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手紙  作者: 人見 庭
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南方より来たりし燕喇叭を鳴らす

 宿舎の軒先に燕が巣を作つたやうだ。雛は四羽は居るに違い無い。始終腹を空かせてゐて、朝つ腹からまあのべつまく無しに鳴いてゐる。親鳥が巣を離れてもピイチクパアチクと、餌を持つて来いだの喉が渇いただの、恰も私に云いつけてゐるやうだ。これは人間様も鳥語を解すると思ひ込んでゐるのやも知れぬ。ま、解つたところで蚯蚓だの羽虫だの取つて食はせて遣る積もりも無いがね。

 九州はこの時分、随分と暑い。雪国生まれの私には夏のやうに思へるのだが、此方の風土で生まれ育つた者からすればまだまだ序の口ださうだ。夏は颱風が来てからで、それまでは、幾ら太陽が眩しからうが山の緑が黒々と濃く成らうが、まだ春の内と云ふ。確かに衣替えもしてゐないからな、軍服はまだ詰襟の儘だ。だから教練中は勿論、待機している間さへ汗がぽたりぽたりと背なを伝つて落ちて来るよ。

 だが、この時分の飛行訓練の爽快なことと云つたら無い。ヘルメツを被つて居たつて飛行眼鏡をして居たつて、地上に居るより遥かに涼しい。空の風は涼しく、眼下の海は青く。わが最期の出撃も、このやうな日に成ると良いのだがね。

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