好きな人に相応しいのは
あたしは、歩いて魔法学校に登校している。
「レインちゃん、おはよう」
ピンク色のボブヘアで、あたしより少し背の高い可愛いリリーちゃんがあたしに、挨拶をした。
「おはよう」
「あ、クリスくん、おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
あたしがリリーちゃんに挨拶してから、リリーちゃんが銀髪で容姿がイケメンのクリスくんに気づいて挨拶し、クリスくんも挨拶をして、あたしも挨拶をした。
「リリーさん、今日も可愛いね」
クリスくんにそう言われたリリーちゃんは、顔が赤くなってて、照れてるみたいだった。
「クリスくん、ありがとう」
そして、三人で魔法学校へ歩いていった。
「クリスくん、おはよう」
教室に入ると、身長がリリーちゃんより高く、クリスくんより低くて、長い金髪のセリアさんがそう言いながら、クリスくんに近寄ってきた。
「セリアさん、クリスくん好きなのかな?」
リリーちゃんがセリアさんをみて、そう言った。
「……わからない」
セリアさんはクリスくんが好きなのかもと、思ったことあるけど、実際どうなのかわからなくて、あたしはそう言った。
ほうきで飛ぶ魔法の授業を外でする時間になった。
「今から先生が手本をみせるから、しっかりみるんだぞ」
男らしい体をした先生がそう言って、ほうきで飛んだ。
「お前らもほうきで飛んでみろ」
先生がそう言うと、みんなが次々とほうきで飛んだ。
「飛べた」
あたしもやっとほうきで飛べた。
昼休みになった。
「リリーちゃん」
「何?」
「リリーちゃんは、クリスくんが好きなの?」
あたしは、リリーちゃんにそう聞いてみた。
「……うん、好きだよ」
「やっぱり」
「……レインちゃんもクリスくんが好きなんじゃないの?」
リリーちゃんが言った通り、あたしはクリスくんが好きだった。
「……気づいてたんだね。でも、いいの。クリスくんは、あたしよりリリーちゃんがいいと思うから」
好きな人に相応しいのは、あたしじゃなくて、リリーちゃんだと思う。
「……どうして、そう思うの?」
「クリスくん、リリーちゃんといる時は、あたしといる時より幸せそうだから」
「……そうかな?」
「リリーちゃん、クリスくんが好きなら応援するよ」
「……どうして? レインちゃんもクリスくんが好きなのに」
「リリーちゃんは、クリスくんを幸せにできると思うからだよ。あたしは、好きな人が幸せならそれでいいから」
「リリーさん、ちょっといいかしら」
そう言ったのは、不機嫌そうなセリアさんだった。
「何かな?」
リリーちゃんが首を傾げて、セリアさんにそう聞いた。
「リリーさんとふたりきりで、話したいからきなさい」
「……わかった」
セリアさんとリリーちゃんが教室を出ていってから、あたしはリリーちゃんが心配で、こっそりついていくと、ふたりは誰もいない教室に入った。
「あんたさあ、クリスくんとよく喋ってるけど、何様のつもり? 今日も昼食の時とか一緒だったし」
セリアさんは、リリーちゃんを睨みながらそう言った。
「それの何が悪いの?」
「あんた、生意気なのよ! どうして、クリスくんはあんたとばっかりいるのよ! あんたよりワタシのほうが美人なのに!」
セリアさんが怒鳴り声でそう言いながら、リリーちゃんの髪を引っ張った!
