何度目
――今より遥か昔、この星では核戦争が勃発した。原因は不明。
その結果、人口の約六割が死亡し、文明は壊滅的な打撃を受けた。
わずかに生き残った人類は、長い年月をかけて再び社会を築き上げた。
そしてこの時代には、かつて存在しなかった二つの力――魔力と能力が当たり前のように存在している。
それは、子どもが夢見る「魔法のある日常」を現実のものとした。
「あー……腹減ったぁ……」
俺の名前は迅雷。中学三年生だ。
「お前はいつもそれだな」
隣で笑ったのは優。中学からの友達だ。
「何も変わらない日常が一番いいだろ」
そう言って机に突っ伏した瞬間、チャイムが鳴った。
「やべ、準備してねぇ!」
慌てて荷物を引っ掴み、優は走り去っていく。
授業が始まったが、集中できない。
後ろの席から、ひそひそ声が耳に入ってくる。
「勉強なんてしなくても魔術師になるんだしやんなくていいだろ」
魔術師――それは多くの人が憧れ、そして挫折する職業だ。
高校に上がる頃には、自分の進路を現実的に決める者がほとんどになる。
何事もなく一日が終わり、優と途中まで帰る。
赤く染まった空が、やがて群青に変わり、星が瞬き始める。
「魔術師かぁ……」
幼い頃は自分も目指していた。だが才能はなく、努力だけで終わった。
この世界には魔力と能力というものがある。魔力は誰にでも扱えるが能力は個人差がある
ちなみに俺の能力は魔力鑑定。名前だけ聞けば強そうだが、実際は相手のおおまかな魔力量が分かる程度。
「……明日からジョギングやめようかな」
ぼそりと呟いた、その時。
「やっと見つけた.....」
背後から声がした。
振り返ると、黒いフードの人物が立っていて何もない空間から魔獣が出現させ、こちらへと襲いかからせた。
「――っ!」
声にならない悲鳴。
本能が「逃げろ」と告げ、全力で走るが、魔獣は一瞬で距離を詰めてきた。
「……どうして……」
その刹那、母の言葉が脳裏をよぎる。
『強さってのはね、力のことじゃなく心のことを言うと思うの。だから迅雷は心が強く優しい人になってね』
振り下ろされた爪はわずかに逸れ、右腕を掠めた
「勝てるか分からないけど……やるしかない!」
俺は魔力鑑定を発動し、魔獣の核を探す。
魔獣には第二の心臓とも呼ばれる核があり、そこを破壊すれば絶命する。
「……見えた!」
左手に魔力を集中させ、一気に放つ。
避けられるかと思いきや、魔獣はなぜか回避せず、そのまま核を撃ち抜かれた。
巨体が崩れ落ち、俺は大きく息を吐く。
「疲れた……帰って寝よ」
カバンを拾い上げ、何事もなかったかのように帰路につく。
この時、黒いフードの人物が既に姿を消していたことには気づかなかった。
――二時間後。
「やっぱり……なんですかね、これ?」
現場を調べていた魔術師の一人が首を傾げる。
「現れた場所もおかしいし、なぜこんな住宅街で倒れているのかも分からない」
探知魔法をすり抜けて現れた理由も不明だ。
「それに東の方にも魔獣の死体が一つ。一体何が起きてるんだか...」
少し頷いた後、後ろから声がした
「もっとも大寺なのは、この魔獣を倒した者が誰かと言うことなのだがな..」
もし魔術師ならば、報告が入るはず。だがそれはない。
つまりこれらの2匹を倒したのは、この周辺に住む一般人の可能性が高い。
「その人物が見つかったら……どうします?」
「感謝と――勧誘だな」
初めて描いたので色々おかしいところがあると思いますがこれから頑張って投稿していくんでよろしくお願いします
(異世界転生とかではないよ)




