○守る(6)
月に一回あるかないかの更新になりそうです
…どういう状況なんだ?
爆発音がしたから説教を中断して遅ればせながら駆けつけてみたはいいが…。
いち、辺りは焼け野原のようだが民家はなぜか無事
つまりは家だけを綺麗に避けて焼けていて、地面からは煙がいくつかたっている。
人の手にしろ、魔力にしろ、難しいことなのはわかった。
に、その焼け野原上に立っている四人
そのうち二人が一般人だとして、無事なことに安心したが問題は他二人。
…なんで魔王とレイシューが一緒にいるんだ?
レイシューは俺が最後に見たときは旅の疲れと昼寝時間でフィアナの部屋でぐっすりと眠っていたはずだ。
一方、砦に帰ったと思っていた魔王は俺の部屋で別れて以来、つまり数時間ぶりの再会というわけなのだが、部屋で昼寝の仲間と城に帰ったはずの魔王。
…だめだ。二人が出くわす接点が見つからない。と、いうか何気に魔王に抱きかかえられているレイシューがうらやましすぎる。
さん、ではなぜこの四人は対峙しているのだろうか
人間対魔の者、3対1。
…俺から見た客観的な考えだが、誰がどう見てもこれは魔王の仕業にみえてしまう。…不本意だが。
「お、おい…、あの、髪は…」
ついでに野次馬も出てきた。
まぁ近くで爆発が起きたのに平然としていられるほうがおかしいか。
こいつも言ったが、そう、何を隠そう魔王の髪はあらわになっていたのだ。
「…うぁ…うぁあ、ぁ…」
一般人である二人のうちの片方が言葉にならない声を出しながら何かに怯えているが、魔王が人に恐怖を与えるようなやつじゃないことを俺は百も承知。
魔王は魔であるのに絶対に人を襲ったりしない、優しくて人よりも心が綺麗なんだ。もちろん言葉にしたりしないが。
心に留めておくならともかく、口にしてはかなりこっぱずかしい。
「っ!ゅ、ゆうしゃ、さ…!」
俺に気づきさらに必死に両手で髪を隠そうとする魔王。
だが、村人も一般人二人も、そして俺達一行もその黒髪をすでに見てしまったので、それは今更な行動だった。
…なぜ隠すんだ。確かに人として黒髪は異様なものだが、お前の黒髪は綺麗なんだから隠す必要なんか…。
「このやろうっ!」
と、急に村人の一人が魔王に向かって石を投げ始めた。
彼を筆頭に続々と石を投げていく村人たち。
「あんたなんてっ!」
その中には俺たちの今の宿のおやっさんや、さっき俺たちが一休みした茶屋のおばさんもいた。
「どうしてくれんだいっ!あんたがあたしの店に入ったおかげで店を続けられなくなっちまったじゃないかっ!」
「娘が襲われたのもどうせお前の差し金だろう」
「なんで…、…なんでこんなのが村にいるんだ!」
老若男女全ての村人が魔王に石や罵声を浴びせていく。
それにしても、魔王相手に無謀な。いや、魔の者というだけで魔王ということには気づいてはいないのかもしれないな。
とうの魔王はレイシューに再び防御の魔力を使った後、自分にはかけずに顔を伏せたまま微動だにしない。
…あえて、防御壁をしていないんだ。
…守りたい。
めんどいとか勇者とか敵とか。
もうそんなのは頭の片隅だ。
何もせずただ見てるだけでなく、俺は彼女を助けたいと思い、実際、それを実行しようとした
…のだが。
「お、おい、勇者様だぞ!」
「勇者様なら私たちを救ってくださる!」
なんで余計なことを言うんだよ!
その言葉のせいで俺の動きは自動的に止まっちまったじゃねえか!これが本能なのか!?
…俺たちの立場が改めて思い知らされた。