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有象無象《魔王殺しの転生者》  作者: 零噛鬽
第二章・魔王旅団編
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第二章 【第六話 第二形態】


それは雪景色の広がる銀世界の中心、そこで開講する二つの光と…闇。


「はぁ~はぁ~」


息切れを起こし、満身創痍の天狼寺と相対する狼王は息切れどころかこの寒さで白い息が見えないと言うことは…


(まさかこいつ…息を止めて…)


「舐めプ…当然のハンデ…私は強すぎるのだよ、勇者の少女よ。」


何と目の前の怪物は今の今まで息を止め酸欠状態で戦っていた…当然全力であろうはずがない。


それでも届かぬ、剣がツルギが刃が刀が刀身が…


(かすりもしないなんて!…)


これが魔王、故に魔王。


上位10宙第二位の実力…


「そろそろ飽きてきたな…」


全力で、音も光も置き去りにしているはずの天狼寺の刀の連撃を受けながら。


まるで赤子の手をひねるように容易い事の如く、その攻撃をかわし受け流し。


魔王はあくびを抑えるために、片手を封じてすら天狼寺の刀はやはり届かない。


「ここらで潮時だ…」


そんな完全に舐めている相手の、本気などであろうはずもない亀のようにゆっくりと振り下ろされた手刀によって。


「”月斬ムーン・サーベル”」


天狼寺の半身が吹き飛んだ。


当然避けようとした、と言うか避けたはずだ。


そのはずなのに、なぜかその一撃は事実として天狼寺の半身を吹き飛ばしている。


しかも…


「再生がぁ…」

「今のが私の固有技、狼王本来の技。…再生が遅れるのも当然だろうなぜなら…」


勇者には再生能力がある、それはさながら不死の如き超速再生。


女神の加護による強靭不滅の肉体…四肢を捥がれようと脳や心臓を貫かれようと勇者は死なない。


しかしげんに、今まで勇者は幾度も魔王に負けて来た歴史がある。


それはどうして?


簡単だ、例え不滅の勇者と言えど再生には限度がある…


「細胞分裂、勇者の超速再生の過程で絶対必要になる現象。その限度数が勇者は異常に多いから、超速再生何て芸当が可能なのだ。しかし、私の月斬(ムーン・サーベルは一発の斬撃に無数の小さな斬撃が何層にも重なりあったもの…流石の勇者も不可数の斬撃には耐えられまいよ…」


