二話 突如始まるお決まりの転生
――気づけば、静寂だけがあった。
どれくらい眠っていたのかもわからない。
目を開けると、そこは見知らぬ景色。
一面に広がる花畑。
柔らかな風が頬をなで、あたたかな陽光が体を包む。
空気は澄んでいて、胸の奥まで優しく満たされた。
「……ここは、どこだ?」
ゆっくりと辺りを見回す。
鳥たちのさえずり、咲き乱れる花々。
どこか懐かしく、安心できる――そんな場所。
そのとき、俺は悟った。
――ああ、ここは“天国”というやつか。
俺は……死んだのだ。
その事実が、ゆっくりと、しかし確かに心の奥に落ちていった。
俺はゆっくりと辺りを歩き出した。
そのとき、ふと違和感を覚えた。
――体が、違う。
なぜなら、突然どうしようもなく尿意を感じたのだ。
「おいおい……ここ天国だよな? 天国でもトイレ行きたくなるのかよ……」
思わず自分にツッコミを入れる。
我慢できず、近くの木陰に駆け込んだ。
ズボンを下ろして、自分の“相棒”を見下ろした瞬間――
「……えっ!?」
そこにあったのは、間違いなく俺のものではなかった。
一瞬、頭が真っ白になる。
慌てて用を足し終え、息を荒くしながら体を確認する。
腹をさわると、ぷよぷよとした柔らかい肉が手に当たった。
腕もずっしりと重く、足取りは妙に鈍い。
少し歩いただけで、息が切れる。
「おかしい……どう考えてもおかしい……」
ここは天国のはずだ。なのに――この違和感。
それに、この体は――明らかに自分のじゃない。
鏡がなくてもわかる。
これは“太った少年”の体だった。
「だれ……? なんで……? ほんとに、ここ……天国なのか……?」
理解が追いつかず、足が震える。
そのとき――ぐぅぅぅ……と腹が鳴った。
「……は? お腹、すくのかよ? 天国で?!」
そう思った瞬間、ひとつの結論にたどり着く。
――ここは天国なんかじゃない。
これは……異世界だ。
全身が震え出した。
「ま、まさか……転生!? なら、俺にもチート能力があるはずだ!」
焦りながら叫んだ。
「スキル!!!」
その瞬間、目の前に青白く光る透明なプレートが浮かび上がった。
そこには、こう記されていた。
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名前:リオン・デアハート
スキル:恩返し
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俺はその場で凍りついた。
名前も知らない。
スキルの意味もまったくわからない。
ただ一つ、理解した。
――俺の人生は、もう元には戻れない。




