第15話 自分自身のために
- あれから数日後 -
今日お姉ちゃんたちは既に寝ていて、僕と父さんで焚き火の番をしている。
父さんの話ではこの近辺は魔物がでることもあるので、こうして寝ずの番をする必要があるらしい。
夜の森に「パチッパチッ」と焚き火の燃える音だけが響き渡る。
その焚き火に向かい合わせに座り、じっとその火を見つめ、村で起こったこと、そして自分の行動を何度も振り返る。
お姉ちゃんには、ああ言われたけど、やはり何も出来なかった自分が悔しかった、情けなかった。
少しばかり、父さんに稽古をつけてもらっているからと、大人を侮っていた。
確かに、普通の大人相手になら、一対一でも軽く制圧できる自信があったが、ちょっと腕の立つ相手だった場合、あそこまで苦戦するんだと言う事をはっきりと思い知らされた。
そんな思いに身を沈めている自分を気遣うように、父さんが声をかけてくれる。
「どうしたトリオ、考え事か?」
「うん……」
「村での事を気にしているのか? お前はお前なりに出来る事を精一杯したんじゃないか? 父さんだって同じだぞ。父さんに出来る事を精一杯した」
「でも! でもラスタ兄ちゃんは……間に合わなかった。僕が、僕が何とかできたかもしれないのに!」
「そうか? 今のお前にできることなどたかが知れている。お前にはあの子を助けるだけの強さも、傷を負ったあの子を治すだけの技術も、魔法も何もなかっただろ? 可哀想だけど、もう一度言う……今のお前に出来る事など、たかが知れている」
はっきりとそう言われて、それが事実だと悟った時、何も出来ない自分が悔しくて、涙が零れ落ちる。
父さんは、すくっと立ち上がり、後ろに周り込み両脇に手を入れて僕を抱えて座りなおす。
「トリオ、お前は一つだけ、自分に出来る事をした。今はそれだけで十分だったと、父さんは思う」
「え? 僕は何もできなかったよ。何も出来ずただラスタ兄ちゃんが死んでいくのを見守っただけだよ……」
「そうだ。お前に出来た事は、ただラスタを見守っただけかもしれない。でもな、ラスタはただ一人で寂しく死んでいったわけじゃない。少なくともお前に見取られて、声を掛けてもらえて死んだんだ。それだけであの子は救われたんじゃないか?」
そう言われて、ラスタ兄ちゃんの最後の言葉を思い出す。
ラスタ兄ちゃんは最後に「ありがとうな、姉ちゃんを頼むな」と言った後、俺の手をしっかりと握り締めて笑った。
「俺はな、今まで沢山の人の死を見てきた。おれ自身、お前の想像の付かないくらいの人数をこの手に掛けてきた。だからこそ、言えるし思うんだけどな……一人で死ぬのは寂しいぞ。少なくとも俺は誰かに看取られて死にたい」
「良く分からないよ……死ぬのは怖いし、寂しいよ!」
「そうだな、でもそれが避けることの出来ないものとなった時、次に考えるのは一人で寂しく死ぬより、誰かの……自分を思ってくれる誰かのそばで死にたいと思うものだ。そしてお前は今回、逃げることなくラスタのそばでその死を看取った。今のお前に出来る最大限をしたと思うぞ」
「でも……でも僕はラスタ兄ちゃんを助けたかった。死んで欲しくなかった!」
「そうだな、でも今のお前じゃ……何も出来ない」
厳しい現実を突きつけながらも、父さんはゆっくりと僕の頭を撫でてくれる。
これは、いつも父さんが僕自身が答えを出す事を求めるときの仕草だ。
「強く……強くなりたい……誰よりも、父さんや母さんよりも強くなりたい」
「そうか……なんで強くなりたい?」
「こんなことが起きないように、僕の前で僕の好きな人が二度と死なないように! 僕の大切な人を守れるように強くなりたいんだ! 父さん、僕に本当の戦い方を教えてよ!」
