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異世界介護士 スキル恩返しで生きていく  作者: くりょ


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九話 再現してみる

別の野菜も次々と刻まれ、

 フライパンに入れられ、香辛料とともに炒められる。


 じゅわっ――。

 立ちのぼる香りが、腹を刺激するほどに食欲をそそった。


 しばらくして、簡素ながらも美味しそうな料理が二品できあがった。


 ●リュリの煮物

 ●野菜の炒め物


「その……貴族様のお口に合うかわかりませんが……

 よろしければ食べてみてください。」

 妻が遠慮がちに差し出した皿を、リオンは笑って受け取る。

「だから僕は貴族じゃないって……。

 でも……本当にいい匂い。いただきます。」

 一口。

 ――優しい甘み。

 ――ほんのりした塩味。


 噛むほどに旨味が広がる、素朴で温かな味。


「……美味しいな、これ。」


 次に野菜炒めを口に含む。

 ――ピリッとした辛味。

 ――シャキシャキした食感。

 ――香辛料の刺激と野菜の甘みが絶妙に合わさっている。


「すごく……美味しいですね。」

 その一言に、妻は息を呑んだ。

「えっ……お口に合いましたか……?」

「はい。とても美味しいです。

 少なくとも……家で食べた料理より、ずっとね。」


 リオンはふと、家族との食事――あの地獄のような食卓を思い出した。

 罵声。

 嘲笑。

 不快な視線。

 “味”を感じるどころではなかったあの食事。

(……料理ってのは、味だけじゃない。

 “誰が作るか” “どんな気持ちで食べるか”――それが全部、味になる。)

 それを彼は、前世で痛いほど学んでいた。

 妻は胸に手を当て、震える声で言った。


「そ、そうですか……。

 そう仰っていただけて……本当に嬉しいです……」

「マリネさん、って呼んでいいですか?」

「は、はい……私の名前はマリネです。

 主人はダンと申します。」


 リオンはにこりと笑う。


「マリネさん。

 本当に美味しい料理をありがとう。

 あの……このリュリ以外にも、いくつか食材を使ってもいいかな?」


 そして、銀貨を一枚、そっと差し出した。


「えっ……こ、小銀貨じゃなくて……銀貨!?

 そ、そんな大金……!」

「場所を借りてるからね。

 それと……卵と、酸味のある調味料が欲しいんだ “ビネガー”って言えば伝わるかな?」

「ビネガーはわかりませんが……

 この“ビゥ”という調味料なら……」


 差し出された小瓶の液体を、リオンは指先に落とし、舐める。


「……ちょっと違うけど……まあ、十分。」

 卵と“ビゥ”をボウルに入れ、

 リオンは迷いなくかき混ぜ始めた。

 ――カチャカチャカチャ……

 空気を含ませるように、途切れず混ぜ続ける。

 やがて――

 黄色みを帯びた、白く濃厚なクリーム状のものが姿を現した。


 マリネは目を丸くした。

「こ、これは……?」


 リオンは微笑み、ボウルを見下ろしながら言った。

「――マヨネーだよ。

 この世界にはまだ無い味だ。」


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