第二話 勇者投獄
「んで、今からどこいくんだ?」
二人は、山々を渡り旅を続けていた。
「まずは王都だ、RPGの基本だろう。」
「はぁ!んなこと知るか、そもそも魔王が72体もいる時点でもうセオリーじゃねぇーだろ。つか!メタイ発言すんじゃねぇーよ!。お前仮にも魔王だろう…」
「仮ではない、本当の魔王だ。」
「いゃ!そうい意味じゃねぇーつぅーの!」
なんやかんやで、二人は王都へと歩みを進めていた。
その道中では色々あり…
途中で、ゴーストツリーと言う魔物の大群に襲われたり。
「おいぃぃぃ!!!なんでお前魔王なのに魔物に襲われんだよ!」
「今の我は力を封じられておってな、魔王覇気が使えんのだ。」
「なんだそれ!新設定を追加すんな。頭わりぃーんだよこっちは!」
「知っとる」
芋虫型の魔物に寝ている最果てが喰われかけたり。
「なに寝てんだ起きろォォォ!!!」
「Zzzzzz」
またある時は、盗賊に襲われたり。
「お!喧嘩か?いいぜ。」
「この程度ならお前もやれるじゃろう。」
「がってん!」
結局、勇者と魔王に勝てる奴はいなかったのだが。王都に着くと、そうもいかない…
「なんだあれ?」
「検問だな、街に入るときは身元を明かさなければならん。」
「んじゃ詰みじゃね?」
「馬鹿言え、魔王が臆することなどないわ。」
そう言って手元から生み出したのは、偽造の身分証明書。
「おいおい、なんでもありだな本当…」
「まぁーな、いくぞわっぱ」
「へぇーい」
二人は、道中の色々に比べて意外と簡単に王都に潜入した。
「これが王都かぁ~本当に、RPGみてぇーだな。」
そこに広がるのは中世ヨーロッパ風の建物と、入口の通りを埋め尽くす商店街。
「お!美味そぉ~おばちゃんこれ一個くれ。」
「こらこら、金は誰が…」
「もちろんこいつのつけで…」
「おいおい、お前魔王におごらせるとはいい度胸じゃな。」
街での買い物を終え、二人は酒場に入る。
「ここは?冒険者ギルドの経営する酒場だな。ここなら色々と情報が…」
「そうか!その辺はお前に任せるんじゃ…とっと行こうぜ。」
そう言って波留ノが、店の扉を蹴り開き…
「うぅーす、邪魔するぜ。」
入ると、そこで飲み騒いでいた客全員が波留ノと最果ての方を向く…
「おいおい、お前は全く…目立つなとあれほど行ったのに…」
「なぁー兄ちゃん…」
「あ”!」
酒場の奥から現れたのわ、丸太のような腕を持つ贅肉のたっぷり付いた大男。
「んだよ、おっさん。文句あんのか?」
「あるに決まってんだろうが!そんなわけのわからん恰好した奴に仲間と楽しく飲んでた酒不味くされたらよ!家の入り方もわかんねぇー下民の餓鬼はとっとと帰って母ちゃんのミルクでも飲んで…」
言葉を言い終わる前に、波留ノは飛び上がってその顔面に蹴りを入れ。
何席かを巻き込んで吹き飛ばした。
「全くよ、テンプレ台詞くっちゃべってんなよおっさん。御託の多いおっさんほど、モテねぇーもんねぇーぞ。」
そう返す波留ノに向けて、刃物を抜き取り臨戦態勢に入る男達。
「ほぉ~この勇者様とやろーてのか、ぼんくら共。こいよ、モブが主人公に勝てないってセオリーを叩き込んでやる。」
すると男達は、波留ノの煽りを合図にその場から一斉に動き波留ノに襲いかかる。
「オラよっと!」
(無駄じゃ無駄じゃ、勇者の身体能力は常人の比ではない。今の奴らの動きは、波留ノにとってスローモーションに見えていることだろう。)
波留ノもその違和感を感じていた、それはずばり最初の魔王との戦闘のせいだ。
魔王との戦闘では通常通りどころか、集中を研ぎらせたら見切れなくなるほどの超速度に見えた。
しかしなんだ?、ここに来るまでの盗賊達もそうだがなぜこうも遅い。
最果てに聞いていた「世界のレベルが元居た世界より数段高い」と言うセリフは嘘か?。
そう思えるほどに貧弱な人々を前に、波留ノは気づいていない…
(ありえねぇーぞこの餓鬼!)