「痛い!」
「何してるの!?」
ふたりの様子をこっそりみて、話を聞いてたあたしは、我慢できなくなり、大声でそう言いながらその教室に入った。
「どうして、いるの? あんたには、関係無いんだから邪魔しないで!」
「放っておけないよ! リリーちゃんの髪を引っ張ったら、駄目だよ! セリアさん、容姿は悪くないかもしれないけど、性格ブスだよね。クリスくんはそんな人、好きじゃないと思う」
セリアさんは舌打ちして、その場を去った。
「レインちゃん、わたしを心配して、きてくれたんだよね?」
「うん」
「ありがとう。嬉しかった」
「……また、セリアさんがリリーちゃんをいじめようと、しなければいいけどね。先生に、さっきあった出来事を伝えないと」
「伝えても、何もしてくれないかもしれないけどね。セリアさんは偉い人の娘で、この魔法学校の人達は、その人に逆らえないらしいから」
「そうかもしれないけど、何もしないよりは、いいと思う」
先生に、セリアさんがリリーちゃんの髪を引っ張った事とかを伝えた。
「そう言われても何も出来ない」
先生はそう言うだけで、やっぱりダメみたい。
朝になり、今日もあたしは黒髪を結い、準備をし、家から出て魔法学校へ登校している。
「レインちゃん、おはよう」
リリーちゃんがあたしに、挨拶をした。
「おはよう」
あたしはリリーちゃんに挨拶し、リリーちゃんと魔法学校へ歩いていった。
教室に入り、リリーちゃんの机をみると、その机にぶりっ子とか、ビッチとか、書かれた落書きがあり、あたしは怒りが沸いてきた。
「どうしたの?」
今、きたばかりのクリスくんがそう聞き、リリーちゃんの机をみると、普段、笑顔のクリスくんから笑顔が消えた。
「どうして、こんな落書きがあるのかな?」
リリーちゃんが困り顔で、その机をみたままそう言った。
「誰が書いたの? もしかして、セリアさん?」
あたしは、不気味な笑顔で、リリーちゃんをみてたセリアさんに、苛々しながらそう聞いた。
「ハア? ワタシがやった証拠あるの? 勝手に決めつけられて、迷惑だわ」
「だって、セリアさん、昨日はリリーちゃんの髪を引っ張ってたし、疑いたくもなるよ」
「そ……それは、出鱈目よ!」
「どうして、嘘つくの? あたし、みてたから!」
「リリーさん、昨日、セリアさんに髪を引っ張られたの?」
「うん、そうなの。レインちゃんが言った通りだよ」
「セリアさん、どうして、リリーさんの髪を引っ張ったの? 落書きも君の仕業なの?」
クリスくんがセリアさんを睨みながら、そう聞いた。
「クリスくん、どうして、ワタシを睨むの? あいつら、ワタシを悪者にしようとして、出鱈目言ってるんだわ!」
「……リリーさんをいじめないで」
「……どうして、ワタシが悪いみたいになってるの!? クリスくん、騙されてるのよ! あの女のどこがいいの!?」
「……リリーさんは、とても優しくて魅力的なんだ。君とは、違ってね」
クリスくんがそう言うと、セリアさんは走って、その場を去った。
「落書きは、僕が消すよ」
「クリスくん、わたし、自分で落書き消せるよ」
「リリーさん、こんな落書きは、僕が全部消してしまいたいんだ」
「わかった。ありがとう」
クリスくんは、落書きを魔法で消した。
昼休みになると、リリーちゃんがあたしの近くにきた。
「……レインちゃん、ちょっと話したいんだけど、いいかな?」
「いいけど、何?」
「わたしとレインちゃん、どっちがクリスくんの幸せにとって、いいかはわからないと思うの」
「あたしは、リリーちゃんがいいと思う。クリスくんは、あたしとつき合わないよ。多分、クリスくんは、リリーちゃんが好きだと思うからね」
「どうして、そう思うの?」
「……クリスくんをみてると、そんな気がするからね。リリーちゃんがクリスくんに、告白したら上手くいくと思う」
「……そうかな? わたし、迷ってたけど、今日の放課後、校舎裏でクリスくんに告白するよ」
「じゃあ、あたし、こっそりみてもいいかな?」
「いいよ。じゃあ、校舎裏で待ち合わせしたいから、クリスくんに伝えなきゃね」
リリーちゃんがそう言って、クリスくんの近くまでいった。
「……クリスくん、今日の放課後、校舎裏で大事な話をしたいから、きてくれないかな?」
「……わかった。放課後、いくよ」
「リリーちゃん、応援するよ」
「ありがとう」
リリーちゃんが笑顔で、あたしにそう言った。
放課後、リリーちゃんとクリスくんが校舎裏にいて、あたしは、こっそりふたりの様子をみてる。
「……わたし、クリスくんが……好きなの。だから、わたしと……つき合ってくれないかな?」
「……いいよ。僕、リリーさんとつき合いたい」
「本当!?」
「本当だよ」
「で……でも、わたしでいいの?」
「リリーさんがいいんだ」
クリスくんがそう言って、リリーちゃんに抱きついた。
「ちょっと驚いたよ」
「……前から、こうしてみたかったんだ。嫌じゃないかな?」
「嫌じゃない。クリスくんがわたしを抱き締めてくれて、幸せだよ」
クリスくんもリリーちゃんも互いを抱き締めてて、幸せそうでよかった。




