやだね。なんでそんな面倒なことをしなければいけないんだ? それに真とはなんだ? 国王に真も偽もあるまい。国王は国王だ。馬鹿かお前は?」

「ならば、せめて関係の無い民にはどうか手を出さないでください!」

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

「ふむ、よかろう。別に俺とて民をむやみ殺す趣味も無いしな。その代わり分かっているな?」

「分かりました、それと、子供たちを人質にとるのはあくまでも、服従の契約をするためではなく、私との一騎打ちのために使わせてください」

「なんだと?」

「私がトリオ殿と一騎打ちをいたしましょう。その結果私が勝てばトリオ殿に服従の契約をするように要求をするのです」

「馬鹿な、なぜそんな面倒をせねばならんのだ? お前が負けたらどうするのだ?」

「わ、私は負けません……先ほども申し上げましたが、殿下が真の国王とならんとされるのであれば、臣を信じるのも王たる勤め・・です! どうか殿下がムジカル最強とお認め下さった矛である、このレイエールをお信じください」

「…………」

「殿下!」

「分かった。分かった。そこまで言うのであれば、お前を信じよう。確かにお前に負けて、服従の契約を結ばせたほうが、より強力な契約になるのは間違いないからな」

「え? それはどういうことですか?」

「なんだ、知らんのか? 精神を縛る契約はその精神状態に比例して強力になる。今回計画していた、人質をとって無理やりに結ばせた場合は、それほど強制力が生まれず、自我が多いに残った契約になってしまう可能性が大きかったんだが、もしお前に負けた場合等、大いに自信を失った状態であれば、正に絶対服従の契約になる可能性が高くなるんだ」

「殿下……」

「そう、まさに、あいつのその能力全てを使って俺に仕える最高の手駒になってくれるかも知れないんだ、フフフ。そう考えればお前との一騎討ちは別に悪い賭けではないんだよ」

「ならば、何故民を討つなどと?」

「簡単さ、上手くいけばお前自身から一騎討ちの話が出るかと思ったからだ」

「私は上手く殿下に乗せられたということでしょうか?」

「さぁな。話の経緯はどうであれ少なくとも奴との一騎討ちはお前から言い出したことだ、きっちりと勝って見せろよ、いいな?」

「はい…私の全てに賭けても…勝ちます」


大幅に改定していますが、いかがでしょうか?

いずれ、必ず改定前第10話~11話のアメリアちゃん誕生日イベントには接続します。

まだ、全部を書ききっていないので、分かりませんが20話~25話くらいになるんじゃないかと思っています。

イチャラブやエロをご期待の皆様には申し訳ありませんが、今しばらくお待ち下さい。

接続さえすれば、ほとんどのテキストを流用できるので、一気に30話分くらい進むんですけどねぇ~。


ちなみに気分転換?のため、改定前36話以降の話も、ちょこちょこと合間をみて書いていますので、ご安心下さい。(何をだ?)


これからも商人メルカトラーをよろしくお願いいたします。

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