17
翌日は、俺の気分と裏腹に快晴。
ほとんど眠れなかった俺の目には眩しい光…。朝早くに目が覚めても考えた。
あの手紙の内容はやっぱり嘘だ。
意図はわかる。俺の賭けの為に本当に付き合う。勝ちでしょ。賭けも終ったんだから振り回されたくないから別れましょう。
そうゆう賭けと誤解しているまぁちゃんからの手紙だ。
どうゆう気持ちで書いたか、わからないけれど。
けど公園で誤解も解けて、気持ちも伝えて付き合う事になった。まぁちゃんの気持ちも手紙と違うはずだ。
聞いみよう。好きな人を疑うのは辛い…。
そうして二度寝して起きたら昼だった。
リビングに降りると置き手紙。
台所でお茶を飲み部屋で着替え、気分転換にコンビニに行く事にした。コンビニを口実に真美の家に行ってみるのもいい。
リビングに降りると窓から何か見えた。
よくよく玄関を見るとまぁちゃんだ。
慌てて玄関に行きドアを開け外に出た。
「まぁちゃん?」
インターホンに指を伸ばしたまま驚くまぁちゃん。
タートルのセーターにジーンズ。こんなまぁちゃんも落ち着けて好きだ。
「これ、お母さんの内祝い。色々ありがとう。」
俯いたまま紙袋を渡され受け取ると。
「じゃあね。」
クルッとそっけなく帰ろうとするので、手首を捕まえる。
そんな態度に怒りに似た感情が湧いてくる。胸で泣いてたまぁちゃんが嘘なのか?
昨日感じた焦りや、不安、嫉妬より黒々とした物が押さえられない。
「駄目。上がって?」
「嫌。帰らないといけないから。」
目も合わせてくれない。不安でたまらなくなり、真美の手首を引き玄関に押し入れ思い切り抱きしめた。
「どうして?そんなに俺が嫌?そんなに一緒にいたくない?」
「そうじゃない。どうしてもの用事があるから…。ごめん。」
まぁちゃんの温もりと言葉が黒い物を少し溶かしてくれる。
けど、まだ帰さない。
「じゃあ、お茶だけ。」
そう言って俺の部屋に通した。
うちの両親は、真美の両親との退院祝いの夕食の前に映画に行ったとリビングのメモにあった。
なのに、外に人影が見えたので窓から覗きドアを開けたと話した。
夕飯となると帰宅は遅い。時間はたっぷりある。
のんびり台所でお茶とグラスを持ち部屋のドアを開けた。ビクッとして机の手紙を手に、ぎこちなくゆっくり振り向いく真美。
顔が強張っている。
そうか。ここにあるのが不思議?俺に読まれたくない手紙だったかと笑顔をつくった。
小さなテーブルにお茶とグラスを置き真美の手を引いてゆっくり座らせた。
手を繋いだまま真美の目を強く見ながら話しはじめた。
可愛い大好きな真美と二人だけの家で時間を気にせず手紙の事を、やっと聞けるかと思うと自然と笑みがこぼれる。
「昨日、ちゃんと俺が手紙は拾って帰った。
『今まで色々ありがとう。
けど、やっぱり付き合えません。無理です。
谷沢くんにかまわれる事がうっとうしいし、噂話や嫌がらせをされる毎日にも疲れました。
一緒にいるからそうなるし、本当は谷沢くんの事が嫌いなんです。
告白したのは、いつか誰かに告白する為のただの練習です。
気持ちも何も、谷沢くんにはありません。
ごめんなさい。忘れて下さい。
お試し期間のうちの事は、全て無かった事にして下さい。
そして、もう私に関わらないで下さい。谷沢くんといたら迷惑ばかりで嫌なんです。
今までありがとう。
さようなら。』
どう?」
まぁちゃん。そんな怯えないで。聞いてるだけ。
本当にショックだったんだ。
「合ってるよね?
家で読んだ時には、誤解はとけたはずだから内容が嘘だと分かっていても涙が出たよ。
昨日の公園でまぁちゃんに本当に俺の気持ちが伝わってるか、誤解が解けたか不安になった。
悲劇のヒロインになら似合う内容だけどね。」
俺の気持ちをチクリと言えば、怯えていたのが何やら手紙を見つめ考えている。
「俺宛だから読んでも問題ないはず。記憶力は良いから一度で覚えた。
他人に拾われなくて良かったろ?」
にっこり言うと、繋いだ手がゆっくりゆっくり俺の手から離れて行き、サッと真美の背中に回された。
そう。こんな話は嫌?けど、止めても、帰らせても、離れてもやらない。
俺だけを見て俺の気持ちを信じろ。
真美の手から手紙を取り上げヒラつかせながら、黒々とした感情が色を濃くしていくのを感じた。