表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/39

第25話 お嬢様の救出

 私は枝の折れた木を見て静止した。急停止に背後から付いてきた王子と馬は(いなな)いていた。


「どうしたんですか。急に立ち止まって」

「この枝は森の小屋が近い合図なんです」

「なるほど。じゃあ、徒歩で行ったほうが良さそうですね」


 私とルーリ王子は馬を適当な場所で停めておくと、慎重に進みながら小屋へと目指した。幸いな事に木々が多いため、そこに身を隠して進む事ができた。


 そうこうしていると、お目当ての小屋に到着した。木造建てのシンプルな造りで、そこそこ大きめだった。周囲には蝶の仮面を被った五人の暗殺者が見回りをしていた。手にはボウガン、背中には矢筒を背負っている。


 私もボウガンに矢をセットすると、ルーリ王子に「あなたは奴らの注意を引きつけてください」と頼んだ。王子は「え?!」と一瞬戸惑ったが、すぐに頷いた。


「おーーーい! 助けに来たぞーーー!!」


 王子はそう叫びながら全速力で走って行った。当然気づいた見回りの三人が追いかけていく。残り二人になったので、私は俊敏に木々を移動しながら奴らの元へ近づいていった。


 まず最初の一人が背を向けた瞬間に一発射った。見事命中し「うっ」と声を漏らした後、バタンと倒れて行った。私はボウガンに矢を装填(そうてん)して倒れている暗殺者に近づいた。


「おい、どうしたあっ、がっ?!」


 もう一人が異変に気づいて来たので、すぐに立ち上がって発射した。矢は奴の心臓部分に突き刺さり、仰向けに倒れた。


 王子はたぶん何とかなるだろうと思い、小屋まで接近した。窓の方を覗き込んでみると、五人くらい蝶の仮面を被った暗殺者が椅子に縛り付けられているお嬢様を囲んでいた。


 お嬢様は縄で口を塞がれているが、眼光鋭くさせて奴らを睨んでいた。まだ外の異変には気づいていない様子だった。


 今度はボウガンを棄て、近距離武器に持ち替えた。両手に刃渡り十センチ以上の切れ味抜群のナイフを持って忍び足で近づいた。


「動くな」


 すると、背後から男の声が聞こえた。見張りが王子を殺して帰ってきたのかと思ったが、気配で見張りとは違う雰囲気を感じた。恐らく私が見張りの二人を倒した時に中にいた五人の暗殺者達のうちの一人が様子を見に来たのだろう。


「武器を捨てろ」


 恐らく奴はボウガンを持っているのだろう。私は素直に両手のナイフを落とした。


「両手を頭の上に抱えてこっちを向け」


 言われた通りに後頭部を手のひらに乗せて振り返った。その瞬間、私は両足の靴に仕込んでおいた刃を出して、暗殺者を切りつけた。不意を突かれた蝶の仮面の暗殺者はは「グアッ」と前屈みになった。が、すぐに持ち直しボウガンの矢を発射させようとした。


 その前に足でボウガンを飛ばして素手だけにすると、両手を地面に付けて逆さになり、両脚を暗殺者に挟み込ませた。こんな事もあろうかとズボンにしてよかった。


 そして、下半身で抱きかかえたまま宙返りして奴の頭頂部を激突させた。強打した暗殺者は首の骨を折ったのか、だらしなく舌を出して悶絶していた。


 両脚を離してナイフを拾った。再び窓から様子を伺おうとした瞬間、誰かが突き破ってきた。


「ひしゃっはああああああ!!!」


 奇怪な声を上げて飛び出してきた暗殺者は両手に鉤爪(かぎづめ)を付けていた。爪に血の跡のようなものがあったので、パルミジャーナ公爵婦人の腹に文字を書いたのは彼の仕業だろう。