「もちろんだ、父さんはお前に本当の戦い方を教えたいと思っていた。それに、お前が強くなることは良い事だと思う……そうだな、ちょうどいいか。お前にはまだ早いかと思ったけど、いい機会だから父さんが思う強くなるため理由について少し話そうか」
「うん」
そう言って父さんは僕の肩に自分の顔を軽く乗っけて、一緒に焚き火を見つめる。
「トリオ、誰かを守る、又は大切な何かを守る。その事はとても良い事だと思う」
「うん」
「でもな、それは誰のためでもない、自分の為だと父さんは思うんだ」
「自分のため? 誰かのためじゃないの?」
「父さんは違うと、いや違うわけではないんだが、しっくりとこないんだ。だってさ……そうだな、例えばお前の大好きな幼馴染のアメリアちゃんが怪我をしたとする」
「うん……」
そう言って、妹みたいに可愛がっている幼馴染のアメリアが怪我をした時の事を考えると、悲しくなって泣きそうになる。
「いやいや、ちょっと待て! 例えばだ! な! 別に本当に怪我したわけじゃないぞ」
「うん……」
「どうだ? 今トリオはとても悲しくなっただろ?」
「うん、もし! もしアメリアがラスタ兄ちゃんみたいに……なったら……僕……」
そう言って、また泣きそうになると、父さんはより一層強く抱きしめてくれて
「だろ? 悲しいのは誰だ? おそらくアメリアちゃんのお爺さんであるガザルさんも悲しむし、俺や母さんだって悲しいさ。でも……どうだ? トリオだって凄く悲しいんじゃないか?」
「うん。たぶん凄く悲しい」
「悲しいのは嫌だろ? アメリアちゃんが泣くのは嫌だろ? ガザルさんや父さんや母さんが悲しむのも嫌じゃないか? その悲しいって気持ちはおまえ自身の気持ちなんだ」
「僕の気持ち?」
「そうだ、お前自身が悲しと思わないために、アメリアちゃんを守れる強さを手に入れるんだ」
「僕自身が悲しまないために……」
「そうだ、いいかいトリオ。自分が強くなる理由を誰かのためにするんじゃない。自分が強くなるのは自分自身のためなんだ」
「自分自身のため……」
「自分が守りたいもの、自分が助けたいもの、失う事で自分が悲しい思いをしたくないもの、そういった自分の気持ちを押し通すために強くなるんだ」
「それって……なんか、我儘なんじゃないの?」
「そうか? だって強くなるために苦しい思いや辛い思い、場合によっては痛い思い、そういった事をするのはおまえ自身なんだぞ? おまえ自身の努力の成果はおまえ自身が受け取るものだろ?」
「なんか、難しいよ……父さん」
「まぁ、そうだろうな。でもなこれだけは理解して欲しい。強くなりたいと思う気持ちはおまえ自身のもので、誰かから言われたり、強制されたものじゃないってことだ」
「うん」
「大体だな、お前さっき、『強くなりたい、誰よりも、父さんや母さんよりも強くなりたい』って言ったよな、それってとっても大変だぞ」
「うん!」
「父さんはともかく、母さんよりも強くなるってことは……人間辞めるってことだぞ」
それを聞き、思わず噴出してしまったが、とりあえず、ポケットからメモ帳を取り出し、メモする。
「ん? ト、トリオ君? な、何をしているのかな?」
「えーと、父さんが母さんの悪口を言ったら、これに書いておくようにって母さんから預かったの。一個書く毎に、帰ったら飴一個くれるんだよ!」
そう言ってメモ帳を差し出すと、父さんは正に光の速さで取り上げ、
「こんなもんは~~~~~~~、ポ~~~~~~~~~イだ!」
と言って、力の限りぶん投げた! 遠くでキラッと光ったような気がしたが、とりあえず気にせず
「あ~~、折角書いたのに……やっぱり母さんの言うとおりだった」
「ん? な、何が母さんの言うとおりなんだ?」
そう言いながら、バックから予備のメモ帳を取り出し、
「母さんが、もし父さんにメモが見つかった場合、かならず取り上げられるから、もう一冊同じ内容を用意しておきなさいって。ほら」
