6
とても嬉しい朝に学校に向かう足も軽い。
お試し期間は、最低一年…とは言えないから一ヶ月に決める。
お試しならどこまで良いんだろう。
ちらりと真美を見ると何か考えこんでいる。
「賭けか罰ゲームでしょ?」
そんな事はした事ないけれど、そう言われたのは軽い奴に見られているからだろう。無理はやめよう。
小さな頃の初恋のまぁちゃん。
小学5年の頃にまぁちゃんの仲の良さをからかわれるのが嫌で、そんな俺の態度から少しずつ距離がついてきた。
けれど届け物に行き、まぁちゃんが出てくると密かに嬉しかった。
お試しとは言え一歩前進だ。
「あの。たっ、谷沢くん。」
「匠でいいよ。いつもの呼び方でもいいけど。」
本当は、たっくんより匠と呼んで欲しい。
真美と話ながら歩け嬉しい気持ちになる中、不穏な言葉が耳に届いた。
「やっぱり…なかった事に…。」
そんなの絶対嫌だ。
「ん?手つなぐ?」
聞こえない振りで手を差し出す。
スルーされた…。
自転車もあるし元から無理だから仕方ない。
駅前でいつも待ち合わせているらしい同じクラスの女の子と合流する。
「桜ちゃん。おはよう。」
俺の時と全然違う挨拶…。
「おはよう。桜ちゃん。」
まぁちゃんとよく一緒にいる三好さんだ。俺も桜ちゃんと呼ばせて下さい。
「えっと…谷沢くんおはよう?」
「ごめん。桜ちゃん。遅くなって。後で話すからとりあえず行こう。」
それから、あまり相手にされず学校に着き少し切なかった。
そして昼休み。
探すと、友達と一緒にいる真美と目が合った。
昨日まで目も合わないでいたから、すかさず手を振ると視線を外され桜ちゃんと話はじめる。
近付けて嬉しいと思ったのは俺だけか…。
教室の後ろの方でいつものメンバーで昼をすませた所に同じクラスのミキ達がきた。
「ねぇ。今日、カラオケいかない?みんなも一緒に。」
いつものメンバーも誘うミキ。
「悪いけど俺は無理だよ。」
いつもより優しめに断る。
「え~。匠、最近ぜんぜん遊んでくれないじゃん。」
ミキが肩に手を置き近付くので、身体に当たらないように避けて立ち上がる。
こんな所、まぁちゃんに見られたくない。
「バイトあるから。」
そのまま足を進めると「僕達とも約束があるんだ。だからごめんね。」と松山がフォローしてくれていた。