2.帰省の報告
「え、お兄様たちが?」
その話を聞いたのは、昼食の時だ。
お母さまがそういえば、と前置きをして話してくれた。
「ええ。帝国の学園も夏季休業に入りますからね。今回の長期休暇はバイオレット侯爵令嬢とともに我が国に帰省するそうですよ」
わぁ、と私たち姉妹の歓声があがる。
お兄様…第一王子であるケイン・ベレスフォードのことだ。
シスコ…んん、妹思いなお兄様は時々暑苦しいけど基本優しく私たち姉妹に甘いため、好かれている。
そんなお兄様は将来、王族として外交を担うことになる。今は見識を広めるため友好国である隣国 エインズ帝国にある学園に留学している。
留学はお兄様の婚約者であるスミレ・バイオレット侯爵令嬢も一緒だ。
お兄様と同い年、私たちより2つ年上のスミレ様はすでにお姉さまも同然な間柄。
ベレスフォード王族の婚約者は決まり次第王城に住み、王族が留学などで国を離れる際は一緒に外国へ行くことになっている。
お兄様たちの場合は恋愛婚約だから、ずっと一緒にいられることは幸せなことだと思う。
「それと、エインズ帝国のセシル皇太子、シオン第二王子も来るそうだから、宴を開く予定にしている」
そう続けたのはお父様。
そっか…帝国の王子たちが来るなら大掛かりなものになるな…。
帝国の皇太子はお兄様と同い年、シオン王子は私たち姉妹と同い年だ。
隣同士の国ということもあり、いわゆる幼馴染という間柄になる。
モモを見ると皇太子の名前を聞き頬が赤くなっている。
…昔から、好きだからなあ。
王族同士、好きとか嫌いを簡単に言えるわけではない。
だけど、モモの皇太子に対する好意に早々に気づけたのは、やはり双子だから…なのかな。
「わかりました。では、とびきりの宴にできるよう私たちも頑張ります…ね、モモ」
笑いかければ、小さくうなずくモモの頬がさらに赤くなった気がした。