第二話
中に入るとそこにはハリスとその仲間達が居た。
ハリスの身長は高く体格も良く、自分より一つ上の歳には見えなかった。
「何だお前?何しに来たんだ?」
ライトが来たことの気づいたハリスに尋ねた。
ライトは震えながら、
「お、お前がいつもいじめているアレンの事で来たんだ…。もうやめてくれないか?」
それを聞いた仲間達は笑い出した。
「ははぁん。お前アレンのダチか。あのゴミ、チクりやがったのかっ。」
ハリスは舌打ちした。
「違うっ!! 僕が自分でアレンがいじめられている事に気づいて来たんだ!」
ハリスは不気味な笑みを浮かべて、
「ふぅん、いい度胸じゃねぇか。でも帰るなら今のうちだぜ?」
「嫌だっ!もうアレンに酷いことをしないって約束するまで帰らないぞ!」
ライトはハリスを睨む。
するとハリスの仲間達がライトに襲い掛かった。
「生意気なこと言ってんじゃねぇぞコラッ!!」
「待てよお前らっ。」
ハリスは彼らを制した・
「別にいいぜ、アレンをいじめるのを止めたって。」
それを聞いた仲間達は、
「はぁっ?何言ってるんだよハリス!?」
「そうよ、こんな馬鹿の言ってることを真に受けるの?」
などと言った野次が飛ぶ。
ハリスは、
「だからよ、お前が俺とタイマンして勝てたら止めてやるよ。正直最近アイツをいじめるの飽きてきたんだよ。 さぁどうする?俺とやり合うか?」
ライトはしばらく黙って、
「分かった……。」と言った。
こうしてライトとハリスの対決が始まることなった。
周りの椅子や机をどけて、ちょうど殴り合いが出来るようなスペースができた。
そこにライトとハリスは入った。
「それじゃあ、よーい始めっ。」
とハリスの仲間が試合の始まりを告げた。
その瞬間ハリスの拳がライトの顔面にストレートで叩き込まれた。
「グゥッ!!」
間をおかずハリスはライトの髪をつかみ、思いっきり腹を蹴り上げた。
「ガハァ……!」
「ホラホラどうした!? もっと楽しませてくれよ。ホラホラホラァッ!!」
ハリスはライトの鳩尾を連続で殴り続けた。
ライトが血反吐を吐いて倒れ込んだところで殴るのをやめた。
「ハァハァハァ。 あうぅぅっ……。」
ライトは苦しそうに腹を押さえている。
「あぁあっ、面白くねぇな。簡単にくたばりやがって。」
と仲間達は笑う。
ハリスはライトに近づき、
「約束どおり、俺らはアレンをいじめるのをやめねぇぞ。しかもいつもの倍以上の苦しみを与えてやる。」
それを聞いたライトは
「お願いだ!それだけはやめてくれ!何でも言う事を聞くからっ。」
ライトは殴られた痛みとアレンが傷つくこと想像して泣きながら懇願する。
「へぇ、何でも言う事を聞くのか。」
「……うん。だからお願いします。」
それを聞いた仲間達は
「それじゃあコイツを金持ちのホモ達に売っちまおうぜ!こいつの顔女みたいだからゲイは喜んで高い金払ってくれるぜ!!」
「おおっ、それいいねぇ。」
といったライトを同性愛者に売る話をしている。
だがハリスは、
「いや、それよりコイツには禁断の呪いの魔法をかける。どんなことをしても一生治らない呪いをな……。」
「えっ?どんな呪いだよ?」
ハリスはそれを聞いて懐から何かの本を取り出した。
「コイツの姿を畜生の類にしてやることだ。この本にはその呪文が書いてる。」
ハリスの持っていた本は彼が魔法の図書館から盗みだした禁断の本でそれに書かれている呪文は決して
解くことができない呪術ばかりだった。
ハリスはライトの髪を掴み机に叩きつけるようにして乗せると、呪文を読み出した。
数分読み続けるとライトの体に異変が表れだした。
歯と爪が全て抜け新しく生えてきたり、腰が曲がり始めたのだった。
「うわぁぁぁぁっ!!!」
ライトは突然体に襲ってきた急激な痛みに気絶した。
何時間か経った頃、ライトは目を覚ました。
「おーいハリス。犬っころが起きたぜ。」
ライトは(犬っころ?)と思った。
ハリスはライトのところに近づき、
「ほら見ろよ、これが今のお前の姿だ。」
と言って大きな鏡をライトに見せた。
「っっっ!」
ライトは自分の姿を見て言葉を失った。
それは今までの自分の人間の姿ではなく、二足歩行で立っている狼の姿だった。
体毛の色は人間だった頃の髪の毛と同じ綺麗な銀色で毛並みも美しい。腰の辺りには先が少し白いフワフワの尻尾があった。
顔も狼として整った顔立ちをしていた。
「こ、これは……。」
「凄い呪いだろう? 今のお前の姿は俗に云われる人狼ってやつだ。」
ハリスは楽しげに説明する。
「そ、そんな……。」
ライトは今だ信じられないようだ。
「それじゃあ約束だ、ワンコロ。アレンはこれから絶対いじめたりしねぇよ。わかったらとっとと帰りな。」
ハリス達は笑いながら、ライトを追い返した。
ライトはハリス達のたまり場から出て行き、近くに落ちていた布切れで自分の姿が見えないように、アレンの家へ行った。
周りの人間に今の姿が気づかれぬように人混みを避け、アレンの家に着き、玄関にアレン宛の手紙を置いた。
それからライトは自分が人狼になったショックで下を俯きながら、町を出て行き自分の故郷へと帰りだした。
しかしライトは村に帰る途中で足が止まった。
(今の僕がこの姿で村に帰ったらどうなるんだろう?きっと追い出されるよね、こんな姿だもん……。)
という悩みが彼を襲い、彼は泣き出した。
そしてしばらく悩んだ挙句、
(きっと大丈夫だよね。お母さんも村の人達も僕がどんな姿になったっていつもと同じように接してくれるよね!)
とライトは思い村に向かって歩み始めた………。