第六話 不滅ノ王と最果ての魔王
「今一度語ろう、この魔月神が…”神から落ちてしまうまでの話をな…”」
彼女が手を広げ、語った真実は世界の仕組みと悲しみの歴史。
そして…
「お前を呼び出した神に関係する話でもある。」
「なに?」
「波留ノよ、この世界には世界強度言う一つの宇宙もしくは全宇宙のデーター許容量が存在する。そしてそのデータ許容量とはすなわち存在値と言う名の、一人一人が持つ質量に関係する。」
「質量?存在値?丁寧に説明されてもわけわかんねぇーぞ。」
波留ノの言葉に、最果ては「まぁー聞け、猿でもわかるように話してやる」と言葉を繋ぎ。
「そして魔王は通常の人間より遥かに一体一体の存在値がデカい、それはまるで”宇宙”と目されるほどになぁ。だが、我が息子はそれ以上だった…」
「息子?お前子供がいたのか?」
「そうだ、夫もいた。産まれてくる子は…魔王である我と”勇者である夫”のつがいの子であった。」
その言葉は、周囲にいた魔王軍を震撼させる一言だった。
勇者と魔王は本来、滅ぼし滅され合う関係。
その理は崩れることなく続き、永劫の円環。輪廻転生の仕組みと同様に魔王が存在すれば勇者が必ず現れると言う関係にあるはずであった。
その対極がまさか…
「まってちょうだい、それはつまり…魔王と勇者が手を取り合って交わったってこと?」
「そうだ、その当時この全宇宙に魔王は交代制で一人しかおらんかった。我もその一人だったが我はあまりにも強すぎてのぉー、勇者が何百、何千と呼び出されても返り討ちにしてしまった。そんな中で出会ったのがあやつだった。」
最果てがそう語ると、不滅王は補足するように「全宇宙歴代最強の勇者”朱雀・絶夜”」その名を語った。
「悪くない日々だったぞ、あやつとの日々はな。しかし女神はそれを許さなかった、魔王は器を変えて同じ魂を次のものへ継承する。それなのに我が倒されずおるから女神はそれに腹を立てたのだろうな、だから我とあやつとで子をなしてその子に魂の還元つまりは我の魔王としての存在値を全てその子に注ぎ。我はその座から降りるはずだった。」
波留ノはその言葉に、「ハッピーエンドじゃねぇーか」と返すがその場にいた不滅王は不適に笑い。
最果てはその顔に影を落としこう答えた。
「最強の勇者と最強の魔王の間に生まれた子は、存在値だけで全在宇宙全体と同質量の忌子が産まれてしまったのだ。」
「オムニバース?わりぃーがよぉー。宇宙とか存在値とか質量とか荒手の情報処理するのに手いっぱいなのに、んな想像もつかないようなスケールの事言われてもよぉー。」
波留ノは頭を掻いてそう答えると、最果てはわかりやすくと例を出してそのスケールを波留ノにわかるように説明した。
「ごはんだけが敷き詰められたしっそな弁当を想像してみろ、宇宙とは米粒一つ、多次元宇宙とはその米粒が集まって一口サイズになったもの。弁当の四分の一をしめる範囲をメガバース、そして弁当全体がオムニバースと言う。」
「ん?つまりそのどこかにいる息子に力を分けたせいでお前は力を失った…だとしたらお前らはなんでその力を取り返したいんだ?。」
「息子は死んだよ、いーや殺した。オムニバースにも存在値の限界許容量がそんざし、その隙間に人や宇宙があるのだ。つまり、弁当と同じ存在値の存在がこの世にいたら…」
「”弁当中に入らねぇー”」
そう、この世界の存在値は有限。許容限界がある異常、それを超える者が産み落とされれば全宇宙が崩壊する。そもそも、魔王のような大きな存在値の者が幾人もいたら他の生物は誰一人創造されなくなってしまう。
「だから殺した…ってわけか。」
