第二章 【第三話 蝙蝠と魔王殺し…】
「来たな…魔王殺し…」
「おっじゃましまーす…ってあれ?お前どっかであったけ?」
「とぼけやがってクソ野郎…」
現在、波留ノと最果て、天狼寺の三名は城の表門から堂々と侵入。
そして波留ノは、不滅を監視ししていた蝙蝠と交戦。
「委員長、最果てを連れて先に行け。ここは俺がやる…」
「わかった…」
波留ノが、天狼寺に向けて指示を出すとそれと同時に蝙蝠はその翼を広げ。
「行かせるかぁぁあ!!!」
天狼寺に攻撃を仕掛ける。
【お前の相手は…俺だぜ…】
「…」
上位者しか持ち得な、神の言葉。
その一つを、今。波留ノが使ったことに蝙蝠は動揺。
「行きますよ、魔王様。」
「無論だ…」
その隙に奥の部屋へと駆け走る天狼寺と最果て。
「なぜ…」
しかし、蝙蝠の脳内を埋め尽くす圧倒的な違和感。
「なぜ!その力をぉぉぉ!!!」
波留ノが発する言葉を、神の声を…人の身でありながら発する波留ノにただ…
蝙蝠は動揺していた。
「ハハ!そんなに驚きの事実か?【ただの】『発声練習だろ』」
「貴様ぁぁあ!!!それがどれだけ…どれだけの代物かわかって…」
「知らねぇーなぁ…興味もねぇー…」
しかし波留ノは、自身そっちのけでその言葉の違和感に動揺する蝙蝠に対し。
「さっさと戦おうぜ…”一体一”だ…」
何よりも彼らしく、そして人間らしい文言を吐いて。
「そうだなぁぁぁ…魔王殺しぃぃい!!!」
我に返り、冷静さを取り戻し、高揚する蝙蝠とその白き剣で今一度決戦に臨む
「相変わらずの馬鹿力だなぁ~」
「俺は蝙蝠の魔王だぞ…力はただのおまけさ…」
そう言って、ぶつかり合う蝙蝠が突如として発した奇怪な音波。
「絶望之歌声」
音波は、波留ノの全身を襲い。たったの一撃で、波留ノの装備がはがれ落ちる。
それと共に、波留ノは耳から血を流して硬膜を失い。
それでも骨伝導の影響で、音による攻撃の影響を受け続け全身が痙攣。
「隙が出来たぜよ…」
その隙に、蝙蝠は前回同様の圧倒的な速度による速撃で波留ノの腹に一撃。
(いや、三京撃…)
魔王は、一秒の間に三京の攻撃を終える。
「今のでも最大速にほど遠い…もっと頑張れよ人間。凄んでるだけじぁどうしようもねぇーぜよ。」
「うるせぇ…一撃が重いんだからこれ以上、上げんなコラ!」
軽口を叩いてはいるが、波留ノの全身のダメージは凄まじく。
多少防いだ退魔の盾にすら、ひびが入る始末。
「盾じゃぁーもうダメだな、ここは…」
そう言って、波留ノが構えたのは…
「退魔ノ剣・マーク2…アーチャーぁぁぁ!!!」
(弓!)
波留ノはなんと、進化した拳ではなく弓を出した。
その事実に、蝙蝠はただただ困惑する。
「距離を取る、単純だが得策だ。」
「ハハ!血迷ったか、魔王殺し。距離を取ったところで、俺ならすぐに追いつけるぞ…」
蝙蝠が高笑いを浮かべ、そう返した瞬間。
波留ノはすでにその視界にはいなかった。
(一体どこへ!)
