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終局黎明  作者: さたかひ
8/10

行方



 崩れた瓦礫の間を進むと、空気に微かな焦げ臭さと血の匂いが混ざった。

 教師たちが必死に生徒を引き起こし、治癒魔法を施している。泣き声、怒鳴り声、そして魔法光の瞬きが、さっきまで平穏だった場所を別世界のように変えていた。


「おい、そこの君——迅雷だな?」

 鋭い声に振り向くと、間花先生が血のついた袖を気にも留めずこちらへ歩いてきていた。その目にはいつもの余裕はなく、冷えた光だけが宿っている。


「無事だったか。……何があったか話せるか?」


 問いは早かった。救助よりも先に聞き出さねばならないほど、事態は切迫しているのだろう。俺は短く頷き、鎧の男を見た時のことをできる限り正確に話した。


「……全身鎧で、声は低く……金属の板のような物を拾っていた。紋様があった……」


 俺の言葉を聞いた瞬間、間花先生の瞳が一瞬だけ揺れた。


「紋様の形は覚えているか?」

「……少し、こう……魔法陣の一部のような感じで....」

「それ以上はいい」


 俺が言い切る前に、間花先生は制するように言った。その表情は何かを知っている者のそれ


 そして、間花先生は一度だけ俺を見た。

「今聞いたことは、誰にも話すな。特に生徒には絶対だ」


 その声は低く、鋼のように固い。従わざるを得ない圧があった。


 それから俺は医療班の方へ回され、軽い検査を受けた。怪我は擦り傷程度だったが、周囲には意識を失った生徒たちが並べられている。翔や俊輔、こうたの姿もあった。皆、命はあるがまだ目を覚まさない。


 胸の奥がざわつく。あの鎧の男は何をしにきたのか、あの金属の板のようなものはなんなのか。


 救助作業の合間、教師たちが密かに地面の魔法陣跡を調べていた。

 近くを通った瞬間、小声のやり取りが耳に入る。


「転移魔法だな……だが、やつらはどうしてこれを中に仕掛けることができた?」

「普通に考えればこの中に共謀犯がいるとしか……」


 俺は黙っていたが、心の中では疑問が渦を巻いていた。

 ——鎧の男は何を奪った?

 ——なぜ今、この学園を狙った?


 翔たちが目を覚ましても、俺は答えを得ることはできないだろう。そしてこの件に首を突っ込めばもう後戻りはできない。そんな気がした。


 救助の喧騒の中、冷たい風が吹き抜けた。

 その風は、まるで遠くから何者かがまだこちらを見ているように感じられた。

次回から新たな章が始まります

あと異世界ものの小説も企画が進行しています楽しみに待っててください

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