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     ○訪問(10)

ここいらの話(三章)が終わったら、人物紹介でもしたいです。

「おい、これからどうするよ」

「決まってんだろっ!もうこんな所にいられるかよ!」

「ヤグ牛達は山を越えられるかしら?」

「わ~い。りょっこうっ!りょっこうっ!」

「おそろしや、おそろしや…。わしら老いぼれはこの先どうすれば…」

「別に私一人でも魔王を倒せたわ!」

「まさか今回の魔王が人型だったとは…。顔立ちは好みだったのだがなぁ…。何で魔王なんだ」




それはこっちのセリフだ。

魔王がいなくなった途端に周りの人という人が慌ただしく交差し始めた。

それぞれで何か言いながら引越しの準備をしている。


山奥の小さな村だ。兵もいなければ武器もない。

一応狩り用の弓などはあるみたいだが、それでは小級の魔の者すら倒せない。

というか戦いに未経験な村人では傷でさえ負わせるのも難しい。

それほどの力量差がある。


勇者は宿に戻ろうかとも思ったが、店の主人は客人がすでにいる今夜はともかく明日からは街へ行くらしく準備で忙しそうだった。

勇者は何もすることがないのでとりあえず最後に喋った男に睨みをきかせていると、誰かが後ろから近づいてくる気配がした。

だが殺気は全くしないので危険はない。なんとしてもガンつけを続行するとしよう。




「…一体何が起きたというのですか?」




…なんだ、リッツェルか。一旦ガンつけは終了。




「お前あれだけの騒ぎの中今までどこにいたんだ?」

「私の質問が先です。何があったのですか?」




この俺様陰険研究バカメガネ男め。顔は完璧に女顔だが。

その自分優先な性格はなおせないものなのか?




「…魔王が現れた。それだけだ」




ただそれだけのことなのに村の奴らは山越えなんてめんどくさいことをしようとしてる。それは旅人にとって不幸以外の何ものでもない。


…やはりわからない。

俺は、魔王が好きだ。

確かに彼女は魔だ。人間にとって脅威に属する存在。でも魔であるだけで少なくとも彼女は人間に害のあることは絶対にしない。だからレイシューもきっと無事だろうと俺は信じている。なのになんで他の人間はそれに気づかないんだ。

もしも今の彼らが彼女の性格を知ったなら打ち解けるだろうか?友好的になるだろうか?


…答えはもちろん、否。


 これは俺がおかしいのか?俺以外がおかしいのか?

どれだけ考えても答えは出ない。




「そうですか。確かに何か騒がしかったような…。ちなみに私はつい先ほどまで辺りの生態を調査していましたが、良い実験体は見つかりませんでした…。なんて土地なんでしょう」

「…なぁリッツェル」

「何ですか?」

「お前は魔王についてどう思う?」




こいつも魔王を恐れているのか?




「邪魔な未確認生物」

「………は?」




聞き間違いだろうか。言ってる意味がわからん。




「…どういう意味だ?」

「私の大好きなことは研究です」

「嫌になるくらい知ってる」

「だというのにそれを置いて魔王探し…。世界中をアポなしで行けるのは素晴らしいことなのですが、魔王が現れるたびに私は実験中であれ解剖中であれ論文中であれ調査中であれすべてを中断させなければならない…。さらにはさっさとやるべきことをすればいいのにぐずぐずぐずぐず、あんな魔は初めてみました。ですので邪魔な未確認生物」




初めて見たからって、未確認、は使い方が違うのでは?しかも生物って、間違ってるような、間違ってないような…。

というかやるべき事をやったら世界は滅ぶぞ。

 でも、そうか。他にも色んな考え方があるのか。




「あっ、そうだ。レイシューは魔王が連れてった」

「………、なぜ?」

「さぁ」




巻き込まれた以外に理由はあるのだろうか?

…魔王は、天然だ。




「そうですか、わかりました」




俺とリッツェルは特に心配はしていない。

俺はともかくこいつは研究しか頭にないので、あいつの安否は考えていないのだろう。…好きにも程があるだろう。

あらかじめ決めていたことなのだが、仲間が不審にいなくなったら数日だけ待ってその後再出発になっている。

もちろんできる限り捜すが、現時点で相手の正体は魔だとわかっているが近くを闇雲に捜しても見つからないかもしれない。だが捜索に時間をかけるわけにもいかないのだ。

……………無情になるしかないんだ。ちなみに俺は魔王を信じているからな!


今はベルガとフィアナが森の中を捜している。どこを見ても山だらけな上、夜なので見つかる確率は限りなく低すぎる。魔の者に出くわす可能性だって十分にある。


しょうがねぇ、後で代わって………………………………………、めんどいからいいか。




「ところであれは何者でしょうか?」

「…?」




リッツェルに言われてみてみれば松明の灯りだけなので見えずらいのだが行き交う人々の中に一人、違和感のあるやつがいる。

頭を分厚い白い布で覆い、薄すぎるくらいの茶色の短い髪が少しだけ見えている。服装はどこかの民族衣装のようで首から膝までが一つの布みたいになっており、まるで遊牧民みたいだ。

そいつの服は妙に綺麗で怪しい。だがさらに怪しいのは…




「あれは、人狼……いや、人馬?」



手があきらかに蹄だった。外見的におかしいのはそれだけ。足も普通だし顔も人間。手だけが黒く円型の人間には不便そうな蹄なのだ。


…関わりたくねえなぁ。よし、どっかの木の上で寝てこよう。

少なくともあいつに見つからないようなところで。




「おいリッ」

「あなたは何をしているのですか?」




お前が何してんだーっ!




「あぁ、すいません〜。みればあなたは勇者でしょうか〜?」




妙に間延びした少女…ではなく少年。




「いえ、勇者はあちらです」




余・計・な・こ・と・をっ!




「あ、あなたでしたかぁ、すみません〜。わたしなにぶん頭が悪いのでぇ、絵で覚えたはずの勇者の顔を忘れてしまったのです〜」

「あっそ。…で用件はなんだ?」




こうなりゃあさっさと終わらせよう…。


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