-3- ●魔王お楽しみ中(1)
私こと未緒こと魔王は黒髪をフードで隠すと一人外で突っ立っていました。
何をしているのかと聞かれれば特にこれといって何もしていない。
…だって何もすることが、ない。
「…暇だなぁ~」
勇者様と別れてから城に帰ってきたのかと思えば、実はさっきいた宿から少し離れた場所に出ただけだったのだ。
シャニアさんは結構放任主義なので私に、あれをしろこうしたほうがいいなどという風な意見を出したりはしない。
彼女に対して私が気をつけることはせいぜいご飯の時間と女の子としての行動くらいだ。
それさえ気をつければいつ帰ってもさほど問題はない(夜中に帰ればさすがに怒られるけど)。
どうせ城に帰っても何もすることがないから、その辺でぶらぶらしてようかと思っていたのだが、外は外で黒髪のせいで正体を隠さなければならないため、魔王にとっては暇の巣窟だった。
「勇者様、今何してるのかなぁ…」
ちなみに今、彼はベルガによる説教中だということはわかるはずもない。
このとき、魔王は茶屋に入りだんごらしきもの食べていた。
「へへ、この世界のお金はシャニアさんから貰ったもんねー♪ん~。おいしい、これ!」
お小遣い貰ってはしゃいで喜ぶところその姿は子供っぽいということを本人は知らない。
「お、おい、やめようぜ」
「何言ってんだ兄貴。あいつらを狙えばたんまり金が手に入るぜ!」
…?なんだろう?
声は茶屋の裏から聞こえた。どうやら位置的に魔王にしか聞こえなかったらしくお店の人もお客さんも気づいてはいないみたい。
とにかく行ってみることにした。
もちろん右手にお茶、左手にだんごもどきを忘れない。
「だ、大丈夫…だよな?失敗しないよな?」
「大丈夫、大丈夫。失敗なんかしねえさ。兄貴が頑張ってくれたらな。駄目でも弟の俺が何とかするからさぁ」
「お、…おぅ!やるぞ俺」
「さすが兄貴!じゃあこっそり行くぞ」
…こっそり行っても私と同じくらいの背丈のあなたならばれないかもしれないけど、それよりもプラス0.5メートルくらい(ようは私の半分くらい)でかすぎる兄貴さんは確実にばれちゃうよ!?
「うぁっ!」
あ、こけた!どこに行くか知らないけど絶対にばれるよっ!
あなた兄貴なんだからリーダーシップとらなきゃ。
どうしよう、注意したほうがいいのかなぁ、もぐもぐごくり。
それにしても兄貴さんは単純だなー。
これから悪いことしようとしているんだろうけど、弟に褒められたからってなんでもしていいわけじゃないよ?ずーっ。
そして魔王が考えたり、お茶を飲んだりしている間に二人は行ってしまった。
…まぁ、私にできることはないよね。
もし止めに行ったりして、激昂して襲い掛かってきたりうっかり髪の毛見られたりしたら大変だもん。
…この世界にきて初めて人間と話した、あの時みたいに、なっちゃう。
ごめんなさい、今あの人たちに狙われているどこかの誰かさん!
悪いようにはならないように私は願ってますから!
結果、悪いようになったうえに彼女までもが巻き込まれてしまうのだが。
文章力なくてすみません…