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     ○意向(4)

勇者様の心の声なのであんまし喋ってません。

色々と考えたすえにごろごろすることにした。

そして俺は文字通りごろごろと部屋の中を転がる。

じっと考えて暇を持て余すよりも動きながら考えようと結論づいたからだ。

自慢じゃなくない(つまり自慢だ)けど俺はちょっとやそっとじゃ目を回さない。

壁にぶち当たる直前で止まり逆方向に動こうとしたとき、ちょうどよく魔王が来てくれた。

出会えた喜びと、暇からの解放から俺の心は弾む。顔には出さずに。


「おー、一週間ぶりだな。魔王」


久しぶりに見た彼女は相変わらず可愛らしい。

どこか緊張しているのか、俺の顔を見た途端、頬を染めながらも挑戦してくる姿は、他のやつらが彼女をどう見てるか知らないが俺には愛らしくみえてしまう。


「ひ、久しぶり、です。・・・じゃなくて、今日の勝負は私が勝つ!勝って『珠』を盗るの!」


『玲心の珠』をとられたら国のやつらに怒られるじゃ済まないことになっちまうから渡すことは出来ない。

これは魔王も同じだとは思う。

・・・待てよ?これを利用すれば・・・。


「ふ~ん。じゃあ盗ったら」


俺は起き上がると両腕を全開にした。


「へっ?」


魔王が驚きで止まるのも当然だろう。敵が宝をあげるなんて絶対にありえない。

それには必ず裏があるため、普通は信じないだろう。

俺だったら疑うね。それか疑う前にぶっ倒す。

だが警戒しながらも近づいてくる魔王を倒すなんて出来るわけがない。

魔王が近づく様は小動物みたいで可愛らしい。


俺が魔王を待ち構えているのは確かめたいことがあるため。

もちろん『紅心の珠』を盗ろうとかはおもっちゃいない。

ゆっくりとだが俺の目の前にまで来た魔王。あとは彼女を捕らえればいいだけだ。


それだけなのだが俺はその時の魔王に少し疑問を持った。

というのも彼女の手が震えていたのだ。

その震えは最初『玲心の珠』を前にした緊張だと思ったが、彼女の顔は悲しみと恐怖と希望というなんとも微妙な顔になっていた。

緊張はそんなにはないようだったが、その顔に彼女自身は気づいていないようだった。

喜ぶにしては明らかに嬉しそうではないし、かといっていらないというような感じでもない。

とても大事なものが他の人の手に渡ってしまい、それを勝手に盗んでもいいのかためらっている。そんな顔だったのだ。


とっさに俺は彼女の腕をとり自分のほうへ引きずり込む。本当は慰めたいのだが、今の俺の立場上それはできない。

俺の気持ちをこいつに暴露すれば確実にこいつは態度に出る。

そしてそのまま第三者に知られるのは非常にまずい。

というわけで俺には何も出来ないが気づかれない程度には何かしてやりたかったのだが。


魔王の匂いを嗅いでしまった途端考えていたことが色々と吹き飛んでしまった。

魔王が何か言っているが聞こえない。

前々から彼女から匂う香りは良いとは思ってはいたが、香水の感じはしない。

ついでに髪にも触ってみたが彼女の長いようで短い黒髪も触り心地がいい。

どれも天然ものだった。


「やっぱりなぁ」


魔王が何か言っているが気にしない気にしない。

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