5.宴の始まり
さて、今日はついにお兄様達の帰省する日…つまり、宴の日だ。
朝早くから湯浴みをして、ドレスを着替えて、髪を整えて…正直、宴が始まるまでのこの時間がいちばん大変なのよね。
小さくため息をつけば、どうかされましたか、と侍女に尋ねられる。
なんでもないわ、と首を横に降れば気を引きしめる。
私より早く起きて準備をしてくれる彼女たちの前で、憂鬱な顔なんてしてはいけないもの。
キリッと表情を引き締めれば、なんだか侍女が微笑ましく見てくる…なんでかしら?
首を傾げれば、扉のノック音が聞こえた。
「はぁい」
声をあげれば、第二王女殿下がお見えです、と衛兵の声が聞こえた。
モモってばもう準備が出来たのかしら。
許可を出し、入室してもらえばそこには可愛い自慢の妹の姿が。
「お姉様っ、どうですか??」
その場でくるりと一周して見せられれば、思わず感嘆の声が上がる。
「とても素敵よ、モモ。やはりそのドレスにして正解ね」
「はい、お姉様のおかげです…っと、いけない。お母さまから、そろそろホールに来るようにと先程言われたのでお伝えに来ました」
時計を見れば、確かにそろそろ部屋を出なければいけない時刻だ。
「そうね。もう準備も終わるわ」
久しぶりに会うお兄様とスミレ様。
そして、隣国の王子様方。
準備も招待客への挨拶は大変だけど、楽しみなことには変わりはない。
モモと共に自室を出ればフロアへ向かうため階段を下りる。
ふと、窓の外を見れば遠くには綺麗な青空に海が映えている。
城下に目を向ければ、広がるのは平和な王国の姿。
「お姉様、どうかしましたか?」
少し、惚けていたらしい。いいえ、と笑いかければ再び歩みを進める。
__さあ、始めよう。
宴の、そしてベレスフォード王国の物語を。