「だがなぁー波留ノ、この件はそう簡単に終わらんくてな。存在値の遥かに大きな存在には一切の異能や手段が効かない。だから我は全存宇宙と契約をした、この世で唯一あの子と同じ存在値を誇る存在とな。」
「それがさっき言ってた魔王との戦いに一切手を出さないことか…」
「それだけではない、お前が倒そうとしている七十二宙は我の契約により我の存在値を分けられた元…”人だ”。宇宙人や異星人、地獄の魔族なども含めた人が我の力を受けて魔王となったのだ。」
それが最果ての事情の全て、それを聞いて波留ノはどんな反応を返すのか。
最果ては不安なのか、片手でもう片方の腕を摑みもじもじとしている。
「そうか、なら俺がどうにかしねぇーとな。人数問題…」
波留ノの言葉に、最果ては「それだけ…」と少し同様するが、波留ノは最果てに背を向け。
次のように述べる。
「だってよ、世の中には仕方のねぇー事情ってのはよくあるこったろ。俺もそうだしな…それにそれってそんなに問題か?、つまり俺一人の力で七十二宙の魔王をぶっ倒すって目的は変わんねぇーだろう。それにテッペン目指すならやっぱりタイマンが一番だしな、せいぜいそこで目に焼き付けとけよ。お前の旦那最強の勇者を遥か先に行く俺の覇道を…」
手の平と拳を合わせてそう告げる波留ノに、最果ては涙をこぼして冷静さを取り戻した。
「ほなら、わいがやりまいしょうかねぇー。」
そうこうしていると、背後から現れたのは屋上で寝転がっていた黒い髪おさげの糸目男。
「あ”誰だテメェ―…」
「酷いなぁー、さっき屋上でおうたですやん。わいの名は東西・圭一郎、ただの武闘家ですよ。」
そう言うと圭一郎の背後から、ぞろぞろと圭一郎のつれが集まる。
「こいつらとわいと兄貴で合計7人とわいの化身を入れて8人、どうや勇者の兄貴。」
「いいねぇー、負ける気がしねぇーぜ。」
そう意気込んで魔王軍幹部、西郷に挑む圭一郎と勇者波留ノ。
「先行はそちらにお譲りするわ、好きなようにどうぞ?」
「おし!んなら…」
西郷は余裕だと言わんばかりに、こいこいとハンドサインを波留ノへ向ける。
それを見て波留ノは、俄然やる気を出して戦意の眼差しを目の前の西郷に向けえる。
(ドッチボールなんて小学校以来だが…)
そしてその全身の毛を逆立たせ、悪魔のような形相で振りかぶってボールをぶん投げる。
「取り合えずぶん投げるぅぅぅ!!!」
それは勇者の身体能力と波留ノの潜在的運動センスから放たれる時速300kmの剛速球。
そのボールから放たれる凄まじい風圧と、凄まじい回転により発生した竜巻に巻き込まれ相手の内野内の化身のほとんどがその一撃の元に吹き飛ばされる。
「悪いな、この一撃で全員。外野に行ってもらうぜ。」
放たれた自身のボールの、規格外の威力に波留ノは困惑しつつニヒルな笑顔を浮かべて皮肉交じりの返答を西郷にかけた。
「やるじゃないぁ~い、でも残念。ここでおしまいよ…」
しかし、そのボールがコートの外にでる直前。地面に付くことなく西郷の強靭な右手で鷲掴みにされて止まる。
「しってたかしら、ドッチボールはみんな強力して行う団体競技じゃない。強い一人が無双する…そう言う風にできてんのよ。」
「ならお前には無理だな。」
煽る波留ノをよそに、そのこめかみを切り裂き背後の圭一郎のつれを吹き飛ばした西郷。
(あかん、なんつう威力と速度や人形の生物が出していい性能ちゃうぞホンマに。)
突如として放たれたボールの威力はまるで核弾頭、速度はまるで音速を超える戦闘機の如き黙示不可能のそれ…
「さぁー!どうかしら。勇者様…お気に召しまして?」
「あ"ぁ〜こいつぁー良い。"遊び相手としちゃーな"」
次回…
「ワイの化身は!"黒ノ戚狼"」
【不滅王と四天王最強のオカマ】