魔王が再び困惑し、焦り周囲を確認している隙に背後から…
【不死鳥埜矢】
一本の火炎の矢が飛ばされる…
「これは…」
それに対応し、手でいなした蝙蝠は動揺する。
「”不滅の技をどうしてお前が…」
「パクった…」
この世界には、いくつかの職業がある。
剣士、僧侶、魔法使い、盗賊…よく聞く勇者パーティー。
しかし、この世界の勇者はそれとは別格。
なぜなら、この世で唯一…”全ての職業の特徴を持つからだ”。
「そうか、魔王殺し…お前も勇者だったぜよ…」
しかし、全てを使えるからといって。全てを扱えるわけではない。
各個人の得意不得意、戦闘スタイルに合わせて本来は使い慣れた物を選択する。
だが!波留ノは類まれなる戦闘センスでその点をカバーしあらゆる武器を使いこなす。
例えそれが…
「俺ゃぁー魔王の力だって、利用して戦い抜く!」
戦うたびに、壁を超えるたびに強くなる。
そんな成長する勇者を前に魔王はただ微笑む。
「なら、ここで奴さんを消しとかねぇーとよぉー…」
魔王は再び、音波を発してから速撃をしかける。
「それはもう見たぜ!」
しかし、波留ノは攻撃が当たる時すでにそこにはいない。
(翼か!)
その時魔王は気ずいた。
自身を超える速度の正体が、不滅の持つ炎の翼であることに。
「翼までパクってるとは思わなかったか?俺は倒した魔王の能力をパクれんだぜ、当然できるさ…」
そう発しながら放つ不死鳥の矢。
「ハッ!」
それをかき消す蝙蝠の音波。
「てか、おめぇーもこうしてたんだろ?翼使って加速してんたんだよなぁ!」
しかし、もう波留ノはすでに音波の方向にはおらず。
背後に回られている。
「貴様…」
「爆ぜろ…」
動揺する魔王の周囲を取り囲む矢の結界。
「名ずけて…”鳳凰埜鳥籠”」
波留ノは一瞬の間に、蝙蝠の周囲を取り囲む形で矢を放って彼が気ずく頃には矢が放たれるとうにしかけていたのだ。
「あぁぁぁ!!!」
その結果として、不滅の炎による矢が全身に直撃。
蝙蝠は全身を焼かれてしまう。
「ハハ、お前蝙蝠だもんな。光には弱かったか?」
「こうなったら…」
そう言って、蝙蝠はその翼を大きく動かし竜巻を発生させる。
「魔王之旋風」
蝙蝠の魔王とは、蝙蝠の特徴を最大まで広げた存在。
言わば、拡大解釈。しかしそれに近い事象を起こせる存在。
故に、彼の翼がはためけば原初之焔すらかき消され、その産声を上げようものならあらゆる生物が委縮し、その逆鱗に触れたなら…
”地獄ヲ見ル”
「”結界・暗闇之荒野”」
蝙蝠の魔王は、暗闇に置いて最強である。
まず持って相手は蝙蝠の魔王を認識できない。
が、蝙蝠の魔王は音波によるエコロケーションにより周囲の状況を完全完璧に把握できる。
それだけではない…
「「シャァァァ!!!」」
暗闇の中で、蝙蝠の魔王は複数対に分裂できる。
しかも、先ほど以上にバフがかかり強くなった状態で…
「おいおい、せっかくの利点を無碍にするなよなぁ!」
叫び声で判別した波留ノだったが…
「もう遅い…」
あまりにも敵の速度が速すぎて、対処する前に事がすでに終わっている。
故に、波留ノは分かっていて対処ができない。
そして現在、何体いるかもわからない蝙蝠の魔王の分裂体複数名の攻撃によって全身から血しぶきを上げて倒れる。
「これでわかったろう…奴さん…あんたぁー俺には勝てないぜよ。」
一方その頃、最果てと天狼寺は…
魔王城の階段を駆け走っていた。
「魔王様、扉です。」
扉には魔王の鍵がかかっており先にはいけなそうだ。
しかし…
「悪魔之鍵」
最果がそう命じると、扉の中央にある大きな錠の鍵が出現し開かれる。
「今のは…」
「”あらゆる宝物を盗み出す”、我の保有する悪魔の一人じゃ…」
最果ての力はまだまだ図り知れない、そう思う天狼寺であった。
そんなこんながありつつ、二人は奥へ奥へと進むととある扉を超えた先で突如。
「”結界・銀世界”」
それまで暗闇だった城が、どこからともなく聞こえたその声と共に一面雪景色に変わる。
「この場所は…」
「奴じゃ!」
天狼寺が状況を飲み込め切れていない一方、最果てはこわばった表情で睨み付け警戒する人物…
その名を…
「魔王七十二宙が第二柱、序列第二位!…”狼王”」
「・・・」
次回…
【第四話 孤高の獣】