第一話
ここはフェイル村…。小さい村だが人々は元気に働き、今日も畑仕事などのため朝早くから起きて仕事に励んでいた。
そこに住んでいる少年の一人、ライトは自分の仕事を終え、隣町に住んでいる親友のアレンに会いに行こうと荷物の支度をしていた。
「じゃあねお母さん。行ってきまーす。」と元気な声で母に言うライト。
「行ってらっしゃい。アレンと仲良くねー。」
ライトは久しぶりに親友に会えることにウキウキしながら隣町に向かって走りだした。
ライトは15歳の男の子。髪の毛は綺麗な銀髪で少し長め。身長はそんなに高くなく、顔は女の子のようで初めて会った人達にはよく女の子と間違われるが、フェイル村の女の子達にはその顔が可愛いと割と人気がある。
アレンとは幼い時から親交があり時々こうしてお互いの村に遊びに行くことがよくあった。
(アレン元気かな?一ヶ月ぶりに会うから楽しみだな。)とライトは心の中で呟く。
しばらく歩いているうちにライトは隣町、エイリス町に辿りついた。
彼はアレンの住んでいる家に向かった。
アレンの家に着くとライトはドアをノックした。
「こんにちは、僕ですライトです! 遊びに来ました!」と元気な声で挨拶した。
するとドアが開きアレンの母が出てきた。
「あら、ライト君久しぶりねぇ。いらっしゃい。良く来たわね。」と微笑むアレンの母。
「はい、お久しぶりです。 アレンは居ますか?」
するとアレンの母は眉間にしわを寄せ、
「実はあの子なんだか2週間前から元気がないの。膝とかには時々かすり傷作ってくるし…。そういたのか聞いても教えてくれないのよ。」
「アレンが?」
「うん。そこでライト君にお願いがあるんだけどね、どうしたのか聞いてくれないかな?あの子、ライト君にだったら話すみたいなこと言ってたから。」
そう頼まれたライトはアレンのいる部屋に行った。
「アレン、入るよ~。」
ライトはアレンの部屋のドアを開いた。
「ライト……。」
「どうしたのアレン?お母さん心配してたじゃない。」
アレンは俯いたまま、
「ねぇライト……、これ見てよ。」
と言って服の袖をめくり腕を見せた。
「これは…!」
アレンの腕は数え切れない程の痣やかすり傷ができていた。
「どうしたんだよこれ!? 何でもっと早く言わなかったの!?」
ライトはアレンの肩の手を置く。
アレンの話によるとアレンは2週間前にハリスと呼ばれるこの町の不良とその仲間にいじめに合っているのだという。 原因はただ単にぶつかってしまっただけなのだが、そのぶつかったことにアレンは気づかずに謝らなかったそうだ。
その日からアレンは毎日殴る蹴るの暴行を受けているのだというのだ。
誰にも言えなかったのは、チクるといつもの倍以上の暴行を加えると口止めされていたからだった。
「ひどいじゃないかそんなこと!!」
「でももう俺耐えられないよ……。もう毎日毎日いじめれるなんて…。」
そう言いながらアレンは目に涙を浮かべる。
「安心してアレン。僕が何とかするよ。」
ライトはアレンに微笑みかけた。
「えっ?どうするんだよ? あいつらマジでヤバイんだぜ、大人も皆怖がっているくらいなんだから。」
アレンは心配するが……、
「いいから、いいから。僕に任せてって!」
ライトはアレンにハリス達の居場所を聞くとそこに向かって走りだした。
正直言って彼には何の案もなかった。ただ大事な親友が傷つくことを何としても止めたかったのだ。
ハリス達のたまり場はエイリス町の端の廃屋と化したスナックに有った。
ライトはそこに着くと、大きく息を吸い込んで中に入った……。