第七話 不滅王と四天王最強のオカマ
「どうかしら?勇者様。」
「あ"ーちょうどいいぜ、…遊び相手としちゃーな。」
睨み合い、向かい合い、威圧し合う両者の間に交わされる無言の圧の押し付け合い。
獣通しの威嚇を見て、外野、内野共に一歩足を引く。
「そうよね、こんなことしててもらちが明かない。」
「そうだぜ、さっさと投げろよ。そろそろ10秒だぜ?」
「そう…ねぇ!!!」
煽られ投げた投球は、確実に人を殺す威力のボール。
木っ端微塵、爆散必死の投球を止める男がここに一人。
「ワイの化身は!"黒ノ戚狼”」
圭一郎が放った漆黒の鎧に包まれし獣の騎士がそのガチャガチャと鎧の音を響かせ動く。
「ガァ~…」
吐く息はまるで獣のそれ、鋭い爪は鎧をけ破り存在し。
垂らす涎を床に落として両手でつかむボールを、宙に放り。
「グアァァァ!!!」
放つ光線がボールを吹き飛ばしてその顔面に激突する。
「「主様ぁぁあ!」」
西郷の出現させた化身達が、その口を開いて心配を吐露する中。
西郷の顔面に激突したそのボールは、当然審判からは反則のため無効となる。
「あちゃぁ~すまんなぁー。こいつ、ワイの化身理性が乏しいもんで…まぁーかんにんな西郷はん。」
すまんと言う片手のハンドサインを見て、西郷は顔面にめり込んだボールをはがし。
「いいわよ、許しましょう。この一撃でねぇ!」
全開で投げた復讐の一撃は、ボールに赤い闘気を纏わせ波留ノ達の方へと投げられる。
「威力はさっきの100倍、受けられるものなら受けて見なさい。」
「受けてやろうじゃねぇーか…」
それを片手で受け止めるの波留ノだが、そのボールのあまりの威力に押し出され外野にまで到達するかに思われた。
「ワイも加勢しますぜ、兄貴。」
「ウガウガ!」
背後で押される波留ノを背後から支え得る圭一郎と黒ノ戚狼、支えを受けて止まる波留ノを見て西郷は…
「なるほど、でも大口を叩いた割には三人がかりでやっとのようねぇ~」
西郷は腕を組んだまま波留ノを嘲笑う。
「テメェー…」
波留ノが完全にプッツンして、退魔の剣を出すその直前。
それを止める圭一郎。
「兄貴、悪いが兄貴の出番はもうちょこっと後や。ワイがこいつを倒して兄貴はその残った余力で魔王を倒すんだろう?」
圭一郎に止められ、波留ノはその矛を収めた。
そして圭一郎は、黒ノ戚狼と共に内野内で驚異的な連携プレーを始める。
「なにをしてるのかしら?これはキャッチボールじゃないのよ?」
「そないこと百も承知や、でもこれなら…」
西郷は二人の投げ合う姿を見て、煽ると共にある違和感に築いた。
(ボールの位置が…”わからない?”)
