第二章 【第二話 蝙蝠と不死鳥】
「う…うん…」
不滅は、再生が追いつかないほどボロボロにされ意識を失っていたが。
その時ようやく目覚めると、目の前には見覚えのある顔が存在した…
「久しぶりだね…蝙蝠くん…」
「おぉー…久しぶり。元気ぃー…してたぜよ、お嬢ちゃん…」
目の前のそれは、蝙蝠の魔王。
そして不滅は今回の敗北を、その正体を知って納得した。
(魔王にも序列がある…基本的に数字の小さい方が強く、逆に大きい方が弱い…。僕は37位で魔導王は71位、最速王は62位で機械王は50位…そして僕の目の前にいるこいつは…)
魔王階級、72宙が上位10宙の内の一人…
(序列7位…蝙蝠の魔王…)
最果て曰く…
「魔王の中でも上位10宙とその他では次元の壁が大きく存在すると言われていてな…お前が負けたのも無理はない。」
「それじゃ、今回の魔王達は上澄みってことですか?」
「そう言うことになる…」
天狼寺と最果ては倒れる波留ノを後目に、現在の状況を説明し。
今回の結果を納得する。
しかし波留ノは…
「んなこと関係ねぇ…俺は”負けた”。上澄みだろうが、明確に魔王に負けたんだ…」
「シズリ…」
「だからこそ…借りは返すぜ。」
その闘志を、鋭い眼光に秘めていた。
そしてその頃、不滅は蝙蝠の監視する牢獄に閉じ込められて身動きが取れない…
と言うより取ったらまた半殺しにされる。
「流石に、バカなお前もそこだけは理工だったぜよ。」
「君が群れに属するなんて珍しいじゃないか…群れる者は弱いじゃなかったけ?」
「ハハッ!そうだな、群れは弱者の証。強者は群れない…」
彼は笑いながら、しかしどこか納得いってないような…引きつった笑いを見て不滅は彼の心中を察した。
「でも仕方あるめぇーよ。俺らは死んだ、女神の引き連れた勇者軍によって呆気なく…」
「俺ら?まさか、君以外にも魔王が?」
「そりゃーそうぜよ、全員もれなく序列10宙のメンツが四人。第一位と第二位もいるぜよ…」
不滅は当然衝撃を受けた。この時点序列1位蜘蛛の魔王と狼の魔王がこの城にいる…
そして彼らを従える首領はどれほどの存在なのかを思い…
しかしそれより驚くべきは、そんな実力の高い彼らが敗北を帰すほどの存在の方だ。
「勇者軍ってのは、厄介でな。一人でも面倒な魔王特攻を持つ勇者が、まるで雑兵のようにぞろぞろと列をなして突っ込んでくる。俺ら上位10宙は全員もれなくそれに敗れた…」
「まるで勇者のゾンビ映画…でも女神がそんなに必死こいて僕らは狙ったことなんて今までなかったろ?どうして突然…」
「しるかよ、とにかく俺らはその後女神の城に幽閉されて監禁。されるはずだったぜよ…」
蝙蝠の魔王は含みのある言い方をした。
そして思い返すように、怨霊の如く風に舞い気配を消して現れたネビロスとの邂逅を思い出すのだった。
「あの方に出会うまでは、魔神なんて存在すら疑ったほどだったが。本当にいるんだな、手にした力も納得はいかねぇーがすげぇーしろもんぜよ。尊敬するぜ本当…」
「プライドの高い君が、他人の手を取るとは珍しいね。」
「ハッ!全く、人が気にしてるとこついてくるねぇー。不滅ちゃんは…あーそうそう…”第5位”も俺らの仲間だぜ。合いにいくぜよ?」
不滅はその言葉を聞いて、その目を見開き驚きを隠せず涙を流して喜んだ。
「獅子くんが!獅子くんが…ここにいる…」
獅子王と不滅は、入れ替わりの魔王である。
入れ替わりの魔王とは、本来魔王の力の光を浴びてランダムに選出される通常の魔王達とことなり…
誰か別の魔王から、魔王の力を受け付いた魔王の事である。
そして入れ替わりの魔王は全員、魔王の選定時期が遅いため。
力のコントロールを魔神から学ぶのだ…
「「先生!」」
魔神アガイアレプト…彼女こそが二人の魔王の師匠である。
「不滅君、君ほど弱い魔王は他に見たことがないよ…」
不滅の評価は37位の魔王だったかつての緋色の魔神に比べ、大きく劣っていた…
「おぬし、本当に弱いんじゃな…何で魔王なんぞになった?」
「うぇーん、獅子君ひどいよぉ~」
獅子王は、先代の52位の獅子の魔王に比べ…”遥かに強かった…”
そして二人はもう一つ共通点があった…
「獅子君はいいよなぁー他人も治癒できるから、配下を失うことがなくて…」
獅子王と不滅は、お互いにヒール能力を持った魔王だったのだ。
しかし唯一の違いとして、”獅子王は自身と他者の治癒を…””不滅は自身の肉体に対する超速再生能力を持っていた…”。
「そうか…わしはお前の方が羨ましいぞ…。」
獅子王と不滅の考えは異なっていた、不滅は配下を多く連れる魔王なのに対し…獅子王は単独での戦闘を好んだからだ。
そしてこれが、のちに10宙となる要因でもあったのだろう…なぜなら…
”強い魔王は、群れない…”それが、上位魔王の鉄則だったからだ…
そして時は達現在…52位から7位まで上り詰めた獅子王と37位でありながら”倒せず死なないだけの最弱魔王”と呼ばれた不滅とでは大きな差がある。
「だが、今の獅子王にお前は合わない方がいいぜよ…」
「どうして?…」
「あいつは今回のネビロス様の件に、あまり気乗りしていない。あいつは個での最強を好んできたからな…群れに組することが気に入らないんだろう…。」
獅子王はピリついている、単騎にして最強。いつか最強最古の魔王である第一位に成り代わる自身の野望を…
女神が用意した勇者軍に敗北し、自身より遥か格上に首輪で繋がれ挑むことも出来ない現状に…そして何より…
「それにお前も知ってるでやしょぉー、お嬢ちゃん。”獅子王は不滅の魂と超速再生”を持つあんたの力を羨ましがったいるぜよ。そのせいでお前らはアレプトのおっさんとの修行後に、仲たがいしたんだからな…」
「・・・」
不滅は下を向いて思い出した、共に成長し同じ師から教わったのにも関わらず。
最後は魔王のサガなのか、一緒にはいられなくなった獅子王との関係を…
「ん?」
二人が檻の前で話し込んでいると、扉の隙間から黒い煙が入って来た…
「どうされました?ネビロス様。」
その正体は魔神ネビロス、彼女は獅子王に侵入者の事を知らせに来たのだ。
「誰なんです?その侵入者ってのは…」
『そちもわかっておろう…”異端の勇者、波留ノ・シズリとその一行じゃ…』
なんと、波留ノ達は驚くことに蝙蝠の魔王からの襲撃の後すぐにこの城に現れ。
堂々と正門の前の見張りをなぎ倒し、門をぶち破って無理やり侵入したらしい…
それを聞いて蝙蝠の魔王は、その毛を立たせて人相を変え…
【そう来なくっちゃなぁー…魔王殺し…】
どすの聞いた、深淵から響くような魔王の声を上げて…高ぶっていた。
次回…
【第三話・蝙蝠と魔王殺し…】