 私が両手にナイフを持って構えながら距離を取っていると、背後から殺気を感じたので横に逸れるように転がった。さっきまで立っていた場所に巨大なハンマーが落ちた。それを持っていたのは筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の大男で面長な顔だからか、蝶の仮面のサイズが合っていなかった。


 ハンマー男と鉤爪男に挟まれた私は二人にナイフを突きつけながら様子を伺った。


 すると、小屋から二人の暗殺者がお嬢様を連れて小走りで向かっているのが見えた。


「お嬢様!」


 私が駆け寄ろうとすると、鉤爪男が「いかせねぇっ!!」と叫んで鋭い爪で引っ掻いてきた。ひらりとかわしたが、そこに大男のハンマーが迫ってくる。間一髪避けると、転がるよう鉤爪男がすかさず執拗いぐらいに何度も突いてきたので、転がって串刺しを免れた。


「ひしゃはぁあああ!! やるじゃねぇかよっ! さすがガーテツを殺した奴だけあるなっ!」


 鉤爪男はガチガチと爪を鳴らしながら私との対戦を喜んでいた。どうやら私の事を知っているらしい。


「こいつを、ぶ、ぶったおせば、ボスに褒められる」


 大男はぎこちない喋り方でハンマーを持ち上げた。ガーテツは自分の事をリーダーだと言っていたが、彼の他に夜の蝶をまとめるリーダーがいるらしい。恐らくお嬢様を小屋から連れて行った二人のうちのどちらか、あるいは別の人の可能性もある。


 まぁ、今はボスが誰とかどうでもいい。一刻も早くお嬢様を救い出さないと。そのためにこいつらを倒さないと。


 だが、奴らもプロの暗殺者だけあって、私と絶妙な距離を保っていた。私は二人をどちらを倒うかと考えながらナイフをしまった。代わりにマッチを取り出して火を付けた。二人とも不思議そうに私の行動を見ていた。


 そして、ダイナマイトに火を付けると、大男に向かって投げた。


「お、おぉっ?! こ、これは、ふんっ!」


 しかし、大男はハンマーで爆弾をキャッチすると、そのまま私の方に投げ返してきた。私はサッと避けると今度は鉤爪男が危険な目にあう事になった。


「わ、わわわっ?! ちょっ、くんなっ!」


 鉤爪男も負けじと鉄の爪で弾いて私の方に向けた。すかさず宙返りでダイナマイトを蹴った。爆弾はハンマー男の方に向かい、ちょうど辿り着いた時に爆破した。

 

 爆風で吹っ飛んだが、空中で数回回転して着地した。鉤爪男は木が折れるほどぶつかっていた。


「あ……が……」


 ハンマー男は上半身を焦げ炭みたいに黒くさせた後、仰向けに倒れた。その拍子に地響きが起こり、森の動物が逃げ出していた。


「てめぇ、よくも俺の相棒を!」


 仲間を殺されて激怒した鉤爪男が俊敏に爪を振りかざした。私は両手にナイフを持ち替えて十字で受け止めた。


 森閑(しんかん)とした空間に双方の金属の激しくぶつかり合う高音が響きわたった。鉤爪男は私の全身を傷つけようと躍起になっていたが、自分は冷静に反撃のチャンスを伺っていた。


「おら、おら、おら、おらぁっ!」


 鉤爪男の猛撃は凄まじく少しずつ後退していった。が、靴に仕掛けた刃を蹴り上げるとから鉤爪男は狼狽えていた。その瞬間、私はナイフを投げた。鉤爪男の肩にあたり、悶絶した声が聞こえた。すかさず仕込み刃で顔を蹴った。仮面が剥がれ、鼻から大量に血が出ていた。


 片手で反撃を試みるが、速度が遅くなったので受け止めて片腕を折った。断末魔みたいな悲鳴が響きわたった後、もう片方の手で奴の眉間に刃を刺した。


 鉤爪男は目玉が飛び出るほど見開いて寄り掛かってきた。思いっきり突き放すと、鉤爪男は立ち上がる事なく倒れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