そう言って、さっきのメモ帳と同じ物を取り出すと、父さんは引きつった笑顔で、メモ帳を開く。
その中には、『子供の物をとりあげてんじゃないわよ! 帰ってきたら覚悟するように』と書かれていて、それを見た父さんは、涙を零しながら、『これ以上は書かないこと』を僕に約束させた。
「まぁ、難しい事は置いておいて、いいかトリオ! 誰かのためじゃない! 自分自身のために強くなるんだ! 父さんの修行は厳しいからな、辞めたければいつでも辞めていいぞ」
「いいの?」
「いいぞ。でもな、トリオ。こう考えて欲しいんだ。父さんはお前が将来悲しいや悔しい思いをしたら、嫌だ! それは父さんが嫌だからだ。 だから、お前を強くする! 強くなるように教える! いいな? これも父さんがしたいからするんだ、これは分るな?」
「うん」
「よし! じゃあ、今から修行だ! 今日からは、これまでとは違うからな、いいな!」
「はい!」
「じゃあまずは、走りこみからだ!」
「分った! たぶん父さんビックリするよ!」
「うん? それは夜にやっていた特訓のせいか?」
「え、知っていたの?」
「そりゃもちろん、知っていたさ。それよりもどうしてあんな訓練を思いついたんだ?」
「え? あの訓練方法はダメだったの?」
「いや、父さんはアレは凄く正しいと思うけど、どうやって思いついたのか不思議だったんだ」
「えーとね、僕は父さんみたいに強くなりたいって思った時に、どうやったらそれができるのかな~? って考えたら、自然とあの訓練方法を思いついたんだ」
そう言うと、父さんは僕を少し不思議そうに見つめながら「そうか」と一言だけ呟いた。
「まぁいい、お前が自分自身の特訓のおかげで森の中を問題なく走れるようになったのは凄いぞトリオ。それじゃあ今度は走りながら、俺が投げるこの木の実をお前かわしながら父さんを捕まえるんだ」
「うん、その木の実に当たらずに父さんを捕まえればいいんだね」
「ああ、じゃあ行くぞ!」
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父さんの投げる木の実は当たると、とても痛くい。
特に、意識をしていない角度からの攻撃はかなり痛い。
だから僕は父さんを見失わないように追いかけるんだけど、いつの間にか見失ってしまう。
「ビシィッ!」
「ぐっ!」
右腕の肘の辺りに、木の実を当てられ、その場でうずくまりそうになるが、痛みを堪えて辺りを探る。
「ビシィッ!」
「ぐっ!」
今度は左の脹脛に痛みが走る。
「どうした? 動かなきゃ的になるだけだぞ!」
その声に反応して、僕は走りだすのだが、父さんの投げる木の実は面白いように次々と僕に当たる。
「どうした、トリオ! ただ闇雲に逃げれば良い訳じゃないぞ、考えるんだ。どうやったら当たらないかを」
- 数日後 -
「痛たたた……」
そう言いながら、傷薬を塗りこみつつ、恨めしそうに父さんを睨む。
父さんは、僕の視線など全く気にせず、今日の晩御飯を用意している。
本当は文句の一つも言ってやりたいけど、言ったところで「じゃあ止めるか?」と言われるのが落ちなので言わない。
大体、あのにやついた笑いは絶対に僕が文句を言うのを待っているんだ、絶対に言うもんか!
そんな僕の心を読んだのか、父さんは笑いながら
「どうしたんだトリオ、言いたい事があるなら、言ってもいいんだぞ、ホ~レ、父さんに言ってみな」
そう言って、耳に手を添えて思いっきり近づけてくる。
「ホ~ラ、どうしたのかな?」
そう言う父さんの顔は本当に楽しそうで、むかついたので、なるべく静かに拳を握り、気取られないように……一気に打ち抜く!
「パシィッ!」
しかし、耳に添えていた手に簡単に受け止めらる。
だが、本命はこっちだ!
僕は思い切り息を吸い込み、大声を出す準備をして、力いっぱい叫ぶ!
