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異世界介護士 スキル恩返しで生きていく  作者: くりょ


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6/11

六話 早々に家をでる。

ギュスターは手綱を握りながら、

道中、ふと優しい声で問いかけてきた。


「それで……お坊っちゃま。

その“介護士”というお仕事は……

一体、どこでなさるおつもりですか?」


俺は馬車の揺れに身を任せながら、静かに答えた。


「じいや。介護士はね――どこでだって必要とされる仕事だよ。

貴族の屋敷でも、村の外れでも、

人が生きている限り、支えを求める場所はあるんだ。」


そして少し照れくさそうに笑う。


「それと……“お坊っちゃま”はやめてほしいな。

なんだか偉そうでしょ?

僕のことは“リオン”って呼んで。」


その言葉に、ギュスターは驚いて目を見開いた。

これまでのリオンなら、決して言わなかったようなことだ。


「し、しかし……お坊っちゃまはお坊っちゃまでございますので……」


「じいや。」

俺はやわらかく微笑んで言った。


「介護士は、人の“上”に立つ仕事じゃない。

人の“隣”に立つ仕事なんだ。

もし上下関係を誇示するようになったら――

きっとこの仕事は、誰も幸せにできなくなる。」


その真っ直ぐな言葉に、ギュスターの胸が熱くなる。

そして少し間をおいて、再び問いかけた。


「……リオン。

わたしは“介護士”という仕事を初めて聞きました。

弱き者を支えるという点では……

私ども執事や侍女と似ているようにも思えますが、違うのでしょうか?」


俺は頷いて答えた。


「うん、少し違うかな。

介護士は、もう一人で生活できなくなった人たちの“手”になる仕事だ。

食べることも、歩くことも、眠ることも――

誰かの支えがないと生きられない人たちを笑顔にするんだ。

そこに、貴族も庶民も関係ない。」


ギュスターは静かに息をつき、

深く感銘を受けたように言葉を続けた。


「つまり……それは“恩返し”というお坊っちゃまのスキルにも、

関わっているということですか?」


俺は首を振った。


「“恩返し”ってスキルが、正直なんのことなのか全然わからないんだ。

でも少なくとも、戦ったり人を倒したりするための力じゃないと思う。

……僕にはそれくらいしかできないし、

でも――それを誇りに思ってる。」


その言葉に、ギュスターは深く胸を打たれた。


「……素晴らしいです。

ですが……そのような仕事をなさるとなると、

活動の場は貧しい地域になるかと。

収入面では……かなり厳しいのでは?」


俺は笑いながら言った。


「お金じゃないんだよ、じいや。

たとえば――家に介護が必要な人がいて、

家族の誰かが働きに出られないとする。

そんな家がたくさんあると思うんだ。

僕はその人たちが安心して働きに行けるように支えたり、

家に残る人を笑顔にして、また生きる力を取り戻してもらいたい。

……必要としてくれる人が、きっとどこかにいるから。」


ギュスターは深くうなずき、

やがて懐からひとつの袋を取り出した。


「こちらに、カルネ様からのお預かりものがございます。

“しばらくの生活を支えるように”と――」


袋の中には、金貨と宝石がぎっしりと詰まっていた。


俺はそれを見つめ、静かに微笑んだ。


「……そうか。

お母さんが支度金を……。

でも、これはなるべく使わないようにしないとね。

きっと、僕の力で生き抜いてみせる。」


ギュスターはその言葉に再び驚き、

思わず口を開いた。


「……ほんとうに、リオン様には驚かされてばかりです。」


俺は笑って肩をすくめた。


「それでじいや、仕事の依頼ってどこかで確認できないかな?」


「それでしたら……“冒険者ギルド”に登録なさるのがよろしいかと。

護衛や救援など、いくつかの依頼は介護士に似た内容もあります。」


「冒険者ギルドか……。

冒険をする気はないけど、きっと人と関わるには一番の窓口だね。

よし、さっそく登録しに行こう!」


「はい! 登録だけなら、なんの問題もありませんとも!」


ギュスターは、どこか自信に満ちた笑顔を浮かべていた。

――そのときの俺はまだ知らなかった。


この“老執事ギュスター”という男が、

どれほどとんでもない存在であるかを。



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