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もう、真美の家についてしまった帰り道。
「たっくん。ありがとう。気をつけて帰ってね。」
ほんわり笑うまぁちゃんは更に可愛い。
そんな真美を見送る。向かう先は明かりのない家。
うちの母の話では、真美の家のおばさんは、朝は真美が家を出てからパートに行くそうだ。
兄やんは一人暮らしだし、おじさんも帰りは夜だったはず。
だから、この時間に居ないとしてもリビングには必ず明かりを点けて出掛ける人だ。
真美が気になり始めてから学校帰りに自転車で家の前を通るので気が付いたけれど最近いつも明かりがない。
まぁちゃん。何があった?
最近、元気がないのは家で何かあったのか?
翌朝…
静かな家の玄関が開き真美が鍵をしめる。
「おはよう。」
おばさんが最近ずっと家にいないと確信した。
そして、決してストーカーじゃないと自分を慰めた。
「おはよう。自転車は?」
「置いてきた。」
そう言いながらまぁちゃんと手を繋ぐ。
柔らかい…。今まで苦手だった手を繋ぐにはまりそう…。
「ちょっと手…。」
「チャリだったら手つなげないだろ?だから置いてきた。」
「いや…どうして手を…。」
もっと仲良くなりたいからですが?
「お試しだけど付き合ってるんだからいいよね?」
あたふたしてるまぁちゃんも可愛い。
お試し期間で粘って良かった。
そんな幸せな時間は、桜ちゃんと合流する前に終わりを告げる。
「谷沢くん…。あの離して下さい。」
そう言われ温もりが離れる。
まぁいいや。帰り道がまたある。
今日も一緒になる桜ちゃんは、意外と話やすく言葉少ない真美を巻き込みながら三人で登校する。
今朝も真美は疲れているし、顔色も悪いのが気になりながら…。
教室に入る時に
「じゃあ、お昼一緒に食べようね。」
同じ教室なのに離れる事が寂しくなり、約束を勝手にして頭をなでてしまった。
席につくと
「匠。」
「朝からなに?」
「女子の嫉妬は怖いから気をつけてあげなよ。」
「匠、目立つしな。」
「まぁちゃん、意地悪しやすそうだし。」
気が付かなかった。
いつもいる三人も目立つ方だし。
実体験か経験談か?
「ラジャ。けど、お前が意地悪すんな。」
「しないよ。まぁちゃんに、意地悪して困るの見たら可愛いだろうとは思うけど。」
「もう、お前はまぁちゃんに近付くな。」
爆笑から始まる学校の朝だった。