凛音の焦りと、真哉の言えない本音
春の風が教室の窓を揺らす日、真哉はいつもの席に座りながら、少し落ち着かない気分を抱えていた。隣にはゆきはがいて、何気ない会話を弾ませている。
「真哉、この問題、一緒に考えようよ!」
ゆきはの明るい声に、真哉は少し戸惑いながらも笑顔で答える。
「うん、こうやるとこうなるね……」
一方、凛音はその様子を机越しに見つめる。心の奥に、じんわりとした焦りが広がる。
(なんで……?あんなに仲良く話して……私じゃダメなの……?)
授業中、凛音の注意はほとんど真哉に向いていた。手を挙げても、心ここにあらずで、答えるタイミングを逃す。友達が笑いながら質問しても、凛音には耳に入らない。
休み時間、凛音は意を決して真哉に声をかける。
「ねぇ、真哉……ちょっと話、いい?」
真哉はゆきはとの会話を中断し、少し戸惑いながらも頷く。
「うん……どうしたの?」
凛音は深呼吸をしてから、思い切って言った。
「最近、なんか……そっけないよね。私、何か悪いことした?」
真哉は唇を噛む。言葉にすれば、二人の関係が変わってしまうかもしれない――でも黙っていれば、凛音との距離はさらに広がってしまう。
「凛音……実は、言いにくいことがあって……」真哉は息を整える。
「なに?」凛音は目を大きく見開く。
「……僕、恋愛として君を好きになれないんだ」
凛音は一瞬、言葉を失った。胸の奥が冷たくなる。
「え……なにそれ……」
「ごめん……でも、友情としては君は誰よりも大事なんだ」
凛音は手元のノートをぎゅっと握る。涙が少しだけ頬を伝う。
「大事……でも、それって、私じゃだめなの?」
「そう……」真哉は視線を伏せたまま答える。
その日の放課後、凛音は一人で校庭に出た。桜の花びらが舞い、夕日のオレンジ色に染まる中で、心の中の不安と焦りが膨れ上がる。
「どうして……気づかなかったんだろう……」
一方、真哉は帰宅途中、頭の中でぐるぐると考えを巡らせていた。
「凛音を傷つけたくない……でも、このままだと僕自身も苦しい……」
その夜、凛音は枕を抱きしめながら、泣きそうになる自分を押さえる。
「私……どうしたらいいの……?」
翌日、学校で再びゆきはが笑顔で真哉に話しかける。
凛音はその様子を目にして、胸の奥がざわつく。
(あの子……真哉とこんなに自然に話して……)
昼休みには、凛音は友達に愚痴をこぼす。
「もう……私、どうしたらいいの……?」
友達は慰めつつも、心配そうに凛音を見守る。
放課後、凛音は勇気を振り絞って真哉と二人きりになる。
「ねぇ……私は、ただ大事なだけじゃダメなの……?」
真哉は目を伏せたまま答えられない。
この日から、二人の関係は以前のようには戻れないことを、二人とも無意識に感じていた。
友情と恋愛、焦りと葛藤。桜の花びらのように、二人の関係に小さな揺れが生まれ始めたのだった。




