表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「処刑の夢」

作者: 由羽
掲載日:2025/11/04

前書きは、特にありません。

動悸をおぼえながらに起床する夢は、これまでにも幾度かみた。先日みた夢は、ここ数年で殊に印象深いものであったから、こうやって書き残しておきたい。


処刑の夢である。

大きな広場があって、広場から丘に伸びた長い階段に、人々が列をなしている。


夕方の光景であったか。

しかし、西陽はなかった。

それとなく、夕方であろうと考えていた。


列に加わる。

急かされて並んだわけではない。

見上げると、木製の絞首台が、丘の各地点に並べられており、若い女性の刑が今なお、執行されようとしている。


執行が済めば、列はすすむ。

次第に視界は開けて、絞首台の手前まできた。


若い男の刑が、執行されるタイミングである。

私の前にもう一名(これも若い男)並んでいる。


このあたりでそれとなく、罪が分かってきた。

政府軍と反政府軍という言葉が浮かんでおり、私は政府軍の残党として処刑されるようなのである。


加えてこの時、ドストエフスキーの処刑直前に関する一文や、巣鴨プリズンに関する一文が浮かんでいた。

ドストエフスキーは銃殺刑の直前で、恩赦をもらい助かる。

巣鴨プリズンについては、ここ最近読んでいる本であった。死刑囚の誰しもが、堂々として取り乱しはしなかったと。教誨師であった著者の言葉にあったのだ。


青年の刑が執行される。

どかんと床が落ちる。宙吊りの青年はもがきながら、左右の木組みを掴まんとしている。

その悲惨な姿をみて、私の前に並んだ青年が手を差し入れた。木組みには空間があったから、その空間から差し入れたのである。


差し出された手に足をのせようと、青年は必死だ。


すると、兵服姿の男が現れる。

彼が、手を差し出した青年をあしらってしまった。

果たして、刑は執行されてしまったのである。

※この兵士はアジア人の面貌であった。


さて、私の前に並んでいた青年(あしらわれた青年)の姿は消えており、執行の順番はまわってきた。

わたしは、実にありきたりなことを考えていた。

苦しいのだろうか。瞬時にいけるのだろうか、と。

しかし、先ほどの光景が焼き付いていたからか、瞬時にいけそうにもないことは、確信していた。


溶けた飴のように伸びた生の時間。

その時間が、一瞬にして断ち切られるという、生々しい事実。


一つの絞首台を、二名の兵士が管理している。

その内のひとり、帳簿をつけている兵士とすれ違い、絞首台の階段を昇ろうとする時、ある考えがわたしを襲った。

本日死ぬということを、父母に伝えていない。そんな、想念であった。

この考えに侵されるや、これまでにない恐怖をおぼえる。父母に伝えずに死んでしまうと、いったい誰が父母に、私の死を知らせるというのだろう。

よって、帳簿をつけている兵士に、直談判してみた。


「父母に伝えたい。いまから死ぬということを」


いくつか言葉を交わしたが、回答はあっけなかった。


「それなら、伝えてくるといい」


皆が並ぶ通路のわきに設けられた、小さな、頼りない階段を駆け下りていく。左右には痩せた雑木林。林間から、陽に照らされた住宅街の景色がちらつく。


中途までくると、父が、去年死んだ犬と散歩をしていた。わたしと、父と、犬とで階段を降り終え、元居た広場に戻る。そうして、父に伝える。


「政府軍の人間として、これから処刑されるらしい」


父は落ち着いて、私の話しを聞いていた。

ここで、夢は終わったのだ。

あとがきは、特にありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