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     ○勇者様の心情(2)

「意地が悪いわよフェイル」

「何の話だフィアナ。あと勇者様と言え」


魔王が消えると同時に旅の仲間であり、義妹のフィアナが責めたてるように言う。


「あの魔王の話に決まっているでしょ。ちゃんと相手にしてあげればいいのに」

「あんなへなちょこを?真面目に相手にするだけ無駄だぞ」

「魔王とはいえ女の子があんなにも頑張って戦おうとしているのよ。それをあなたは・・・」


本気で相手にしたら多分あいつ死んじまうぞ。

武道を心得ているわけでもないくせに必死で俺の懐にはいろうとする変な魔王。


「じゃあちゃんと相手にすればいいのか?」


ぞんざいな言い方で聞き返してみた。


「それで勇者が勝つなら問題ないわ」

「なんだ。魔王の味方じゃなかったのか?」

「私は相手にしろと言っただけであって、あなたに負けろとは言ってない」


あいかわらずわかりにくい言い方をする。

それにしてもあの黒髪の女は何者なのだろう。

魔王ということはわかるがそれ以外の素性がわからない。

わかることは魔王、女、見た目は2~3年下、単純なやつ、くらいだ。


あとあいつとは戦いたくないこと。

あぁ、これは俺のことか。


「ところでなんで魔王に遭遇したときに彼女の持つ『紅心の珠』をとらないの?魔王が弱いのなら簡単でしょう?」


痛いところをつかれた。

勇者の中にある『玲心の珠』は魔王に盗られたら魔の者達の力を増幅させちまう。

逆に魔王の中にある『紅心の珠』は勇者が盗っちまえば向こうは魔力をいっさい使えなくなる。

だから、勇者は早めに『珠』をとるにこしたことはないのだが・・・。


「すぐに旅が終わっちゃつまんねぇだろうが。それにいくら魔王だからって、へたに傷をつけると手下どもに何されるかわかんねえし」


前半は建前で、後半は本当。でも手下が恐ろしいから倒さないわけではない。


そりゃ最初の頃は魔王の様子をみて、簡単なら盗ろうかと思ったさ。

俺、旅とかめんどくさいの嫌いだし。

でもあいつに何度か会うたびに「旅を続ければまた会えるかもなぁ」とか、「あの黒髪に触ってみてぇ」とか、「すれちがった時いい匂いがした」とか、「あの柔らかそうな肌に傷はつけられねぇ」とか思っちまったらもうしょうがねぇな


第一、向こうは魔力を持ってるから好きなときに移動できるけど、こっちは勇者とはいえ人間なんだ。

移動も当然歩きで、地道のため疲れることこの上ない。

それでも、めんどくさがりやな俺が行くのはあいつに会うため。勇者として魔王に会うのではなく、フェイルという者として彼女に会う。会いたい。


・・・そういえば俺は彼女の名前を知らないな。

もっと彼女を知りたい。

だがこれを口にしてはいけないことくらいわかっている。

だからこそ俺は彼女をどうでもよく扱うことにした。

そうすれば誰も勇者が敵の魔王を心に想っているなんて思わないだろう。


「・・・本当にそれだけ?」

「なんでそう思う」

「後者はともかく前者よ。・・・昔っからぐうたらのあなたが、めんどうよりも楽しみをとるですって?おかしすぎる」


一人、昔から一緒にいるやつになんとなくだが感づかれているのは気のせいか?

気をつけねえと。


「じゃあ他に何があるんだよ」

「・・・、まぁいいか。魔王と戦わずして逃げるよりかは」


何とか危機は去った・・・のか?

よくわかんねえや。


「それにしても魔王の城ってどこにあんだろうなぁ」

「それを探すための旅でしょ」


早く会いてえなぁ

次回からは少しわけようかと思います

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