-2- ●警戒(1)
今回からちょこっとわけようと思います
「そこの勇者様!今日こそは『玲心の珠』をもらってやる!」
「おー、一週間ぶりだな。魔王」
テレポートした先は勇者の現在の宿。
寝っころがりながらひらひらと手を振る勇者。
見れば服も何故かしわだらけ。
限りなくだらしなく、敵が来たというのに余裕ぶっこいてる・・・。
くそぅ、かっこいい!ときめいた!し、心臓がっ!
顔がかっこいいうえに、そのものぐささが、またたまらなくいい!
「ひ、久しぶり、です。・・・じゃなくて、今日の勝負は私が勝つ!勝って『珠』をとるの!」
運良く部屋には勇者しかいなかったので邪魔する人はいない。
「・・・ふ~ん。じゃあ盗ったら」
上半身を起こし両腕を広げる勇者様。
「へっ?」
「へっ?じゃなくて。欲しいんだろ?ほらっ」
な、何だろう。罠?
だって怪しすぎる。
近づいた私を相殺!・・・とか。
・・・ま、まさかね。
・・・で、でもホントにくれるのかな?
本当は勇者様はいい人で、私に譲ってくれるのかも。
だとしたらこんなチャンスない!
そろりそろりと私は警戒している猫のごとく、時々彼の表情をうかがいながらも近づいた。
あと、少し・・・もうちょっと。
ちょっとづつだけど確実に近づいていく。
・・・ここからなら、届く。
あとは彼の真ん中あたりに手を伸ばして数秒待つだけ。
それだけで『玲心の珠』が・・・。
その時は彼に多少勝った気でいて油断していた。
勇者はゆっくり出していた私の手をいきなり掴み、自分のほうへ引き寄せる。
ふぇっ!?うそ、うそ!やっぱり罠だったの!?
私は彼の腕の中で捕らわれた。