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有象無象《魔王殺しの転生者》  作者: 零噛鬽
第一章・魔王編
9/25

第九話 不滅ノ王と呪われし少女


【私は当時…ただの村娘だった】


「ゲホゲホ!」


【弟は産まれた時から病弱で…元気な私には”罪の意識が芽生えていた”。】


そんな思いを吐露する少女の背後の影が悪魔の形に変化する。


《契約だ…》


【私は弟を救いたかった、ただ…”長生きしてほしかっただけだった”。】


その契約の後、少年は信じられないほど元気になった。


しかし、契約した少女はその場の誰にも見抜きもされない。


《願いを叶える代わりに、三つのリスクを負ってもらう》


一・永劫不滅の不老不死になること

二・自らに触れる他者は例外なく燃え尽き灰となること

三・”私に代わり魔王となること”


《これを飲めば、弟の不治の病を治してやる。》


【繋がりは捨てた、触れれば灰となってしまうから…でも寂しかった。】


しかし、病は消えど時がたてば人は死ぬ。

そして弟の残した子孫はたった1000年の時を経て、完全に途絶え…彼女は一人になった。


そして時は現在へ…


「だから僕は作ったんだ!消しても消しても消えきれない不滅!永劫回帰のこの学園をぉ!」

「そうか…それがお前の過去なんだな。」


波留ノは珍しくおとなしかった、それは彼の過去。

妹を失いかけている過去と助けるために魔王と契約している現在と、重ね合わせていたからだ。


「んでもわりぃーが、俺にも失いたくないものがある。”思い出を抱いて死んでんくれやぁ!”」

「君がねぇぇぇ!!!」


豪炎の焔、存在を消しきる滅却の一撃を受けてなお勇者は立ち上がる。

盾でそれを防ぎ、近づき剣で刺す。


「うぁぁぁ!!!」


刺された心臓は即座に修復し、炎で押し返す。

不滅王の受けし加護は、”自身以外の一切を灰に帰す代わりに自身を永劫不滅の存在と化す。”

波留ノの加護は、”一切の邪悪を薙ぎ払う代償に、万人や善人にその牙の一切を振るえない。”


お互いに重いリスクとリターンを抱える者の同士、打ち消し合いが起きている。

その結果、即座に修復するはずの不滅王の心臓と脳以外の器官の修復ができない。

そして魔王の邪悪を纏いし炎は、加護の影響で波留ノには通用しない。


殺せず、殺させずの関係。

この戦いに決着はあるのか…


「ちっ!これじゃ決着がつかねぇーなぁ!」

「そうだよ、君?。マジうざいじゃん…」


押し寄せる魔王の豪炎の、押し返す勇者の盾…


最後に打ち勝つ一手は一つ!


「やっぱり…”決着は押す側の役目だよな”。」


退魔の剣の盾で押し、そのまま近寄り先ほど同様矛で刺す?いや今回は矛でその邪悪を断つ。


「キャァァァ!!!」


四肢をもがれた魔王は悲痛な叫びを上げている。


「これではどちらが魔王かわからんな」


最果てはその光景を皮肉り、そして魔王の気絶によって豪炎は止まる。


「最後の言葉は…」


気絶は嘘、死んだふりであることを波留ノは察していた。

諦めさせて欲しいと、魔王は願っていた。

勇者の刃なら、その生涯を辛く邪悪に犯された生涯を終わらせてくれると願って首を差し出したくて…でも…


「無理だ、俺にはできねぇー。これは同条ではなく事実だ。お前の加護と俺の加護は”同じタイプの加護”。打ち消し合う運命だ…」

「ならどうしたら…人に触れれば焼き払い、自分を刺しても焼いても打ち抜いても散れないこの呪われた命に!どうしたら最後が訪れるの?」

「自分の選んだ運命だろ?」

「選びたくて選んだんじゃぁ!」


波留ノは不滅王の頬を殴った…


「どんなに辛くてもそんなこと言うじゃねぇぇぇ!!!」

「!?」

「お前は弟を護ったんだろう…死ぬまでよぉぉぉ!!!…立派じゃねぇーか。誇れよ…」


波留ノは泣いていた、ぶった側が傷ついていた。

今なお、妹を護るため必死である自分。今だに一度も彼女の笑顔を作れていない自分と…

弟の生涯を見届け、幸せのために身を引いた不滅王のその姿に波留ノは尊敬に似た感情を持っていた。


だから否定されたくなかった、否定してほしくなかったからぶつけた。


「最果て…」

「ん?どうした汝。」

「こいつに勝つ方法はあるか?」

「あるぞ、契約をすればいい。そうすれば殺す必要もないから可能なはずだ。」


最果ては内心呆れていた、どこまで非道を気取っても今目の前にいる魔王を助けたいと願う波留ノを見て提案した答え。


(1~10まで上手くいかないのが”子育て”か…)


「その代わり、不滅。」

「なによ…」


「なぜお前も泣いている」とツッコム最果ての前で泣いている不滅と波留ノ。

そんな二人にほだされず、呆れて顔を抑える最果て。


「”完全主従契約だ”」

「完全主従?」

「つまり、この僕に…”お前の奴隷になれと言うのかぁぁぁ?”」

「我ではない、勇者のだ。」


最果てが言うには、魔王の封印は殺す以外に完全な主従契約。

飼い主と家畜、主と奴隷の関係になれば解けるらしい。


「ぼっぼっぼ、僕が…この僕が寄りにもよって。おっおっお、男の奴隷に…」


その瞬間、不滅は何を想像したのか赤面してしまう。

意外とむっつりな元魔王と…


「これからよろしくな!不滅。」


鈍感な勇者であった。


「ちょうどいいじゃないか、不滅は同系統の加護を持つ勇者である波留ノにしか触れられない。逆に波留ノも加護の影響で魔王以外には触れられない。…お互い相思相愛だな。」


「は?」

「はぁぁぁ!!!」


これにて、勇者一向に新しいメンバー。

奴隷、家畜…


「あと波留ノ、お前お腹すいてないか?」

「あぁーすいてるな。でも、俺加護のせいで邪悪を纏った魔物しか食えねぇーしなぁ~この辺に魔物なんて…」


(ギク!)


「なにを言っているそこにいるじゃないか…」

「まさかあんた…」


非常食、”不滅の魔王が加わった。”


「きゃぁぁぁ!!!」


今後、波留ノの食事の素材は全て不滅の四肢や臓器になった。


次回…


「俺様に勝てる奴!こいぃぃぃ!!!」


【最速王とデーモンズサーキット】

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