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だめだ。このままだと感情に流されて落ち着いて話せない。もう誤解させずに、わかりやすく好きだと信じてもらえるように伝えたい。
後は俺を見て時間をかけて信頼されたい。
心の深呼吸をしたけどあまり効果は無かった。
「一人誤解して勘違いした僕の賭けなんかの為のお試し期間中に絡まれた事も、受けた嫌がらせも隠してましたよね?
うっとおしくて迷惑ばかりかける嫌いな僕と、賭けと思っていても一ヶ月もちゃんと付き合ってくれてデートまでしてくれましたし。」
俺の話しをじっと聞いて、泣きそうになってるまぁちゃん可愛い。顔がにやけてくる。
「挙げ句の果てに勝手に自滅して取り乱して放心して、泣いて抱き締めていた僕の腕の中、僕の胸でも泣き続けてあんなに可愛い泣き顔を見せてくれましたよね。
そんな佐藤さんが、僕以外の誰の為に告白の練習したんですか?妬けます。
誰に告白するつもりだったんですか?
佐藤さん?ちゃんと教えて頂けませんか?
図書委員の谷沢ですか?」
まぁちゃんの目が手紙を見つめている。嫌だ。まだ言い足りない。
けどこれじゃあ、いじめてるみたいだ…。
正座している真美が俺から離れようとするのがとても嫌で、お互いの足が当たるくらいにじり寄るとピキリと体が固まった。
「佐藤さんは僕に嫌われようとして、こんな手紙を書いたんですか?もし、そうなら残念ですが限りなく無駄です。
俺の気持ちをそんな軽く見て欲しくない。
この手紙で今回、佐藤さんの思い通りに事が進んだとしても、後から必ず佐藤さんが人前で昨日の倍以上の恥ずかしい思いをするだけです。
例え、この手紙が本当だとしても相手は佐藤さんですよ?
僕達が付き合えるように絶対に色々と、佐藤さんを手に入れられるまで何度でも僕は事を起こし続けます。
だから結果は同じだけど、佐藤さんが今よりもっと困って遥かにいたたまれない思いをするだけです。」
固まったまま俺の目を見つめたまま、何も言わないの真美が気になり小首を傾げたら、やっと真美の声が聞けれた。
「その話し方と佐藤さんは凹むので止めて。
あと…手紙と私の誤解で傷付けてごめんなさい。
それと、なんで初めに賭けや罰ゲームじゃないって否定してくれなかったの?聞かなかった私が一番悪いけど、否定しないたっくんも…。」
やっと真美からの問いが友達以上になれた気がして嬉しくて頭をなでた。
口も挟めないし、何かを聞く余裕もなかったろうけど…。
「少しずつでも良いから、何でも今みたいに気持ち言ったり聞いたりして。俺はちゃんと答えるから。誤解されるのはもう嫌だ。
デートも、普通と変が交互のまぁちゃんだったし。」
すがるように俺を見て真美が頷いた。
「そんな顔しないで。いじめたかった訳じゃない。
手紙は、誤解のせいだと知ってるけど本当に不安になったから言っただけ。あんな話し方じゃないと落ち着いて言えそうになかったから使った。
誤解を昨日までずっとしていたってハッキリと分からなかった。柳が賭けの話を心配してたけど、俺どう話を出せば良いか分からなくて長く不安にさせてごめん。」
俺も素直に柔らかく気持ちを言って頭を下げると真美が言ってくれた。
「私、賭けなのか怖くて聞けなかった…。ずっと頭にひっかかってた。
毎日、全部じゃないよ?お母さんの時とか凄く嬉しかった。ちゃんと楽しい時もあったよ。
昨日は賭けに勝つようにして別れるしか頭になかったから…。ごめんね。」
頭を上げると俯く真美。俺がもう少し気持ちを伝えて告白して誤解をその場で解いていたら、真美を追い詰めずにすんだのだろう。もっと助けてやれたかも知れない。
