3.宴の準備、そして…
お兄様たちの帰省の報告から数日…
場内は右へ左への大騒ぎだった。まあ…王族である私たちにできることは少なく、確認作業だとか招待状の作成くらいだったけど。
やはり、帝国の王族が来るということもあり招待状を送った貴族のほとんどが参加を表明していた。
そして…
「お、お姉さま。これっておかしくないですか?」
私の自室では、ドレスのファッションショーをするモモの姿があった。
恋する乙女は大変だ。
「私はさっきのドレスよりも今のドレスのほうがモモに似合うと思うな」
先ほどのドレスは華やかな桃色。少し豪華すぎる気がする。
今着ているのは淡い桃色。
今回の主役はお兄様たちだし、控えめなくらいがちょうどいい。
ちなみに、私のドレスは淡い紺色だ。あまり派手なのは苦手だから…
「なら、これにします!お姉さまは落ち着きすぎると思いますが…だけど、紺色も素敵です!」
ありがとう、そう伝えればモモの笑顔はさらに華やいだ。
うん、やはり私の妹は世界一可愛い。お嫁に出すのはさみしいから嫌だけど…モモの幸せな婚姻が政治的なものでなく、恋愛結婚であってほしいと思うのは姉心だろう。
「そうだ、モモ。お母様とも話したんだけど…」
国賓である皇太子、王子への贈り物についてだ。
普段は女王、王配が決めているが今回は私の提案で姉妹で選ぶことになった。
せっかくだから、恋する妹に協力したい。
「私は第二王子に、モモには皇太子への贈り物を選ぼうと…」
「え、お姉さまが皇太子への贈り物ではないんですか!?」
いつもは私を立ててくれるモモが珍しく私の発言に言葉を重ねる。
「ええ。お母様からの許可はもらってるわ」
そう伝えれば、モモの頬が赤く染まる。
「なにがいいですかねっ」
何でもないように話しているが、緊張とうれしさを隠せていないようだ。
「そうね…私はネクタイかカフスボタンにしようと思ってるけど…」
私は二人の顔を思い浮かべながら話す。
皇太子は皇帝陛下に似た、金髪に碧眼。第二王子は皇后陛下に似た黒髪に紅瞳。
とても整った顔立ちをしている。
第二王子とは一年に一度ほどしか会わないが、昨年会った際はいままで私たちと同じくらいだった背丈が伸び、少し追い抜かされていた。
それがどこか悔しく思えた気がした。
「さ、あとは頑張って決めなさいね。私はそろそろ授業が始まるから」
この国では、王位継承者とほかの王族の教育内容が少し異なる、らしい。
断言できないのは、モモが何を習っているのかは聞いたことがないから。
私がモモの授業内容を聞く簿は構わないが、モモは継承権を持つ私の授業内容を聞いてはいけない。
片方だけが聞くのは不公平だから、ということでお母様やモモと話し合ったことだ。
これに関しては、モモも納得してくれている。
モモが退室すると、入れ替わるように教師が入ってきた。
確かこれからの時間は子供の授かり方についてだ。
…そして、授業が終わるころには私の顔は真っ赤になっていた。
教師は私の反応に笑顔を見せながら退室していったけど…世の中にはまだ知らないことがまだあるみたいだ。