(俺達だって腐っても冒険者、しかも奴が吹き飛ばしたのはこの場にいる奴らの中じゃ上位の方。)
(そいつを吹き飛ばしてかつ、あくびしながら戦うとか…)
「わぁーあ…」
((こいつ強すぎるぅ!))
と、モブ冒険者達は全員驚いていた。
「んで、遊びはここで終わりでいいよな。わりと退屈になって来たし…”一機に片付けるか!”」
冒険者達の持つ、あらゆる魔法、スキル、武器その全てを一振りの拳で凌駕する波留ノ。
その場の全員が、格の違いを思い知った。
「おいおい困るぞ、店を壊されちゃ…」
「安心しろ店主殿…」
そう言って立ち上がる白銀の鎧に澪包むフルフェイスの男。
そのなりを見るや否や、店主は土下座をして「騎士団様!」と地面に頭をこすりつけている。
「あ”テメェーもやんのか?」
「やめておけ波留ノ、今の貴様では勝てん。」
「はぁーこの俺に勝てないもんなざ…」
そう言っている隙に目と鼻の先まで接近していた騎士。
「いるわけねぇーだろ!」
波留ノは突き立てられた剣の平たい部分を足で踏み、地面に剣を叩きつけて騎士をその拳で殴る。
しかし…
「おいおい、マジかよ…」
「大マジだ!」
騎士は吹き飛ばなかった。そのハイスペックな勇者の肉体から放たれる拳の風圧を受けてなお…
そして波留ノは騎士の剣に斬られ、その場に倒れる。
「女、この男は何ものだ。勇者を名乗っていたが…」
「勇者だよ、本当はお前に合わせるのは最後にしたかったんだが…王都聖騎士団団長・超合金騎士。”転生者狩りのアルフレッド”。」
そして現在…
「なんで俺捕まってんだぁ!」
「騒ぐな、奴が転生者である汝を殺さんかっただけで運が良い。」
「んなこと聞いてねぇーよ!なんで俺が捕まらなきゃならねぇーのか聞いてんだ。」
波留ノの問いに、魔王は呆れ顔で…
「いや、普通に考えて酒場であんだけ暴れた挙句に身分証偽造したら捕まるだろ。」
「確かに暴れたのは俺だが、身分証偽造に関してはお前が…」
「でもそれに文句もいわずしたがったのは、汝だろ。」
「くぅ〜」
ぐうのねも出ない波瑠ノは、悔しそうにしつつ繋がれた手錠を破壊し…
「うっしゃ!もたもたしてねぇーでさっさと行こうぜ。」
「あ!誤魔化した。…でもそれはやめといた方がいいと思うぞ。」
「なんで?」
最果ての言葉に、波留ノはシンプルに疑問で返した。
「今現在、お前は正体不明の危険因子として処理されている。理由は単純、本来非力な人間が女神からの加護を受けた勇者を召喚するのが勇者のセオリーだ。」
「おん!」
「しかしお前は、人間ではなく魔王である我から召喚された。それはつまり、定義上勇者であることが証明できないことを意味する。つまり…」
この世界でも選りすぐりの実力者が集う、冒険者を素性、正体不明の男が単身で吹き飛ばしたと…
「まぁー頭上不明でいきなり現れて暴れ回った奴を擁護するような物好きがいるわけないから、多分このまま行けば死刑だな。」
「んならなおさら逃げるしかねぇーじゃねぇーか!」
「でもいいのか?お前は手配書を出されてお尋ね者。勇者の栄光は二度と手に入らんぞ…」
「…死ぬよりましだ…」
波留ノの決意に、最果てはその横顔をみて手を突き出し。
波留ノ出された拳を合わせて答えた。
「ん?ここ檻の中なのになんで拳が合わせれるんだ。」
「そりゃーもちろん、"壁を貫いたからな"」
「え?」
その後、二人が貫いた壁から少しずつヒビが広がり建物が倒壊。
それを聞きつけた看守が、上の会の城から地下にある牢獄に降りようとするがすでに落石により道は塞がれ戻れない。
幸いにも、城の牢には二人意外はいなかったため怪我人や死者は出なかったが…
「クソ目立ってんじゃねぇかぁぁぁ!!!」
二人は必死に王都の兵から逃げ走った。
次回…
「吾輩は、七十二宙第71神座…"魔導王"。」
【魔導王襲来】