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第9話 似た者同士?

「ねぇ、なんで私の方をジロジロ見たの?」


 ジュリアーノお嬢様は校舎の裏の人気のない場所にマリーを呼んだ。ついでにお嬢様の友達(都合のいい関係)を呼んで、彼女を囲うように立っていた。


 一人はレッドべーカーと言ってピンク色のおかっぱ頭をしている。もう一人はグリナールという名前白いロングヘアの子だった。二人ともこの学園に入学してからの悪友らしく、こうして自分達の気に食わない相手をいじめるのを楽しんでいる。


 マリーは猛獣に追い込まれた小動物みたいに震えていた。


「な、何のことですか?」

「とぼけんじゃねーよー! ジュリアーノさんがルーリ王子とイチャイチャ……ゴホン、話している時にお前の視線を感じたんだよー!」


 レッドベーカーが八重歯をちらつかせながら睨んでいた。


「ひひひひ!」


 グリナールは笑い声でしかコミュニケーションを取らないので、いつもレッドベーカーの後に感嘆符のようにくっついて話している。


 マリーは「見てなんかいません!」首を振っていた。すると、お嬢様の手から小さな火が出た。


「その無駄に綺麗な髪を燃やされたくなかったらさっさと白状することね」


 お嬢様の目は本気だった。それを感じ取ったのだろう、マリーは極寒にいるかのごとく震えていた。


 私は少し離れたベンチに腰をかけながらサンドイッチを食べた。お嬢様が友人達と戯れている時間は私にとっては貴重なランチタイムだった。


 ふと空を見上げてみると、ほうきに乗った魔法使いがあっちこっちで浮遊していた。恐らく『晒し首』の活動が激しくなっているので見張りが強化されたのだろう。この学園は貴族が八割平民が二割と貴族の子供の割合が高い。だが、学園の外は厳しく見張っていても中までの監視は怠っているらしく、間違いなくイジメを目撃しているはずなのに変わらず巡回していた。


 私の横にはお嬢様専用のお弁当がある。あの予言に備えて自分で作った。できれば一緒に食べたいのだが、問いただしている最中なので声をかけられない。早くしないとお昼休みが終わってしまう。


 残り二十分ぐらいになったら止めに入ろうかなと思っていると、どこからともなく怒号が飛んできた。


「てめぇら、なにしてんだ!」


 お嬢様もマリーも一斉に同じ方を見た。高身長で髪がボサボサの男が狼のごとく俊敏に駆け寄り、マリーを守るように立ちはだかった。


「はぁ? 私はただ質問してただけよ。ねぇ?」


 お嬢様が悪友達の方を見ると、合わせるように相槌を打っていた。


「あぁ? んなわけ、ねぇだろっ!」


 彼はお嬢様に怯えず、むしろ攻めようとする勢いだった。お嬢様も負けじと「あなたこそ、急に出てきてなに? この子と付き合ってるの?」と嘲るように言った。


「てめぇ……馬鹿にするのもいい加減に」

「やめて、ローガ!」


 今にも噛みつきそうな勢いの彼にマリーが止めに入った。


「もういいから。私は大丈夫だから。ねっ、落ち着いて」

「……分かった」


 まるで荒れ狂う獣をなだめるかのように穏やかに言うと、さっきまで全身の毛が逆立ってそうな男が大人しくなった。

 

 マリーのローガに対する話し方から推察すると、昔から顔馴染みのある関係なのだろう。


「ふんっ、今日の所は勘弁してあげるわ」


 思わぬ乱入者にお嬢様はこれ以上戯れるのは危険だと感じたのだろう、悪友達とランチを食べようと言って去ろうとした。


 私もお嬢様のお弁当を持って立ち去ろうとしたが、「おい」とローガに声をかけられてしまった。面倒臭いなと思いつつ「何でしょうか」と応じる事にした。


「お前、近くにいたくせになんで助けなかった?」

「なぜ助けないといけないんです?」

「なっ、お前……人の心はないのか?!」

「失礼ですね。人並みにはありますよ。あなたの方こそ、どうして彼女をそんなに守ろうとしているのですか?」

「それは……幼馴染だからだ」


 幼馴染と答えるまでに若干間が空いていた。恐らく彼はマリーに気があるのだろう。もしかしたら彼は私と同じような境遇なのかもしれない。お互い主に恋をし守る兵士。


「スカーレット! なにお喋りしてるの?! 早く来なさい!」

「今参ります! では、失礼します」


 お嬢様から召集命令が来たので急いで駆け寄ろうとしたが、ローガは「お前、あいつらの仲間だったのか?」と聞いた。


「えぇ、お嬢様の付き人です」

「そうか。だったら、お前のご主人様に伝えろ。今度マリーの身体に傷をつけるような真似をしたらただじゃおかないぞってな」

「私の方こそ、お嬢様にもし危害を加えたら承知いたしませんのであしからず」


 私は鋭く睨みつけたが、ローガは全く怯むどころか同じように眼光を鋭くさせた。互いに恋する主を守るという使命感に燃えているのだろう。


「スカーレット! 早く!」


 ジュリアーノお嬢様が今にも噴火しそうな勢いで呼ばれたので、一礼だけして駆けていった。ローガが私の背中を睨みつけているのは感じていた。

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