「父さんの馬鹿!」
フッ! 決まったな。甘いよ父さん、僕は日々進化しているんだよ。
と勝ち誇ったのも束の間で、父さんは涼しい顔をして、さっきと同じポーズをとっている。
僕は先程拳を受け止めた、父さんの手の指を掴み、グイッと力一杯捻ると、ようやくこちらに向き直ってくれて
「ん? なんか言ったか?」
そう言いながら、両の耳から耳栓を外す父さんに
「なんだよ! 最初から聞く気ないじゃん! 最初の『父さんに言ってみな』はなんだったんだよ!」
「トリオ……戦いには全力で当たるのが父さんの主義だ! そのための備えは万全にする! 例えそれがお前であってもだ!」
と、何故だか「バーンッ!」とバックで音がしそうなくらい決めてくる。
「父さん、いくらなんでも大人気ないんじゃないの?」
とジト目で睨むのだが、父さんはどこふく風とばかりに
「いいか、トリオ。どんな事でも力だけで自分の望む目的や解決ができると思うな。常に考えて二手三手先を読め。今だって、お前パンチは俺に当たらないと思って、音で攻撃しようとしただろ?」
「うん、ダメだったけどね……」
「そうだな、でも、音で攻撃するって考えまでは凄く良かったんだ。だからその先も考えるんだ」
「どうすれば良かったの?」
「う~ん、本当は答えは自分で考えろ、と言いたいところだけど……例えばだ」
そう言って父さんは、少し深刻な顔をして口をパクパクとさせる。
僕は一瞬だけ不思議に思ったけど、すぐに父さんの言いたい事に気が付いた。
父さんが耳に腺をして、聞こえないなら、その腺を父さん自身に外して貰えば良かったんだ!
それを伝えると、父さんは笑って
「そうだな。でもな、父さんが耳栓をしているかどうか分らないわけだから、最終的な攻撃に音を選んだのであれば、それが通じるのかどうかを試す意味でも、今の口パクは有効だと思わないか?」
そう言われてハッと気付く。
「そうだ、分ったようだな。いいかトリオ! 相手がどんな攻撃方法、どんな防御方法を使ってきても、最終的に打ち破るにはどうすればいいのか? そいつを常に考えるんだ。戦いにおいて考えるという事を止めた時には……負けると思え」
「うん」
「それと、これはまだ難しいかもしれないけど……戦いにおいて一番確実なのは戦う前に勝負を決めておくことだ。これが最も効率的だ」
「戦う前に勝つの? そんなことが出来るの?」
「できるさ、ここを使うんだ」
そう言って父さんは自分の頭を指差す。
「む、難しいよ、父さん」
「そうだな、それはとても難しいことだ。けどなトリオ……」
そう言って父さんは、さらに難しい顔をしてゆっくりと言った。
「ノウラン家の頭領はそれができなければいけない。最も効率のいい勝ち方と言うのは、最も被害が少ないと言う事に限りなく近い。今は難しくてもいい、だけど……父さんに約束して欲しい」
「うん」
そう言って父さんは本当にすまなそうな顔をして続ける。
「お前には可哀想だと思うけど、ノウラン家の頭領である以上、常に最小限の犠牲、いや違うな、できれば完全に無傷で勝つことを目指して欲しいんだ」
「うん」
「そのために考える事を諦めないで欲しい、自分で最善の手だと思っても、もっと良い手はないのか? と言う事を常に考え続けて欲しいんだ」
「……難しいけど、頑張るよ」
そう言うと、父さんは僕の頭をやさしく撫でながら
「うん、今はそれで良い。父さんの言葉を覚えていてくれるだけで良いんだ……」
「うん、絶対に忘れないよ! でもさ、父さんの攻撃をかわすのは難しいよ……」
「あっはっは、そうか? 父さんの木の実は簡単にかわせると思うぞ?」
「ええ~~~、どうやってかわすの?」
「そんなもん、簡単だよ。いいか、トリオ? こう木の実が飛んでくるだろ?」
そう言って、父さんは木の実をつまみながらゆっくりと僕に近づいてくる。
「うんうん」
「そうしたら、木の実を良く見て!」
「よく見て?」
「こう、避ける!」
そう言って、僕の顔を少し手でずらしながら、説明をするのだが……僕が呆然としていると
「ん、どうした? 難しかったか?」
「いや、難しいも何も」
「そうだろ? 凄く簡単だからな」
「いや、ちょっと待ってよ父さん! もう一度やってみてくれる?」
「え? しょうがないやつだ、じゃあもう一度やるぞ。いいか? こうして木の実が飛んでくるだろ?」
そう言って、父さんは先ほどと同じように、木の実をつまみ、ゆっくりと僕に近づいてくる。