申し訳なく情けなくなったが真美の両頬に両手を添え、俺と目を合わさせた。
「登下校も俺にとってはデートだよ。また休みにしたらいいだけ。気にするな。
二回目の告白をしたら賭けか罰ゲームか聞かれて、意味わからなかったから考えてたら、すぐに反応出来なかった。否定する前に嫌われたと思ったから、あとは話しかけ続けるだけでやっとでさ…。
ついでにお試し期間も言えば、無理矢理貰ってでも俺が好きなまぁちゃんに近付きたくてだ。もっと話がしたくて一緒にいたくて誰にも取られたくなかった。
更に言えば、まぁちゃんが俺を好きになってくれて彼氏になれたらいいと前から思ってた。」
自分で伝えようと言っていたけど、その好きなまぁちゃんが俺の前にいて手で触れていると思ったら、顔が赤くなるのが自分でわかった。
なのに、また驚きの発言が来てしまった。
「え?意味わからなかっただけなの?だって靴にメモの一回目の時に、あの三人が入ってきたから、てっきり賭けや罰ゲームのお遊びなのかなと思っちゃって…。
匠もおやつねだるみたいにお試し期間とか言うし…。」
俺の肩をガクン落とす言葉…。
真美の言うメモは、短い文に気持ちを込め、愛と勇気とゆう友達と一緒に靴の上に置いた手紙だ。
お試し期間をおやつをねだるとは、そんなに子供みたいだったんだろうか…。
あぁ。また俺もう駄目だ。今日はもう無理…。
「ほんと、たっくんだな俺…。奴らは偶然。だから、賭けでも罰ゲームも絶対にない。
まぁちゃんの近くに一ヶ月も一緒にいたから期限切れたからって言われても、前みたいに離れるなんてもう俺には出来ない。好きだから、ずっと一緒にいたい。
嫌がらせは俺も何とかするから安心して俺と付き合っといて。噂話は一緒に考えよう。ね。」
最後にまたきちんと気持ちを伝えて、手紙で心配になった所は解決しよう。
まだ、きょとんとしてる真美に念押しをして頬にキスして、真美の離れた。
さっきまでの黒々とした感情も解消された。真美の様子から気持ちは信じてもらえたと信じたい。
今日は俺、もう無理…。
手にある手紙を見ても頭で内容を思い出しても、昨日みたいな気持ちにはならない。よし、俺は大丈夫だ。
「内容は気に入らないけど、初めて真美からもらった手紙。どうしよう。」
手紙をテーブルに置いて真美に返そうかと、そちらを盗み見た。
体育座りして、顔を赤くして両頬に両手を添えて可愛い笑顔で、じっと俺を見てる。
二度見してもかわらない。
夜まで誰も帰らない家、俺の部屋にあんなまぁちゃんと二人きり。
いけない妄想に走りそうになったので手紙に集中しようとした。
俺がまぁちゃんを誤解させて、それをとく事もせず追い詰めて辛いをさせた結果の手紙。
まぁちゃんが俺に何も聞かず一人で誤解して書いた手紙。
「封筒のまま額に入れて飾ろうか」
これを見る度、二人何かに気付くかも知れない。
真美がまたこの部屋に来る事もあるだろう。
今度はいつ来てくれるだろう。来たらどうしよう。
なんて考えてたら、真美がそっと俺の斜め後に座った。距離が近くてドキドキする。
真美が俺に身を寄せながら、手紙が狙いなのかソロソロと手を伸ばし俺の腕に柔らかい感触…。
反射的に反対の手で手紙を高くに上げらた。
真美は、手紙を見上げて手をのばすが届かない。立ち上がろうとしたので、両腕で体を捕まえ俺のあぐらを組んだ膝の上に座らせた。
こんなはずじゃなかった。
ただ近くにいてのドキドキが大きくなったので捕まえてみただけだった。
膝の上の真美の体温。
柔らかい体に抱きしめるより近い距離と密着。
今日は、こんなつもりじゃなかったけど…。
やっぱり、俺もう無理…。