10話 マヨネーの実食
「さっき煮込んだリゥリに、これを少しつけて食べてみて。」
リオンが差し出した白いクリーム状の調味料を、マリネは恐る恐る指先で掬い、リゥリにそっとつけ、口へと運んだ。
――次の瞬間。
マリネの目が大きく見開かれた。
「こ……これは……!!?」
驚愕というより、衝撃に近い表情だった。
リオンも続けて、リゥリをマヨネーズに軽くつけてひと口。
「うん、うん……やっぱり合うと思った。」
満足げに頷くリオン。
マリネは震える声で言葉をこぼした。
「こんな……濃厚で、味わい深くて……
野菜の甘みが引き立つなんて……
り、リオンさん……いえ、リオン様は、普段からこんなものを召し上がっているんですか……?」
リオンは答えず、棚から香辛料をいくつか取り出して混ぜ合わせ、味を確かめる。
「うん。これなら味の幅も広がるし……
高カロリーも美味しく摂れる。
体力が落ちた人には、とてもいい調味料だと思うよ。」
そう言って、穏やかな声で続けた。
「マリネさん。
これは“マヨネー”って呼ばれている調味料なんだ。
たぶん、この世界ではまだ存在していない味だと思う。」
「ま、マヨネー……ですか?」
「うん。
よかったら、これを使ってみてほしい。
いろんな食材に合わせると、まったく違う楽しみ方ができるから。」
マリネは思わず胸に手を当て、小さく息をのむ。
「そ、そんな……!
こんな貴重なものを……本当に私たちが使ってしまっていいのでしょうか!??」
「もちろん。
僕の発明じゃないし……
美味しいものは、みんなで分け合ったほうがいいから。」
リオンはやわらかく微笑む。
「それと――
リゥリをもう少し柔らかくなるまで煮込んだものと、
さっきの野菜炒めの具材を細かく刻んだものを作ってもらえるかな?」
「わ、わかりました!!
すぐに用意します!!」
「ありがとう。」
リオンは軽く頭を下げ、静かに厨房を後にした。
残されたマリネは、手にした白い調味料を信じられないというように見つめながら、
しばらくその場に立ち尽くしていた。
――この小さな調味料が、
この宿の運命すら変えることになるとは、
そのとき誰ひとり気付いていなかった。




