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少し元気がでた真美が入れてくれたお茶を飲み帰る事にした。


「まだ居たい。」

帰りたくなくて耳元に顔を寄せながら素直に気持ちを込めて言ったはずなのに、玄関まで背中を押されて行かれる。


「たっくん。今日は本当にありがとう。暗いから気をつけて帰ってね。それから、朝も帰りも私一人で大丈夫だからね。」


お返しとばかりに、ほんわり笑い柔らかく俺にキツイ事を見送りで言われた。


「絶対に嫌。じゃあ、また明日の朝来るから。」


真美の泣き腫らせた目くらいだけは、力になれたらしい。


けど、もしかして…まぁちゃん告白忘れてる?それか、一人で大丈夫=付き合えないか?

あ…悲しくなってきた…。


久しぶりに、とても落ち込んだ帰り道。

抱き寄せて頬にチュウが出来た事だけを慰めに俯きがちに家に向かった。


くじけず翌朝も家の前に行く。まぁちゃんが本当に朝の迎えが嫌なら断る方法はあるはず…。


「まぁちゃん。おはよう。」


何もなかったように声をかけた俺に気づいた途端に、見る見るうちに顔が赤くなるまぁちゃん。


おっ?たっくん卒業か?


それなのに、俺の方は、名残でからかいたくなってしまう。まぁちゃんに顔を寄せ評判の良いらしい声を、いつもより意識して


「おまじない効いた?」


顔を近づけたまま言ってみた。


「お試し期間中だしもっと軽いおまじないにして下さい…。」


誰が、馬鹿なお試し期間なんて作ったんだろう。俺だ。やめときゃよかった。


真美に近づけて行き距離が縮ませる度に「お試し期間」が邪魔になる。

苦しまぎれの言葉で出来た繋がりはチャンスだけど、俺の気持ちが軽く伝わりそうで嫌だった。

後悔を気取られたくなく、俺を見上げる真美の顔を見ないように手を繋ぐ。


「昨日はありがとう。遅くまでごめんなさい。」


「ん?当たり前だよ。まぁちゃんなら、いつでも大歓迎。」


しおらしく言わなくていい。ずっと気になってたんだ。まぁちゃんと話ができて、こうしていられて俺は嬉しいんだ。

繋いだ手の甲を指先で撫でると柔らかくても、触れる真美の指先はザラついている。

いつもより元気な顔を見られ嬉しくなりながらも、大丈夫かと心配したその時に…


「谷沢さま。お願いがございます。」


「は?」


谷沢さま…?


「宿題を見せて下さい。谷沢さまが頼りなんです。お願いします。谷沢さま。」


手を振り解かれた。

話しを聞けば厳しい先生からの量の多い宿題が真っ白で写させて欲しいらしい。


お願いされた事は嬉しいが、生憎俺もほとんど白い。

学校に着き青井、柳、松山と真美の友達達の協力で休憩時間も騒ぎまくり、宿題はどれも時間になんとか間に合わせた。


そんな日の昼休みが終わりが近付く頃の教室に、まぁちゃんの姿は無かった。


「桜ちゃん、まぁちゃんは?」


「トイレに行ったきりで…。メールしたけど、バックから音がするの。」


心配げな桜ちゃん。

授業をさぼったりなんかいつもしない、まぁちゃん。嫌な予感がする。


チャイムが鳴り席に着いたけれど、授業が始まってもまぁちゃんの席は空いたままだ。


探しに行こうとした時、ガラリと扉が開き青井が入ってきた。

先生に注意されながら俺の後ろの席に座る。


「匠…。これサンキュ。」


先生の目を盗み体育館倉庫の裏の鍵を返された。


「倉庫で寝てたらまぁちゃん絡まれてた。結構、言われてて。けど、まぁちゃんってわからなかった…。ごめん。押されてこけて一人保健室に行ったぞ。」


こそこそ、詳しく話をしていたら


「そこっ!」


「先生!俺トイレ!」


見つかったので手を挙げ言って、保健室に向かう。

ラッキーな事に先生は居なかった。


こっそり覗いたまぁちゃんは、布団に包まり少し赤くなった瞼を閉じ眠っている。


「まぁちゃん。ごめん…。ごめんね。」


おでこにキスを一つ落としたら、先生が戻ってきてお腹が痛いと言っても元気が良すぎて追い出された。


まぁちゃんに絡んだ三人には、後でキッチリとお返しをさせてもらう事にした。





ここまで読んで下さりありがとうございます。感想頂けたら嬉しいです。

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