表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けのレイディアント・エンダー  作者: 灰鉄蝸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/21

エピローグ「永遠の誓い」







――世界は変わっていた。




 二〇〇〇年後の地球を歩く東雲ツルギは、常夏の故郷――メガフロートによる海洋都市になっていて、ほとんど原形を留めていない――を歩いていた。

 まるで異世界に迷い込んだような浮遊感は、二〇〇〇年前、西暦二一二〇年の冬と同じような感覚だ。


 土地のにおいも景色も、何もかも違うというのに。

 それでも感慨深くなってしまうのは、彼が抱いている感傷のせいだった。

 自分は戻ってきたのだ。

 二五〇万光年の彼方から、生まれ故郷まで。


 空を見上げる。

 泣きそうなぐらいに澄んだ黎明の空。あの日あのとき、西暦二〇二〇年のそれと変わらない色。

 早朝のせいか、人気はほとんどなかった。人工的な丘陵地帯が作られた海浜公園で、しばらくぼけーっとしていると――ぽんぽん、と肩を叩かれる。

 エンダーである。

 角ある少女はいつものように微笑んでいる。


「生まれ故郷は満喫できましたか?」


「ああ、たっぷりとね」


 気を遣われているのがわかったから、ツルギは不器用に微笑み返した。感傷が尽きることはないけれど、時間は有限だった。極東に滞在している地球帝国の有力者との会談が終わったら、次は火星までひとっ飛びしなければいけない。


 巡礼船〈光輝号〉は幸いにも無傷だった――水星の衛星軌道上を無人航行しているところをパトロール艦に発見され、エンダーに返却されたのである――ため、太陽系内の移動には不自由しないのだ。

 そっと視線をエンダーに合わせた。

 青みがかった銀髪の少女が、琥珀色の瞳に彼の姿を映している。

 ようやく決心が付いて、東雲ツルギはゆっくりと口を開いた。


「……最初に会ったころ、君と約束しただろう? 夢ができたら君に話すって」


「見つかったのですか……?」


 何かを恐れるように、エンダーはおずおずと彼の顔を見つめた。生きる理由ができたら、ツルギがどこかに行ってしまうと恐れているようだった。

 そこまで彼女に想われているのが嬉しかった。

 東雲ツルギは幸せものだと思う。だから、はっきり伝えることにした。

 すうっと息を吸い込んで、目を閉じて。




「――僕は君の隣にいる。ずっと、君の味方でいる。それが、僕の新しい夢だ」




 時間が止まったみたいに、無音の時間が続いた。悪戯が失敗した子供みたいな気持ちになって、恐る恐るまぶたを開く。

 すると、そこには。

 涙が。


「え――」


 エンダー・カレルレヤの白く透き通るような頬を、一筋の雫が伝い落ちていた。人間を模倣したシェオルグの進化の果ては、感情表現のために涙を流すというコミュニケーションの極致だった。


 それがどれほど長く過酷な旅路の果ての収斂なのか、東雲ツルギは知らない。

 少女の抱えていた永劫の孤独など、彼は知りもしない。

 それでもこう思ったのだ。


「約束する。エンダー・カレルレヤ……僕は、君のために戦おう」


「……あなたは、本当に……古くさい言い回ししかできないのですか」


「ああ」


 そっと彼女の身体を抱きしめた。

 折れそうなぐらいに華奢で細身の少女の身体は、人間とは違う手触りがした。けれど柔らかであたたかで、確かに生命のにおいがした。


 たとえ自分がアカシャ・セルの塊で、エンダーが〈禍つ光〉の末裔なのだとしても――目の前の少女を愛おしく思う気持ちは、嘘ではないと思えた。

 永遠の少女の喉から、こいねがうような言葉があふれた。




「幾久しく……よろしくお願いします、東雲ツルギ」




 エンダーの面差しを見た刹那、時間が止まったみたいな気持ちになった。

 何故なら、あまりにも彼女の笑顔が綺麗だったから。








――それを永遠にしたくて、不死の少年は目を閉じた。


























これにて終幕です。

お読みいただきありがとうございました。

感想・評価などいただけると…よろこびます!!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