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有象無象《魔王殺しの転生者》  作者: 零噛鬽
第二章・魔王旅団編
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第二章【第四話 孤高の獣】


かつて、狼王は純然たる王であった。


魔王ではなく、単なる国の統率者。


その前は、何てことないただの旅人。


旅の途中、飢える獣の群れを見た。


彼は、決して多くない自身の所持している食べ物をありったけ分けてやった。


こうして飢えをしのいだ群れは彼をしたい尊敬の念で彼に尽くした。


いつしかそこには村が出来、町ができ、活気づいて街となり…


気が付けば国が出来ていた。


そして彼は…王になっていた。


「ふぅ~寒いな…」


しかし彼は知らなかった。


王とはえてして…”孤独”であることに…


「なぁー勇者よ…」

「下がってください、最果て様。」


天狼寺は、一面の冬景色の中。


積もった雪の頂上に座主、狼王を見て手が出せない最果てを後ろに隠す。


「お前にとって…”国”とはなんだ…」


魔王の問に対し…天狼寺は…


「近くて…遠い存在…」


そう返した。


「ふっ!そうだよな。遠く見えるよな…だからか…”この寂しさが消えないのは…”。」


そう発すると、狼王は蝙蝠の魔王が可愛く見えるほどの速度で急接近し…


「ならば、ここまで近づいた我を見てどうする…」


ぶつかる直前で止まった彼を見て、天狼寺は…


「斬る!」


斬りかかった。


「そうか…お前も勇者だったな…。」


なんと狼王の首元に目掛けた刀は、勇者の剣が…


「無傷…」

「ならば滅ぼそう…」


狼王はそう言って、天狼寺の顔面に手をやり。


闇閃デステロ


黒きエネルギーの収束体、一種のエネルギー砲を放ち。


受けた天狼寺は、当然塵芥と化す。


「はぁ~はぁ~」

「流石…勇者と言ったところか…」


その威力、魔導王の非ではない。


そう感じた最果ては直前で天狼寺に大剣に切り替えるよう指示を出し。


何とかその耐久力で持ちこたえた。


「元々、闇閃デステロは魔王の基本技の…魔王閃デスロボスを容易くしたもの…私に使えない道理がない…」


この事実ではっきりしたことは、狼王は少なくとも…


基礎スペックでは他の魔王と非にならないと言う事、それに最果ては知っていた。


狼王の今一撃は、まだ実力の1%以下であることに…


「いいか天狼寺、今の攻撃は奴にとって。寝起きにするあくび程度の雑な代物…次受ければ剣は愚か…自身も焼かれるぞ。気を引き締めるのじゃぁ!」

「はい!」


二人のやる気に満ちた顔とは裏腹に…


「どうぞ…来たまえ…」


余裕の態度で返す、狼王。


「舐めるな魔王…剣儀・総式…五月雨!」


相手の態度に激高し、360°全てを包囲するレベルの凄まじい剣撃を繰り出す天狼寺。


「上がれ…」


そんな彼女の攻撃を全て見切り…


指を上にあげて技を放つ狼王。


闇柱デスピラー


それは上に伸びる柱の如く放出された、黒いエネルギーの塊。


狼王の周囲に展開されたそれは斬りかかる天狼寺に避けるための距離を取らせ。


「そこか…」


背後に移動した狼王の気配を気取らせぬように天狼寺を仕向けた。


闇弾デスバレット


指から放たれた一件小さな黒い弾が、天狼寺に着弾すると共に…


凄まじい爆発を引き起こし周囲を灰燼とする。


「これが…最上位魔王の力だ…」


基本技の性能が規格外、天狼寺の眼に今だ…勝希は見えないまま…


「ぐはぁ!…」


瀕死状態になる。


「ん?」


しかし狼王は気が付いていた。


その嗅覚、その聴覚、その視覚…


全てが優れた狼の王は全知全脳。


360°どこにも死角がない…そのはずの彼が…


「おい勇者…」

「なに…かな?…」


勇者の返しに、思わず全身に血管を浮かばせ目を見開いて…


「”最果ての魔王”をどこにやった…」


それは次元を斬ると言う技術、前回の緋色の魔神が使っていたあの鎌の能力。


それを天狼寺はその目でコピーしていた。


だからだろう…


周囲の寸分の動きすら見逃さない、狼王が唯一。


彼女が無駄に刀を振るい作っていた次元の亀裂には…


「気が付かなかった…んだね?…魔王なのに…」


次元を割れば、空気の流れも微妙な音の違いも匂いの消失も関係なく一瞬で別の場所に移動できる。


既に最果ては次元のゆがみを利用して、その先にある扉の向こう側へと歩みを進めていた。


(待っていろ、不滅。今私が…)


「おっと、どこに行かれるのです…」


駆け走る最果てに、襲い来る獅子王の姿。


「貴方はここで…”フェードアウト”ですよ。」

「獅子王…」


獅子王の持つ多腕が、最果てを襲う。


本来やり返さなければならない…が!


最果ては例の契約の影響で、魔王に危害を加えることができない。


残る選択肢は…


(逃げるのみ!)


最果ては走った、それを捕縛しようと獅子王は地面に無数の多腕を展開。


「諦めてください、不滅は今。"ネビロス"様の使った檻の中にいます。魔力探知は対策され、見つけることが不可能…場所を知っているのは限られた人間だけ…」

「それは君も含まれているのかな?」


そう言って最果ては、その手の指輪に命じて技を放つ。


悪魔之独白(マルコシアス)


その直後、獅子王は突如として独白を初め。


この城の情報を洗いざらい吐いてしまう。


その中には当然、不滅の居場所も含まれていた。


「協力感謝するよ。」

「しかし、鍵はどうするのです?私から取らねば…」

「無論、問題は無い。」


不滅はその後、瞬間移動を可能にする魔法。


悪魔之輸送法(バティン)


を発動し、獅子王の吐いた不滅のいる部屋へ瞬間移動。


「最果て!」

「不滅よ、今出してやる。しばし待て…」

「解放って、鍵は確か獅子くんが…」

「案ずるな…」


不滅の魔法、悪魔之鍵(ラウム)は世界中のどのような鍵もその付与された効果おも無視して必ず開ける万能の鍵。


「君って…何でもできるんだね…」

「まぁーな、我々誰だと心える。最終最強最悪と名高い最果ての魔王その人じゃぞ。」


こうして意外とすんなり、不滅を解放した最果ての的に獅子王が扉を強く蹴るようにして入ってくる。


「獅子くん…」

「ん…最果て様、ここまでです。」

「そうかな?」


獅子王は一瞬不滅の方を見るも、無視して最果てに話しかける。


しかし最果てはその状況を面白がりつつ、不滅を前に出し自身を守らせる。


「えぇぇぇ!!!僕がやるのぉ!」

「当然だろう、他の二人は戦っているのだぞ。お前だけやらんわけに行かんだろう。それに…」


元々、ここに来た目的は最果ての封印解除の条件である魔王討伐のため。


逃げる選択肢など存在しない…


「見つかったからには…やるしかない…」


不滅は目の前の、かつて同じ場所で修行した兄妹弟子であり、上位10宙のかれに牙をむく覚悟を決め。


「ここで…」

「決着をつけよう…」


獅子王と不滅、どちらも能力は回復系。


他者と自身を癒す獅子王と…


死ぬことのない不滅の肉体と他者を灰塵にする炎を持った不滅…


どちらが勝つのか…


そして現在それぞれの場所で対人する天狼寺と波瑠ノの行く末は…いかに…


次回


【第五話 劣等感】

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