圭一郎は黒ノ戚狼と内野の中で横にボールを投げ合い一見無意味と思えるキャッチボールのような動作を高速で行うことで相手の目を欺き。
ボールの軌道を見せまいとする、その上で放たれたボールに西郷は間一髪で避けるが背後や左右にいた化身達は次々と倒されていく。
「ならば、外野からのボールを受け止めれば…」
「それはやめといたほうがいいで?」
外野から投げられるボールを西郷が受け止めようと、背後を見るがそこいボールがない。
「再転送、ワイの仲間の一人。築地・廉太郎の持つ化身術、自身もしくは他人の化身の元へ物体を転送する能力。」
「ち!小賢しいわね…」
西郷の苦言をよそに、再び投げられる脅威的な弾丸の如き不可視のボール。
そしてそのボールと再転送の凶悪コンボにより西郷の内野内にいた全化身が外野へと至る。
「これで…形勢逆転やなぁ~」
「どうかしらね…」
圭一郎がそう息巻いた直後、外野にいた全ての化身の力が西郷へと集い。
そして…
「”融合”」
全ての化身の身体に書かれた数字が0になると共に、本体である西郷の体はさらに肥大化し強靭に太くなりその全身から魔王の邪悪な覇気を纏わせてその場に座す。
「角まで生えて、まるで悪魔だな。」
「恐怖よ、あたしは恐怖そのものになったの…勝てないでしょう。わかっているはその”絶望”、その弱気な心があたしに力をくれる面白いくらいにねぇ…」
のっそのっそと歩みを進め、黒ノ戚狼の放つビームを纏ったボールを軽々と片手で受け止める西郷。
「化け物やなぁ~…」
「あらぁ~失礼ね。美しいと言って欲しいわ…悪魔弾道。」
放る?いや放つ!。すでに投げる動作すら忘れたその動きはまさに異能。
サイキックの如く浮いて言うことを聞くように動く、ボールをなんの構えも助走もなしに放った立ったの一撃が全てを貫きブーメランの如く彼女の元へと回帰する。
「うぁぁ!」
今の一撃で、黒ノ戚狼と圭一郎が外野へ。
内野に残るのは正真正銘、波留ノただ一人となった。
「どうするのかしら?もうドッチボールなんて生優しい競技は遠の昔に終わっているのよ。ここからはただの殺し合い。ボールは弾丸で、人は銃。もっとも、あたしはランチャーで貴方はピストルでしょうけどね。」
「ピストル?いいじゃねぇーか。俺は好きだぜまるでゴム人間になった気分だねぇ~」
絶望的な状況、しかし波留ノはまだ構える。
諦めるなんて性に合わないと、目の前に腕を掲げて指をこいこいとおちょくるように動かし構える。
「あなたねぇ…さっきから何言ってんのかわかんないのよぉぉぉーーー!!!」
放つ強力な光線とその勢いに押されるボール。
「ほぉー、これが超次元スポーツ漫画あるある最強耐久値のボールか。いいねぇ~んだけど一つ忘れてるぜ…」
波留ノはそれを退魔の剣『グラディエーター』の盾で弾き返す。
「白き力…貴方本当に!」
「そうだぜ、俺は勇者。魔王殺しの転生者だぁぁぁ!!!」
波留ノの加護は、一切の邪悪を薙ぎ払う代償に万人に一切の牙を向けないこと。
つまりそれは、邪悪の主である魔王はもちろん、その眷属である魔族や人や生物に宿る邪念のまた邪悪。
その量によって威力は増大し、邪悪が強いほどその効力を受けやすい。
現在邪悪の塊のなった西郷にとっては…
「まるで…全細胞を殺す万毒。お前にとって俺はまさに…」
「神おも殺す毒蛇、ヒュドラ。」
「そう言うこと…」
波留ノの持つグラディエーターの盾は、邪悪の力を跳ね返し打ち消す。
跳ね返された自身のボールの威力で、西郷は木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
「ふぅ~よし!次だ次!次の四天王こい。誰が相手だろうがどんなゲームも競技も全部俺が相手になってやる。」
しかしその場に四天王は誰一人おらず、「きゃー」と言って逃げ惑う。
何を隠そう、この場で魔王を除き彼女は四天王最強の西郷・鉄子である。
「マジヤバあの勇者くん強すぎじゃん、魔導王を倒したとは聞いてたけどここまでとか…」
「おっと、何どさくさに紛れて逃げようとしてるんだよ。魔王様?」
他の四天王とともに、姿を消そうとする。不滅の魔王を見て波留ノはそれを足で踏んずけて止める波留ノ。
「これが魔王ってマジか?さっきのより弱そうだぞ…」
「まぁー不滅の魔王は72宙の中でも最弱、死なないだけで実力だけなら前回お前が倒した魔導王のが上だ。」
「はぁーんでそんな奴が魔王なんかに…」
しかし、二人が不滅の魔王を追い詰めていると背後から現れた銀色の閃光が最果てと波留ノの横を通り過ぎる
当然両者避けるが、その正体はいかに。
「大丈夫ですの?魔王様。」
次回…
「私し不滅の魔王最後の下辺、銀翼ノセズールが相手ですのよ。」
【銀翼ノ天使と滅却ノ翼】