表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひらめきで勝つ天才と、時間で指す棋士―同門公式戦を境に成長した日向と、静かにタイトルだけを見続けた恒一  作者: 夜明けの語り手
第二章 一年後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/45

27話 佐伯師匠との会話

その夜、日向は盤の前に座っていた。

駒は並んでいる。形も悪くない。

それなのに、一手も動かせなかった。


畳のきしむ音がして、顔を上げる。


「まだ、指してないのか」


佐伯師匠が、そこにいた。

実際に来たわけじゃない。

それでも、声の距離感だけは本物だった。


「研究してました」


嘘ではない言葉を返す。

師匠は、ふっと息を吐く。


「研究ってのはな、

 進めるためにやるもんだ」


盤を覗き込み、駒には触れない。


「で、これは?」


「……止まってます」


「だろうな」


しばらく沈黙が落ちる。

将棋の話をしているはずなのに、

何も説明されない。


佐伯師匠は、ようやくこちらを見た。


「あの将棋はな、

もう一度指せると思ってるうちは、指せん」


それだけ言って、立ち上がる。


「答えを探すな。

 条件を捨てろ」


畳の音。

気配が消える。


気づけば、部屋には日向ひとりだった。

盤は変わらない。

駒も、何一つ動いていない。


「……もう一度指したい、か」


自分の声が、乾いていた。


その瞬間、

盤の前にいること自体が、

重く感じられた。


日向は立ち上がる。

靴を履く。

理由は考えない。


扉を開けた先の夜が、

やけに広かった。


それで、走り出すのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