勇者の倒し方とは、不可数と言う途方もない数だけいたぶり続ける事。


しかし上位魔王は、それを糸もたやすくやり終えてしまう。


それを倒すのに、勇者と言う化け物が兵隊のように駆り出されたのも頷ける。


「これが…”魔神の力を受け取った”…魔王の実力…」

「はて、何のことだ?」

「とぼけないでよ、貴方達が魔神から力を受け取っているって最果て様から聞いたわよ。」

「あぁーそう言うことか、しかし”貴公ら…何か勘違いしているんじゃないのか?”」


その直後、再生が出来ぬまま虫の息となって地べたに這いつくばる天狼寺の残った片耳に…


”衝撃の言葉が響き渡る”。


「私達が貰い受けた力は、”第二形態”の方だぞ…」






「第二…形態…」


衝撃の真実と共に、地下の監獄で戦う不滅の前に魔神の力の片鱗が姿を現す。


「獅子くん…その姿は…」


自身の不死性を利用し、体の内側からビックバンを発生させることで自身もろとも獅子王をやったはずの不滅が目の前にしたのは死んだはずの獅子王の姿。


しかしその姿は大きく変貌し、鬣は炎のように蠢き全身を真紅に染め上げ周囲に神々しい光輪が浮かびあがり黄金の装備を纏って不滅の方へゆっくりと近づいてくる。


【かつて我は憧れた、貴様のちからに…しかしもうその必要はない。なぜなら…】


彼が一歩を歩む度に、世界は少しづつ歪み空間の距離も時間の流れも少しづつ乱れ。


魔神の作り上げた神の皮膚の如き鋼鉄の要塞が、無限の多次元宇宙が滅ぶほどの爆撃を受けて地面に日々一つ入らなかったこの要塞の…


地面も天上も、全てが溶けはじめる。


【我が魔神様から受け取りし力の名は…”太陽神・ガルドグレイブ”】


魔王となり、全世界を統一する力を得た獅子王が勇者と共に旅立った王城に戻ると…


誰もが彼に恐怖し首を垂れた。


なぜだろう、それは彼すら感じえない王の覇動。


そして彼は気が付いたのだ。


「私はもう、”人ではない”」


獣人だったはずの自身が、もう引き返せない。


純粋な思いや語らいはもうできない、友がいない。


配下は友にはなり得ない、支配する人々は友にはなり得ない。


何故なら彼らは自身とは違う弱気者、下の者が上の者を敬い気を使うようにそれは真実の感情ではない。


「寂しい…」


それでも彼は統治した、魔王として世界を統べる王となり。


外界からの勇者を一網打尽にし続けた。


しかしそうする度に自覚する、自身は旅をしてきた勇者のような光にはなれない。


絶対的な”影”であることを…


だからこそ、同じ魔王である不滅の放つ”焔の光”が眩く見えたのだろう。


不純にも魔王になってから、自分以外の生物を下に見てしまう彼とは異なり。


どこまで行っても、不滅は同じ学園の配下達を自身の友として接し続けたその在り方に…


だからこそ、彼は求め続けた”究極の光”を今!


【我が手に握られし、宇宙を焼き尽くす極炎よ…登りし太陽の如く刹那と共にその力を増しますように…】

「え…」

「不滅!来るぞ!」


突然の事に動揺を隠せない不滅に、獅子王は何かを放とうとしていることに気が付いた最果ては不滅に警告する。


炎刃エンジン


放たれた手刀が、炎の刃となって不滅を襲う。


しかし、不滅は焔の化身。


火竜のサラマンダーに炎が効かないように、彼女にも炎など逆に強化されてしまいそうな芸当をなぜ…


「うわぁぁぁ!!!」


叫び出す不滅、不死鳥の焔を纏いし彼女がどうして同じ炎に焼かれているのか。


それはシンプルな答えであった。


【炎の反対は水、加速の反対は停滞。しかしそれはあくまで同じ土俵での話、私は既に貴様の焔を越えている…】


属性の相性で最も寄付すべきは同系統の力と相殺関係の力、例えば破壊で言えば創造、赤で言えば青。


それと同様に、同系統の赤と赤、破壊と破壊も愛称としては悪い。


炎に炎を注いでも、さらに燃え上がるだけのはず…


しかし、今の獅子王の魔王炎は太陽の”日”。


日とは天、日とは神を意味しており太陽神はあらゆる神話で神々の頂点とされる。


つまり、彼の振るいし炎は不滅の持つただの炎とは違う…


「神の炎か…」


最果てはその真実に気づいて、驚愕する。


それはかつて最強無敗の自身が、勇者朱雀によって振るわれた女神の炎と同じ。


金色く神々しいまでの聖なる力を纏いし炎。


反対に強い闇を持つ魔王にとっては…”天敵”。


「皮肉なものだな、よもや魔王がその女神の力を振るおうとは…」

【元々我は勇者や僧侶と共にあった女神の使者、これが自然これこそがあるべき姿…生まれながらに闇の申し子であった貴様とは違うのだよ最果てくん。】


先ほどまで敬語だった獅子王が、最果てに”くん”ずけして呼んでいる。


それは圧倒的な自身への実力への傲慢と呼べるほどの絶対的な自信。


それが今の彼にはある、だからこそ見下すのだ自身以外のあらゆる”存在”を…


「随分と偉くなったものだな」

【当然でしょう、我は”王”…”偉いのです”。】


次回…


【僕だって、魔王だ!】


《第七話 闇と光…》

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