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異世界介護士 スキル恩返しで生きていく  作者: くりょ


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4/11

四話 介護士をやります。

部屋の扉の前で、じいやが静かに立っていた。

その優しい声を聞いた瞬間、胸の奥の緊張がゆるむ。


「リオンお坊っちゃま。お食事の準備が整いました。

皆さま、すでにお揃いでございます。」


「うん!! じいや、いつもありがとう! 一緒に行こう!」


そう言うと、じいやは穏やかに目を細めた。

その表情には、深い優しさと誇りがあった。


彼は理解していた。

――リオンは、この冷たい家の中で、自分にだけ心を許している。

それだけでなく、孤独と蔑みに晒されながらも、

前を向いて進もうとする強さを持っていることを。


「はい。それでは、お坊っちゃま。私のあとにおつきください。

……たとえ何が起ころうとも、じいやは――お坊っちゃまの味方ですぞ。」


その言葉に胸が熱くなり、思わず笑みがこぼれた。


「うん!! じいや!! ありがとう!!」


じいやの心は、その一言で深く震えた。

その小さな感謝が、どれほど彼の胸を打ったのか――

俺はまだ知らなかった。


* * *


じいやに案内され、長い大理石の廊下を歩く。

高くそびえる天井。壁には古びた絵画。

やがて重厚な扉の前に立つと、

そこには家の“格”を象徴するような空気が漂っていた。


扉が開かれ、食堂に足を踏み入れた瞬間――息を呑んだ。


長く伸びたテーブル。

整然と並ぶ銀食器と燭台。

静寂の中で、重みのある視線が一斉にこちらへ向けられる。


そこには――“家族”がいた。


鋭い眼光をもつ男。

この家の主、父親だろう。


その隣には、柔らかな表情をした女性。

きっとカルネ、この体の母親だ。


さらに、気品を纏った姉ニルネ。

冷静な目をした兄レオン。

そして、先ほど俺を嘲った妹。

――まだ名前は知らない。


俺は小さく息を呑み、恐る恐る席に着いた。


静寂を破ったのは、兄のレオンだった。


「よくも顔を出せたな。

いつもみたいに部屋で一人で食べればよかったものを……リオン。」


その言葉は鋭く、氷のように冷たい。

けれど俺は、まっすぐに答えた。


「はい……でも、みんなで食べたほうが……

きっと料理がおいしいと思ったんです。」


その瞬間、空気が止まった。

誰もが驚いたように息を呑み、

母カルネの瞳がわずかに潤んだ。


しかし――


「アハハハハ!!!」


甲高い笑い声が響いた。

それは妹だった。


「リオンがここで食べるなんて!

それじゃあ料理がまずくなるじゃない!!ねぇ、お父様!」


父親らしき男が重く口を開いた。


「ああ……。

リオン、どういうつもりだ?

誰もおまえの顔など見たくはないというのに。」


その言葉に、カルネが勢いよく立ち上がる。


「そんなこと言わないでください!!

リオンは……私にとっても、みんなにとっても大切な家族です!!」


だが、その想いに冷たい声が重なる。

ニルネが静かに口を開いた。


「お母様……お気持ちはわかります。

ですが、リオンはあまりにも怠惰です。

いたずらばかりで、家の名を汚してばかり。

残念ですが、私も――もう弟としての情はありません。」


レオンもそれに続くように言った。


「そうだ。

リオン、おまえ……リリナから聞いたぞ。

母様の庭に勝手に入ったそうだな?

まさか、荒らしたりはしていないだろうな?」


重苦しい沈黙。

その場の空気が、さらに冷え込んでいく――。


重苦しい空気が食堂を包んでいた。

俺は肩をすくめながら席に座り、テーブルの上の銀食器を見つめていた。


「リオン。」

兄レオンの冷たい声が響く。


「よくも顔を出せたな。

いつもみたいに、部屋でひとりで食べていればよかったものを。」


その言葉は刃のように鋭く、胸に突き刺さった。

けれど俺は、真っすぐに顔を上げて答えた。


「はい……でも、みんなで食べたほうが……

きっと料理が美味しいと思ったんです。」


一瞬、空気が止まる。

誰もが息を呑んだ。

母カルネの瞳が、かすかに揺れた。


――だが次の瞬間。


「アハハハハハ!!」


甲高い笑い声が響く。

妹のリリナだった。


「リオンがここで食べる!?

そんなの、食事がまずくなるじゃない! ねぇ、お父様!」


「……リオン。」

父親が重い声で口を開く。


「どういうつもりだ。

誰もおまえの顔など見たくはないというのに。」


その言葉に、カルネが勢いよく立ち上がる。


「そんなこと言わないでください!!

リオンは……私にとっても、家族にとっても大切な子です!!」


だが、その想いは冷たい言葉に遮られた。


「お母様。」

姉ニルネが静かに口を開く。

その瞳は冷えたガラスのようだった。


「お気持ちはわかります。

ですが、リオンは怠け者で、いたずらばかり。

家の名を汚してばかりです。

残念ですが、私はもう……弟としての情はありません。」


レオンも低く続ける。


「そうだ。リオン、おまえ――

リリナから聞いたぞ。

母様の庭に勝手に入ったそうだな?

まさか荒らしたりしてはいないだろうな?」


その言葉に俺の体がびくりと震えた。

その様子を見たニルネが冷たく言う。


「やっぱり……。今のうちに白状しなさい。

どうせすぐにバレるんだから。」


リリナも声を上げた。


「お母様!怒ってください!!

リオンはいつも迷惑ばっかりかけてるのよ!!

ほら!何したの!? 言いなさいよ!!」


俺は観念して、小さな声で言った。


「その……木陰で……用を足しました。」


――沈黙。


食堂全体が凍りついた。


そして父の怒号が轟いた。


「ふざけるな!!! あの庭で……!!

おまえ、なんてことをしたんだ!!!」


リリナは腹を抱えて笑い出した。


「アハハハハハ!!

ほんとに最低ね! 見た目だけじゃなくて、

中身まで下品なんだから!!」


レオンは怒りに満ちた目で俺を睨む。

「リオン……おまえというやつは……!」


ニルネは冷たく吐き捨てる。

「本当にどうしようもないわ。

リオン、今すぐ出ていきなさい。この場にいる資格はないわ。」


だが、母カルネだけは静かに、優しく言った。


「リオン……でも、偉いわ。

ちゃんと正直に言えたんだもの。」


その言葉に、リリナはさらに笑い転げる。


「お庭におしっこしただけで褒められるなんて!!

ほんとにおかしい!! アハハハ!!」


その笑い声が、胸に深く突き刺さる。

俺は息を詰まらせながらも、まっすぐに言った。


「……すみませんでした、お母様。

僕は……仕事をします。

だから……ここを出ていきます。」


その言葉に父が鼻で笑う。


「仕事だと?

戦闘の才能もない、

意味のわからん“恩返し”なんてスキルしか持たないおまえに、

いったい何ができる?」


俺はゆっくりと顔を上げ、静かに答えた。


「――介護士をやります。」


その瞬間。


食堂の空気が――

音を立てて、止まった

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