「そこで、木の実を良く見て!」
「ちょっと待った~~~~!」
「ん、どうした?」
「その時点でおかしいよ!」
「何でだ? トリオ、お前この木の実が見えないのか?」
と言いながら父さんは木の実をホレホレと手で見せてくる。
「いや、見えるよ! 見えているけど、父さんが投げたときはもっと速いから見えるわけ無いじゃん!」
「え? なんで? 普通に見えるだろ?」
「いや、見えないから! 速くて見えないから!」
「そうか? 父さん随分手加減して投げているんだぞ、その証拠に本気なら、こうだ!」
そう言うとさっきまで父さんが、手で弄んでいた木の実が忽然と消え『ベキィッ!』と言う音が聞こえる。
音がした方を振り向くと、木に大きな穴が穿っている。
「あの……父さん? 今投げた父さんの腕も見えなかったんですけど?」
「まぁ、今のは本気だったから、見えなかったかも知れんな」
「いや、父さんの本気は分ったけど、だからと言って手加減してくれれば見えるって理屈にはならないよ!」
そう言うと、父さんは少しげんなりした顔をして
「なんだか、母さんみたいに難しいこと言うんだな……トリオ……父さんは悲しいぞ」
「いや、悲しいのは僕だよ! なんでそうなるんだよ!」
「じゃあ、どうすれば木の実が見えるというんだ?」
「それはこっちが聞きたいよ! 普通あんなに速いの見えないよ、どうやった見えるのさ!」
「どうやったら見えるか?か……うん気合かな?」
「気合で見えるようになるの! それは無理だよ!」
「何を言っているんだ、気合は大事だぞ! 気合があればこんなこともできる」
そう言うと父さんは、いつものように僕に向かって実を投げつける。
僕は父さんが投げた木の実を見えないながらも勘で避けようとすると、いきなり父さんが目の前に現れ、木の実を軽く受け止めて涼しい笑顔で「な?」と声を掛けてくる。
「いや、『な?』じゃないって、気合だけでそんなこと出来るわけないじゃん!」
「え~~、できるって。こんなの必要なのは気合だけだぞ。他に何がいるんだ?」
ダメだ、この人……さっきまで、あれだけ考えろとか言っていたのが台無しだよ……
「バクスター様いい加減にしてください! トリオが困っているじゃないですか!」
そんな事を考えているうちに、トゥイお姉ちゃんたちが川から戻ってきた。
「おお、トゥイお帰り。川は冷たくなかったかい?」
「お帰り~トゥイお姉ちゃん。それと、エミルお姉ちゃんと、ティミーお姉ちゃんもお帰り~」
「うん、ただいまトリオ。川で汗を流してきたからすっきりしたよ」
そう言って、エミルお姉ちゃんが僕に抱きつく。
「エミルお姉ちゃん、良い匂いがするよ」
「えへへ、川に行く前にバクスター様から石鹸を借りたんだ、トリオは良い匂いがするお姉ちゃんは好きかな?」
「うん、大好きだよ~」
と言って抱きつき返すと、ティミーお姉ちゃんも
「あ、あたしも良い匂いするよ、トリオ! こっちに来て」
そう言って、手招きするティミーお姉ちゃんに抱きつくと、トゥイお姉ちゃんが少し不機嫌そうに
「ほら、あなた達ふざけていないで、バクスター様のお手伝いをして、さっさとご飯にしましょう」
そう言って、パンパンと手を鳴らすのだが
「あら、トゥイ姉さんは、バクスター様に匂いを嗅いでもらえば良いんじゃない?」
そう言ってエミルお姉ちゃんがからかうと、トゥイお姉ちゃんは、顔を真っ赤にして
「ば、馬鹿なこと言っているんじゃないわよ! バ、バクスター様はそんなこと「クンクン、うん。いい匂いがするぞ、トゥイ」」
父さんは、トゥイお姉ちゃんが言い終わる前に、既にトゥイお姉ちゃんの後ろに回りこみ匂いを嗅いでいた。
「イヤァァァァァァァァ! バクスター様のバカァァァァァァ!」
そんなトゥイお姉ちゃんの声が夜の森にこだまする。
僕たちは大笑いしながら、真っ赤になっているトゥイお姉ちゃんをからかう。
そんな幸せなひと時をかみ締めながら、一路ディノスへと馬車は向かう。
さて、以前の後書きにも書きましたが、何のために強くなるのか?
と言うお話のさわりの部分になります。
賛否両論のある考え方だと思いますが、英雄バクスターの考えはいかがでしょうか?
ネタバレになるので、何故バクスターがこのように考えるかは今は言えませんが、今後のお話の中で明かしていきたいと思います。
次回のリリースは26日の0:30分ごろになります。




